松原俊太郎とスペースノットブランクの協働による創造活動
劇作家・松原俊太郎とスペースノットブランクは、2019年から積極的に両者の協働による舞台作品の創作活動を行なってきました。
第一作となる『ささやかなさ』(2019年初演、2021年再演)は、松原俊太郎があらかじめ書いた戯曲をスペースノットブランクが演出するという一般的な形態で創作され、それぞれの戯曲の特性、演出の特性を有機的に混合するような上演となりました。そこから両者は「戯曲と舞台の関係性」により深く切り込むべく、戯曲の執筆方法や、戯曲を用いた舞台の構築方法に対して、現代の日本をそれぞれに生きるアーティスト同士として、コミュニケーションを図りながら作品づくりを継続して行っていくことになります。
©︎manami tanaka
協働創作の第二作『光の中のアリス』(2020年初演)以降、すべての作品において、戯曲の執筆前に、「松原俊太郎と出演予定者が対話」を行い、ただ単に戯曲を提供するだけではない形での執筆方法を模索し続けてきました。如実な変化が訪れたのは第四作となる『再生数』(2022年初演)で、「戯曲が執筆されるよりも前に上演形態を定義する」という発想で創作を行ないました。つまり戯曲が執筆され、それをもとに舞台が構築される、という既存の舞台芸術創造の「順番」を逆にしたのです。
それらを経た第五作となる今回のプロジェクトでは、「戯曲の執筆」と「舞台の構築」をスタートから同時に行ない、「併走」することを目指しています。稽古場に集まった「劇作家」「演出家」「出演者」が三つ巴となり、それぞれの「言葉」「身体」「姿勢」をもとに戯曲が執筆され、舞台が構築されます。舞台が構築されると再び戯曲が書き変わり、舞台が再構築されます。これまでの舞台芸術創造と比較すると、とても有機的で、それぞれの労力は計り知れないものとなりますが、そこに発生する新しい作品の姿を、私たちは観客の皆様にお披露目したいと強く願っています。
この舞台は、松原俊太郎とスペースノットブランクが企画し、京都芸術センター Co-program2023に採択され、「劇作家」「演出家」「劇場」が一体となり実施するものです。未知への挑戦とその実現のためには、皆様からのお力添えが必要不可欠です。私たちの創造作業は、創造面でも資金面でも、限界への挑戦でありたいと考えています。研究開発を絶えず行ない、さまざまな角度から上演のためのトレーニング、クリエーション、リハーサルを試行錯誤し、そして時には新たな機会を得るためのマーケティングや営業を行なっています。何卒、皆様からのご支援を賜りたく、心よりお願い申し上げます。
©︎新藤早代/日景明夫
プロジェクト「不自由な言葉を離す身体」とは
「不自由な言葉を離す身体」とは、京都芸術センター Co-programの公募へ応募するにあたり、松原俊太郎とスペースノットブランクが名付けた新しい舞台芸術創造の方法論としてのプロジェクト名です。これまで京都(松原俊太郎)と東京(小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク)の距離を、オンラインなどを用いることで現代的に超越してきた両者が、「戯曲の執筆」と「舞台の構築」の関係性を再考するべく、制作の最初から劇作家と演出家と出演者が一堂に会してクリエーションを実施する本プロジェクトでは、「軋轢を生むばかりの腐敗した既存の言語内のコミュニケーションを滅し、身体、映像、音を駆使して新しい不自由な言語を作り表現すること」「既存の二項対立の規則にどうしてもあてはめることのできないただのものとしての何かをフィクションの中に作り上げること」「観客へと直接働きかけるロジックを新たに発見すること」を目標に掲げ、「あらゆる可能性を保つことのできるような創造環境と上演の時空間を作り上げよう」としています。本プロジェクトで作られる作品のタイトルは『ダンスダンスレボリューションズ』と言います。矢印の指示とリズムに合わせて床を踏むことでダンスが行なわれる「ダンスダンスレボリューション」というアーケードゲームの特性が、「戯曲に書かれた言葉をその通りに読むことで上演が行なわれる」演劇の特性と近似していると考え、名付けました。
出演者には関西を拠点に活動するダンサーの児玉北斗さんと斉藤綾子さんを迎え、さらに松原俊太郎と小野彩加と中澤陽の三名も合わせた計五名が出演する予定です。「劇作家」と「演出家」の関係性を再考すると同時に「出演者」にもなることで、上演に於けるそれぞれの「役割」を再考し、社会に対して「新しいドラマトゥルギー」を表現することができるのではないかと考えています。「劇作家」と「演出家」が出演する前提で「戯曲を執筆」し「舞台を構築」するという点、メインで出演する二名が「俳優」ではないという点も、それぞれ本プロジェクトの見どころになります。
また本プロジェクトでは、京都芸術センター Co-programの趣旨に鑑み、私たちが実践する試みに観客の皆様にも併走いただけるよう、断続的なオープンリハーサル(稽古場公開)も行ないます。ぜひオープンリハーサルと上演のどちらも併せてお楽しみいただけますと幸いです。
公演チラシ
このプロジェクトの概要
■プロジェクト名:不自由な言葉を離す身体
■上演作品名:ダンスダンスレボリューションズ
■日程:2023年9月21日(木)- 24日(日)
■会場:京都芸術センター フリースペース
[タイムテーブル]
2023年9月21日(木)19:30
2023年9月22日(金)19:30
2023年9月23日(土)14:30
2023年9月24日(日)14:30
※受付開始及び開場は開演の20分前を予定しております。
※上演時間は約60分から約90分を想定して制作しております。(2023年8月19日時点)
[チケット]
前売券:2,900円 全席自由席 (詳細はチケット参照)
[関連イベント]
■オープンリハーサル①(要事前申込)
日時:2023年9月2日(土)13:00 – 17:00(入退場自由)
会場:京都芸術センター フリースペース
料金:600円
事前支払(クレジットカード決済またはPayPay残高決済)
■オープンリハーサル②(要事前申込)
日時:2023年9月18日(月祝)13:00 – 17:00(入退場自由)
場所:京都芸術センター フリースペース
料金:1,100円
事前支払(クレジットカード決済またはPayPay残高決済)
[クレジット]
作:松原俊太郎
出演:小野彩加 児玉北斗 斉藤綾子 中澤陽 松原俊太郎
演出:小野彩加 中澤陽
グラフィックデザイン:趙文欣
保存記録:植村朔也
協力:草 東京はるかに 櫻内憧海
助成:公益財団法人セゾン文化財団、アーツサポート関西
企画・製作:松原俊太郎 スペースノットブランク
劇作家 松原俊太郎
劇作家。1988年、熊本生まれ、京都在住。神戸大学経済学部卒。処女戯曲『みちゆき』(2015年)が第15回AAF戯曲賞大賞を受賞。戯曲『山山』が第63回岸田國士戯曲賞を受賞。主な作品として小説『ほんとうのこといって』『イヌに捧ぐ』、戯曲『正面に気をつけろ』『光の中のアリス』など。2023年度セゾン・フェローⅠ。
スペースノットブランクのご紹介
二人組の舞台作家である小野彩加と中澤陽が舞台芸術の創作を行なうコレクティブとして2012年に設立。舞台芸術の既成概念に捉われず、独自の新しい仕組みを研究開発しながら舞台芸術の在り方と価値を探究している。固有の環境や関係により生じるコミュニケーションを創作の根源とし、作品ごとに異なるアーティストとのコラボレーションを積極的に行なっている。2017年、第8回せんがわ劇場演劇コンクール グランプリ。2018年、下北ウェーブ2018 選出。同年、高松アーティスト・イン・レジデンス2018 選出。2019年、利賀演劇人コンクール2019 優秀演出家賞二席 受賞。同年、どらま館ショーケース2019 参加。同年、第29回下北沢演劇祭 新進気鋭の若手アーティストと創る舞台芸術 コード・コード・コード’19 演出。同年、穂の国とよはし芸術劇場PLAT ダンス・レジデンス2019 選出。2020年、ロームシアター京都×京都芸術センターU35創造支援プログラム KIPPU 選出。同年、鳥の演劇祭13 若手舞台芸術創作団体支援企画 選出。2021年、金沢21世紀美術館芸術交流共催事業 アンド21 選出。同年、穂の国とよはし芸術劇場PLAT 高校生と創る演劇2021 演出。同年、トーキョーアーツアンドスペース OPEN SITE 6 選出。同年、一般財団法人おおさか創造千島財団 創造活動助成 for U30 選出。2022年、KYOTO EXPERIMENT 2022 Shows 参加。同年、ヨコハマダンスコレクション2022 コンペティションⅠ 城崎国際アートセンター賞、若手振付家のための在日フランス大使館・ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル賞 受賞。2023年、芸術文化観光専門職大学 ダンスワークショップ実習B 講師。同年、城崎国際アートセンター 2023年度 アーティスト・イン・レジデンス プログラム 選出。同年、京都芸術センター Co-program2023 選出。同年、吉祥寺シアター ダンス部2023 講師。同年、DANCE BOX 国内ダンス留学@神戸9期 Dance Makers Camp I 招聘アーティスト。同年、映画美学校 言語表現コース ことばの学校 第3期 演習科 創作クラス 専任講師。
小野彩加
舞台作家。1991年12月30日生まれ。2016年から2019年まで多田淳之介率いるキラリふじみ・リージョナルカンパニーACT-Fに参加。ダンサー、パフォーマーとして、黒沢美香『6:30 AM』、白神ももこ『絵のない絵本』、浅井信好/月灯りの移動劇場『はてしない物語』、大園康司 橋本規靖/かえるP『スーパースーハー』、三野新『アフターフィルム』、ピチェ・クランチェン『MI(X)G』、山崎広太『ダンス・スプリント』『ダンステレポーテーション』、山下恵実/ひとごと。『花をそだてるように、ほんとうをそだてています。』『はなれながら、そだってく。』、ClariS『ClariS 1st 武道館コンサート 〜2つの仮面と失われた太陽〜』『ClariS 3rd HALL CONCERT in 舞浜アンフィシアター ♪over the rainbow 〜虹の彼方に〜♬』などの作品に参加している。2018年度 – 2020年度、調布市せんがわ劇場 ドラマ・エデュケーション・ラボDEL メンバー。2021年度、松井周の標本室 メンバー。同年度、こまばアゴラ劇場 演劇を活用したワークショップ研修会 メンバー。2022年度、ANB Tokyo ANB Studio Program メンバー。2023年度、Dance Base Yokohama レジデンスアーティスト。利賀演劇人コンクール2019にて、優秀演出家賞二席受賞。ヨコハマダンスコレクション2022 コンペティションⅠにて、若手振付家のための在日フランス大使館・ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル賞受賞。
中澤陽
舞台作家。1992年6月4日生まれ。映像作家として、室伏鴻のアーカイブ映像の制作、中村蓉『リバーサイドホテル』『顔』などの作品に参加。演出者として、シライケイタ/温泉ドラゴン『悼、灯、斉藤(作:原田ゆう)』リーディングなどの作品に参加。出演者(パフォーマー)として、ファビアン・プリオヴィル/Fabien Prioville Dance Company『The SOMA Project』、藤田貴大『A-S』、池田亮/ゆうめい『フェス』『〆』、三野新『アフターフィルム』、額田大志/ヌトミック『ワナビーエンド』、福井裕孝『デスクトップ・シアター』、本橋龍/ウンゲツィーファ『ロイコクロリディウム』『Uber Boyz』、今野裕一郎/バストリオ『一匹のモンタージュ』、細川洋平/ほろびて『あでな//いある』などの作品に参加している。2018年度 – 2020年度、調布市せんがわ劇場 ドラマ・エデュケーション・ラボDEL メンバー。2022年度、松井周の標本室 メンバー。同年度、ANB Tokyo ANB Studio Program メンバー。2023年度、Dance Base Yokohama レジデンスアーティスト。2021年度 – 2023年度、公益財団法人セゾン文化財団 セゾン・フェローⅠ。利賀演劇人コンクール2019にて、優秀演出家賞二席受賞。ヨコハマダンスコレクション2022 コンペティションⅠにて、若手振付家のための在日フランス大使館・ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル賞受賞。
©︎DanÅke Carlsson
いただいた寄付の使いみち
本プロジェクトは、より多くの方にご来場いただきやすいような価格設定(2,900円)といたしました。
未知への挑戦とその実現のためには、皆様からのお力添えが必要不可欠です。
いただいた寄付は、文芸費(出演料や戯曲執筆料)や、小野彩加と中澤陽の京都滞在費など、作品製作に係り不足する資金として使わせていただく予定です。
また、この新しい舞台芸術、演劇、ダンスを探究するプロジェクトをより多くの方に知っていただき、たくさんの方にご来場いただけるよう、様々な方法で広報(ソーシャルメディアを活用した広報など)を行なっていきたいと考えており、そのための費用として使わせていただきます。
このプロジェクトに寄付をすると税の優遇措置が受けられます
アーツサポート関西は公益財団法人関西・大阪21世紀協会が行う取り組みであるため、このプロジェクトに寄付をいただくと税の優遇措置が適用されます。個人と法人のいずれにも適用されます。たとえば個人が3万円を寄付して「税額控除方式」で税金の還付を受ける場合、11,200円が寄付者に戻ってきます。詳しくはこちらをご参照ください。
寄付をしていただく際にご確認いただきたいこと
■このプロジェクトは、アーツサポート関西の2023年度公募助成で選ばれた団体が行う活動です
■いただいた寄付は、公益財団法人関西・大阪21世紀協会への寄付となり、税の優遇措置が受けられます。詳しくはアーツサポート関西ホームぺージ「税の優遇措置について」をご覧ください。
■プロジェクトを行う団体には、いただいた寄付から必要経費10%を控除した金額をアーツサポート関西から助成金として支払います。クレジットカードをご利用の場合はカード手数料分も控除されます。
■プロジェクトが目標額に達しない場合でも集まった寄付金を助成金として支払います。それにより事業規模が縮小されることがありますので、予めご了承ください。
■やむを得ない事情により、プロジェクトが中止となった場合、寄付金は返金せず、アーツサポート関西が行うほかの芸術・文化支援活動に活用します。
■寄付者のご連絡先については、当方の個人情報保護の基本方針に則り、プロジェクトを行う団体からのお礼のお手紙やメール等をお送りするため、当方から団体にお伝えさせていただきます。プロジェクト団体へのご連絡先の開示を希望されない場合は、寄付申込みページの備考欄に「個人情報の共同利用不可」とご記入いただきますようお願いいたします。