ミャンマーの国内避難民、地雷犠牲者へ緊急支援を実施します。
◇ミャンマーの地方民族自治地域の現況
2021年2月1日のクーデターから3年が経過、軍政府は「非常事態宣言」の延長を繰り返しており、公正な選挙が実施される見込みもなく、不安定な政情が続いています。
民族自治の強い地方では、今も政府軍と民族武装組織の戦闘が続いており、一部メディアでは民族統一軍(NUG)や各地に林立した人民防衛軍(PDF)の優位が報じられていますが、ロシアや中国からの軍事支援を受け圧倒的な装備で勝る政府軍はカヤー州、カイン州、シャン州などの市街地にも空爆や遠隔砲撃を繰り返しており、街はゴーストタウンと化しています。
カヤー州の州都ロイコーでは、政府軍の攻撃により2023年11月以降だけで少なくとも12人の子どもを含む76人が死亡、70人以上が負傷しています。主のいなくなった商店では政府軍兵士による略奪行為が常態化しており、迷走する軍政の支配下の中で、市民の暮らし、未来が情け容赦なく奪われています。

政府軍の空爆を受けたカヤー州の州都ロイコーの住宅地
◇増える地雷犠牲者
政府軍の使用する地雷は各地に住む民間人に大きな被害をもたらしています。
地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)が発行しているランドマインモニター報告書によると、ミャンマーにおいて2023年に対人地雷や不発弾の犠牲になった民間人は確認されただけでも1,003人となり、世界で最も多い犠牲者を出した国として記録されました。この数字は前年度の3倍に上り、そのうちの4割近くを子どもたちが占めています。
地雷という武器に関する知識のない子どもたちが不用意に触れてしまう事故も多発しているため、危険を回避するための教材作りが急務となっています。
政府軍は、PDFやNUGの兵士が田畑や山林を移動することを知っているため、そうした場所に多くの地雷を埋めています。そのため、避難先で、野菜造りに取り組む農民たちも常に地雷のリスクに晒されています。
カレンニー州のリハビリテーションセンターに登録されている地雷犠牲者は現在52名。うち2/3にあたる34人が民間人です。

農作業中に触れた地雷で目を損傷した男性。JCBLは治療費を支援しました。
寄付金の使われ方
① 地雷犠牲者の社会復帰を支援します
不幸にも地雷を踏み、足を失った人々にとって必要なことは、家族を養う手段を確保することです。
いま起きている“非常事態”の長期化に伴い、人々の“暮らす力”の弱体化が懸念されます。とりわけ、障害を負い、思うように体を動かすことが困難になった人々の自活力の回復と維持は死活的に重要な課題です。
JCBLは、こうした人々が再び自律的な生活を取り戻せるよう、治療やリハビリに必要な費用や希望する職業に必要な研修費用、既得の技術や経験を活かした小規模店舗の開業資金などを支援し、犠牲者の社会復帰をサポートします。

2024年にJCBLが支援した足踏みミシンで蚊帳を作る女性
② 子どもたちが地雷の危険を回避するための教材作りを支援します
地雷の犠牲となった人々のうち4割近くが、幼い子どもたちです。
JCBLは子どもたちが不用意に地雷に触れたりすることのないよう、視覚的に分かりやすい教材を製作し、避難民村で行われる地雷回避教育で活用します。
JCBLは子どもたちが不用意に地雷に触れたりすることのないよう、視覚的に分かりやすい教材を製作し、避難民村で行われる地雷回避教育で活用します。
また、より広く教育活動を展開するため、インレイ湖周辺地域の県の女性達で構成するインレイ女性同盟の協力を得て、スライドや動画を使って子どもたちに分かりやすく伝える工夫がなされています。今年度は、さらに広い地域に活動を拡大していくため、教材の増刷とトレイナーの育成に力を入れていきます。

JCBLとDKKで共同制作した危険回避教育ポスターの一つ

子供たちに写真を見せながら説明するスタッフ
③ 避難民への医療、生活支援(カヤー州及びシャン州南部山間地の避難民村が対象)
山間地での避難生活が3年を超え、人々の疲労も心身ともに蓄積しています。そんな中で、3月18日に発生した大地震により、 支援物資に頼る生活はさらに厳しくなりました。
地震被災者に対する国際社会からの支援は寄せられるものの、その多くは国軍の支配地域に配分され、国軍と対立する民族自治地域には配給が困難な状況が続いています。この間、双方の間で停戦合意が結ばれましたが、国軍による空爆は続き、サガイン州やカヤー州では、多くの子どもたちが犠牲になっています。
DKKの医療スタッフは、こうした避難民村を定期的に訪問し、移動診療活動や医薬品、また出産を控えている妊産婦検診や出産介助にも気を配っています。
JCBLは、DKK医療スタッフの移動や必要な医薬品、物資の購入費用を支援します。
戦闘の激しい地方山間地に外国人が立ち入ることが難しいため、ミャンマーとの国境に近いタイのメーソットやチェンマイにて会議を持ち、活動の進捗の確認と計画を協議しています。

物資配給の様子。地震の際には女性に必要な生活物資を中心に配給を行った。
【支援金の受け渡し方法】
現地NGOへの支援金の受け渡しについては、現在ミャンマー国内の人道支援組織への銀行送金ができないため、代表理事がモニタリングを兼ねてタイへ出張して、ミャンマー国境地域でDKKのメンバーに直接手渡しする予定です。
なお、昨年のクラウドファンディングで集まった寄付金は、2023年7月13日から15日まで清水代表理事がタイ国バンコクに出張し、ミャンマーから出てきた現地NGO(DKK)のコーディネーターに1万ドルを直接手渡ししました。
サバイバー(地雷・クラスター爆弾被害者)支援活動
対人地雷の被害は、現在も世界50カ国に及び被害者の8割は民間人です。手足を失った被害者の支援には医療だけでなく、生活全般に関する相談などを含め、本人の人権が保障されるための支援が求められます。
JCBLではこれまで、カンボジアの農村地帯にバリアフリートイレ(不自由な体でも使いやすいトイレ)を設置するプロジェクトや、ネパール、インド、アフガニスタンの現地NGOを通じて地雷の危険を回避するための教材制作などの支援を行ってきました。
また2017年からは、アジア地域で最も地雷犠牲者が多いビルマ/ミャンマーの地方農村部で暮らす地雷犠牲者に対する義足支援を行ってきました。都心から離れた遠隔地では義肢を製作する工房は少なく、地雷の犠牲になった人は多額の費用をかけて遠くの病院まで行かなければならなかったり、また体に合わなくなった古い義足を我慢して使い続けることで炎症を起こす人なども多くいました。そこで、JCBLは地元のNGOと協力して、義足づくりの工房を支援し、年間約50人のサバイバーにその方に合った義足を提供してきました。
JCBLは、現地の被害者のニーズに沿った支援を心がけています。


JCBL (地雷廃絶日本キャンペーン)とは
JCBLは、人道的な立場から対人地雷とクラスター爆弾の廃絶を訴えるNGOです。
1997年にノーベル平和賞を受賞した「地雷禁止国際キャンペーン (International Campaign to Ban Landmines, ICBL) 」と、「第2の地雷」と言われるクラスター爆弾の廃絶をめざすNGO ネットワーク「クラスター兵器連合 (Cluster Munition Coalition,CMC)」が2011年に統合して発足した「ICBL-CMC」の日本の構成団体として活動しています。
JCBLは、世界の人々が対人地雷やクラスター爆弾の恐怖に怯えることなく安心して暮らせる社会を作るために活動をしています。


2017年にウィーンで開催されたオタワ条約の クラスター爆弾禁止条約について、
締約国会議に参加したICBLのメンバーと 日本政府の対応を問うシンポジウム