
誰も幸せになれない農業の現実
・パンデミックによる世界最長のロックダウン
・スーパー台風オデット(国際名:ライ)の直撃
・豪雨による土砂災害
・記録的な干ばつ
それらが、2020年から4年の間に、Taptapの農家を立て続けに襲いました。
ロックダウンが解除され、彼らは、やっと野菜を出荷できるようになったと思えば、種を買うお金もなく、高利貸しから借金をして種を植えました。
そして、収穫を目前にして台風でそれらを全て失い、再び借金をして植えた作物が収穫の時期に入った2022年2-3月頃。
再び記録的な豪雨災害に見舞われ、全てがダメになる。
そして、2024年には記録的な干ばつが起き、実にセブの農家の80%以上が困窮したと記録は伝えています。
多くの農民が「本当に死んでしまうかと思った」と涙を流すほどの窮状に、私たちは直面してきました。
痩せゆく土壌と誤った知識の罠
セブの山間部に広がる農地の土壌は、決して農業に適しているとは言えません。
粘土質の赤土は、乾季にはひび割れ、雨が降れば泥状のぬかるみと化します。
このような土壌は、作物の根張りを妨げ、水はけの悪さから根腐れを引き起こす原因となります。

しかし、
「それでも農業しかない」。
彼らはそう語ります。
Taptapの農家たちは、代々この土地を守り、農業を続けてきました。
初等教育も終了できなかった彼らにとって、この土地で耕作を続けることは、他に選択肢がない現実です。
さらに深刻なのは、多くの農家が適切な農業知識を持たないまま、化学肥料に依存している現状です。
彼らは専門的な農業教育を受けた経験がなく、家業として農業を続けているため、連作障害を防ぐための土壌栄養学や、適切な肥料の使い方を理解していません。
その結果、土壌は年々痩せ細り、収穫量は減少の一途を辿っています。
雨が降るたびに表土が流出し、肥沃な土壌は失われていきます。
化学肥料は一時的に収量を増やすかもしれませんが、長期的に見れば土壌の生命力を奪い、持続可能な農業を困難にしています。
この知識の欠如と化学肥料への過度な依存が、Taptapの農業が抱える根深い問題の一つとなっています。
高騰する種子と水不足の深刻な影響
Taptapの農家たちを苦しめるもう一つの重い鎖は、高騰する種子と、絶対的に不足する「水」です。
山間部には流通が少なく、種子の値段が高騰します。
そして、高いお金を払ってようやく手に入れた種子も、水がなければ育てることはできません。

乾季になれば、畑はひび割れ、作物は枯れ、農家は一滴の雨を待ちわびる日々を送ります。
逆に雨季には、激しいスコールが種子や肥料を流し去り、粘土質の土壌はぬかるみ、作物の根を腐らせてしまいます。
この悪循環が、彼らの生活をさらに困窮させています。
そして、雨季には彼らの努力を流し去る雨も、乾季には全く降らず、深刻な水不足を引き起こします。
セブ市では地下水資源の枯渇を防ぐため、無許可での井戸掘削が禁止されており、安定した水の確保が極めて困難な状況です。
この規制は、地下水の塩水化や枯渇を防ぐために必要なものですが、目の前の「渇き」に苦しむ農家にとっては、まさに「首を絞める鎖」となっています。
彼らは、トラクターや最新の農機具ではなく、ただひたすらに「水」を求めています。
この水への切実な思いは、単なる農業用水の不足に留まらず、彼らの生活そのものを脅かす根源的な「渇き」なのです。
どんなに努力しても、水がなければ何も始まらない。そんな無力感が、彼らを縛り付けています。
非効率な流通と仲買人への依存
セブの山間部で栽培される多くの野菜、例えばスイートコーン、オクラ、トマト、キャベツ、カボチャなどは、そのうち30%から50%が市場に届く前に廃棄される可能性があります。
その最大の理由は、物流インフラの欠如にあります。
山から麓の市場へ作物を運ぶ手段は、古いバイクの荷台や軽トラックに限られ、何十kgもの野菜が袋に詰め込まれ、山積みにされて市場まで運ばれます。1時間半から2時間かけて市場に到着する頃には、下部の野菜は重さで潰れ、売り物にならなくなってしまいます。

また、雨が降れば雨水にさらされ、晴れれば日差しにさらされて野菜はしなび、新鮮さを失います。
冷蔵も遮光もされない環境で運ばれる野菜たちは、文字通り「努力ごと捨てられて」います。
さらに、農家を苦しめているのが、仲買人による不透明な取引です。
都市部では値上がりする野菜や果物が、なぜか産地の農家には利益をもたらしません。
例えば、スイートコーンは農家の手元を離れる際には1kgあたり16ペソ(約40円)にしかならないのに、市場やサプライヤーを通して私たちの手元に届く頃には、その3倍近い価格に跳ね上がっています。
しかし、その利益が農家に還元されることはありません。
農家は肥料や種代を支払うために仲買人から借金をせざるを得ず、その結果、仲買人に野菜を渡すしかなくなるという、貧困が貧困を呼ぶ悪循環に陥っています。
情報の透明性が失われたこの流通のどこかで、農家は自分の育てた作物の「本当の価値」を知る術も、力も持たないまま、それでも山間部に買い付けに来てくれる限られた仲買人の言い値で、作物を売らざるを得ません。
これはTaptapだけでなく、フィリピン各地、いや、世界中の「周縁」にある農村で起きている不条理な現実です。
貧困の連鎖と教育の機会損失
農業からの平均月収がわずか10,000円程度というTaptapの農家にとって、日々の生活費を賄うことすら困難な状況です。
季節労働やガードマン、養鶏などの副収入がなければ生きていけないのが現実です。
しかし、農業以外の仕事を探そうにも、彼らの多くは中等教育どころか小学校すら卒業しておらず、この教育水準の低さが、貧困からの脱却をさらに困難にしています。
高校までの学費は無償であっても、ランチ代や交通費、制服や学用品を賄うことができず、子どもたちは学校に通うことを諦めざるを得ません。
少しでも家計を助けるため、子どもたちは学校へ行くよりも畑で働くことを選びます。

自分の体重よりも重い野菜を担ぎ、幼い頃から農作業に従事する子どもたちが溢れています。
教育を受けられないことで、彼らは親と同じように農業以外の選択肢を持てず、貧困の連鎖が続いてしまうのです。
この負のサイクルは、Taptapの未来を閉ざし、子どもたちの夢を奪い続けています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
後編では、こうした厳しい現実に対して私たちDAREDEMO HEROがどのように挑戦し、具体的にどのような解決策を進めているのかをご紹介します。
後編もぜひご覧ください。

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