はじめに

愛媛県四国中央市、「紙のまち」として知られるここは、面積の約8割が森林の「山のまち」。石鎚山系から法皇山脈へと連なる、知る人ぞ知る山岳の宝庫です。日本二百名山の東赤石山をはじめ、近年人気を集める大谷山など、1700m級の山から気軽に登れる低山まで、バリエーション豊かな山が市内に広がっています。
しかし今、これらの山は、豪雨による登山道の崩れ、老朽化した道標、高齢化で減少する担い手など深刻な課題に直面しています。このままでは、山は歩けなくなり、道に迷う人が増え、シカなどによる自然への影響も広がってしまう——。さらには、雨水をゆっくりと川へ流し出す山の保水力が弱まって下流で洪水や河川の氾濫が起きたり、土砂災害のリスクが増大するなど、私たちの暮らしが危険にさらされかねません。
そこで、林業と登山ガイドを生業とする山のプロフェッショナル松本智広が、2022年に「東予東部登山道整備プロジェクト」を立ち上げ、メンバーと登山道整備活動を行ってまいりました。

石鎚山や豊受山など市内外の山の登山道整備や、初心者でも参加しやすい登山イベントの開催など、山に人が集まる環境づくりを行ってまいりましたが、こうした取り組みがメディアでも取り上げられるようになり、山岳観光に可能性を見出した四国中央市は、2025年7月に「山おこし課」を新設しました。
これまで、できる範囲で登山道整備のボランティア活動を行ってまいりましたが、行政が本格的に山岳観光に着手し始めた今、登山者の安全を担保する登山道整備の必要性はますます高まっています。 しかし、市内に20座以上もある登山可能な山をすべて整備するには、人も時間も資金も足りません。 そこで、草刈り機やチェーンソーの使い方をはじめ、道の拡幅や階段づくり、ロープ張りといった技術を次世代へと伝承しながら、山を守る仲間を増やし、登山道を整備する活動をさらに強化してまいります。
四国中央市の豊かな山々と登山文化を未来へつなぐこのプロジェクトに、どうかみなさまのお力をお貸しください。温かいご支援とご協力を、心よりお願い申し上げます。
なぜ今、東予東部の山なのか

「植物の繊維」と「膨大な水」。四国中央市の基幹産業である製紙業は、この二つによって成り立っています。そして、その源泉となってきたのが、市の南側を覆う広大な山林です。伝統的な手漉き和紙が作られていた時代から、山では原料となるコウゾやミツマタが栽培され、山あいの村々が紙すきの基盤を支えてきました。
近代的な製紙業へと発展する過程においては、四国山地を貫く水利開発が必要不可欠で、急峻な山々がもたらす豊かな降水量を水源とし、山あいのダムからトンネルや水路を経て、北側の平野部へと清らかな水を幾重にも引き込みました。製紙業にとって不可欠な工業用水が安定供給されたことこそ、四国中央市が日本一の「紙のまち」を誇る工業都市へと飛躍した最大の原動力です。
しかし、紙産業の発展を支えてきた「山」が、今多くの課題を抱えています。
人口減少に伴い、シカなどの野生鳥獣が登山道やふもとの民家近くまで出没し、植物の食害や土壌の流出が深刻化しています。また、これまで山を守り続けてきた地域の担い手の高齢化が進んでおり、次の世代の育成が急務となっています。 さらには、近年多発する集中豪雨の影響で、木製ステップの破損や道の崩落が相次ぎ、転倒・滑落のリスクが高まっているほか、老朽化した案内標識による道迷いから、貴重な高山植物の区域への踏み込みも多発しています。

代表・松本智広について ── 山のプロフェッショナルが本気で挑む

代表の松本智広は、四国山岳ガイド協会に所属する登山ガイドです。ガイドになる前からヨーロッパアルプスへの遠征を重ね、資格取得後は中国・四国をはじめ、近畿、北海道、北・南・中央アルプス、さらに屋久島まで、幅広い地域でガイドを務めています。また、NHK BS『にっぽん百名山』では剣山や東赤石山、小豆島を案内するなどメディアへも多数出演。登山客を楽しませることに喜びを感じる人柄で、リピーターも多く依頼の絶えないガイドです。

一方で、特殊伐採を得意とする林業も営んでおり、その技術が見込まれ「日本戦没者遺骨収集推進協会」の派遣メンバーとして、パラオ共和国・ペリリュー島での遺骨収集活動に参加。ジャングルと化した土地の樹木を伐採・伐根し、遺骨収集のための道を切り開きました。

このように、松本は「山を見る目」と「山を守る技術」の双方を兼ね備えており、誰よりも山に対する熱い思いを持っています。
松本は、登山ガイドとして登山客と接する中で、森林整備の重要さも伝え、興味を持ち始めた人には「東予東部登山道整備プロジェクト」の活動へと誘います。自ら道を整えながら、登山者としても山を楽しむ。この好循環が、山への深い理解とさらなる楽しみを生み出しています。
しかし、登山道の整備はあくまで入り口に過ぎません。松本が本当に目指しているのは、四国中央市の山々が安全に整備され、誰もが楽しめる地域の誇りとして次の世代へ受け継がれていく未来です。
これまでの実績
- 大谷山・金見山での定期的な草刈りや標識設置、山頂の景観整備
- 石鎚古道・三十六王子社巡拝道の危険区間に、鎖やアンカーを使った本格的な転落防止対策
- 刈払機の安全な使い方や、実践的なロープワーク講習の開催による担い手育成
- 大谷山・金見山での定期的な草刈りや標識設置、山頂の景観整備など

今回のプロジェクトで実現すること
東予東部登山道整備プロジェクトが続けてきた活動やメンバーの熱い思いが市を動かし、山おこし課との官民共同プロジェクト「しこちゅ~山キングチャレンジイベント」が2026年8月11日にスタートしました。本プロジェクトでも対象となる16座の整備にますます力を入れ、倒木除去、草刈、見やすい指導標の設置などを行ってまいります。
整備予定箇所
【前山キング】大谷山/金見山/高文珠山/五郎丸/翠波峰/鋸山/豊受山/西の山
【奥山キング】塩塚峰/三傍示山/笹ヶ峰/橡尾山/佐々連尾山/赤星山/二ツ岳/東赤石山
「しこちゅ~山キングチャレンジイベント」の実施と並行しての整備となりますが、登山者が整備中のプロジェクトメンバーに出会うことも、山が人の手によって大切に守られ、生まれ変わっていくプロセスそのものを体感できる「アーティスト イン レジデンス」のような意味を持っていると考えています。
次年度に向けては山キングの対象となる16座に留まらず、整備を進める山を増やしていく予定です。 さらに、まき割りなど中高生や親子で参加できるイベントも企画し、次の世代が「自分たちの山」として主体的に関わることができるイベントも積極的に行います。

私たちが大切にしたいのは、山のプロと一緒に草刈りや看板づくりなどの整備を行うことで、登頂の達成感以上の深い満足感を感じていただくことです。それは、まるで施主が自分の手で家を建てるように、汗をかきながら山や自然と向き合う時間そのものが人生を豊かにし、地域に「山を守る仲間」という温かなコミュニティを育んでいきます。
登山が好きな人、歴史や文化に関心がある人、あるいは持っている道具や体力を活かしたい人 ── 関わり方の入り口は一つではありません。それぞれの興味関心の先に山が存在できるように多様なきっかけを用意し、街と山をつないで、100年、1000年先の未来へと続くプロジェクトへと育てていきたいと考えています。
このプロジェクトが目指す未来
遭難・道迷いゼロと自然保護の両立
安全な登山道と分かりやすい道標で、事故を防ぎながら、貴重な高山植物や生態系を守ります。
人の気配が野生動物との共存を守る
定期的な整備活動そのものが、シカなどによる食害の抑制につながります。
趣味から「地域を育てる活動」へ
登山を「趣味」から「山を育てる地域活動」へ。整備技術を継承した参加者が、次の担い手になっていきます。
地域経済への波及
山を訪れる人が増えることで、下山後に地元の飲食店や宿、商店街へ人が流れ、地域全体の賑わいにつながります。

寄付金の使い道
今回、皆さまから150万円のご支援を賜りたく思います。
| 費目 | 内容 | 金額 |
| 人件費 | 専門指導員 と作業員の人件費(有償ボランティア) | 490,000円 |
| 建物(倉庫) | 資材・道具保管用の倉庫 | 480,000円 |
| 標識 | 山頂設置用オリジナル金属プレート | 300,000円 |
| 消耗品 | 燃料、チェーンソー・草刈機の替え刃、ヘルメット等 | 80,000円 |
| 手数料 | 助成プログラムの手数料 | 150,000円 |
応援メッセージ

私たちの活動は、山や自然、そして地域を愛する方々にも支えられています。
國貞真由美さん
私にとって山は、疲れた心をリセットし、自分らしさを取り戻せる大切な場所です。思いついてすぐに登りに行ける地元の山が大好きです。
山頂からの景色に感動した日も、木々の間を吹き抜ける風に癒やされた日も、山頂で美味しいご飯が食べられた日も、その時間を安心して過ごせたのは、安全に歩ける登山道があったからでした。
登山道が荒れると、道迷いや滑落などの事故が増えます。わたしも経験がありますが、低山や里山の登山道が不明瞭な時によく起こります。
登山道は、単なる道ではありません。人と自然をつなぎ、思い出をつくり、また山へ帰ってきたいと思わせてくれる大切な存在です。
その道を守り続けてくださるボランティアの皆さまには、感謝しかありません。いつもありがとうございます。
私たち登山者が受け取っている感動を、これから山を歩く人たちにもつないでいくために、一人でも多くの方が、この活動を応援してくださることを願っています。
森下 拓紀さん
私も登山道整備のボランティアに参加させていただいたことがありますが、山を歩くたびに「ここも誰かが整備してくださったんだな」と、感謝の思いを感じます。
本来、自然というものは人の手を加えないととても険しく、厳しいものです。倒木、背丈以上に生い茂った草木、崩れやすい斜面、小川や崖にかかる橋、安全を守るガイドロープ、そして道迷いを防ぐテープなど……私たちが安全に登山を楽しめるのは、目に見えないところでたくさんの時間と労力をかけて、登山道を整えてくださる方々がいるからです。
だからこそ、私たちがいつまでも豊かな自然と美しい山に出会い続けられるよう応援しています。この素晴らしい登山道と、整備を続けてくださる方々の活動を、ぜひ一緒に守っていきましょう!
寄付いただいた方へ
このクラウドファンディングは、リターン品をお渡しする形ではなく、寄付という形でこのプロジェクトを応援いただく仕組みです。ご寄付いただいた方には、活動報告用の名簿にご登録いただき、整備の進捗や成果をメール等で継続的にお届けします。
結び
山は、一度荒れてしまうと、元に戻すのに何倍もの時間と労力がかかります。逆に、人が定期的に手を入れ続ければ、山はいつまでも地域の宝であり続けられます。
四国中央市の山々を安全で誰もが訪れ、楽しめる場所にすること。そして、その過程を通じて「山を守る」という大切な営みを次の世代へと手渡していくこと。
このプロジェクトは、単に登山道を直す事業ではありません。人が本来の自分を取り戻せる場をつくること、そしてたくさんの人が訪れてくれることで地域に賑わいをもたらし、未来につなげていく事業です。どうか、皆さまのお力をお貸しください。よろしくお願いいたします。

※えひめ西条つながり基金について
「東予東部登山道整備プロジェクト」への寄付は、公益財団法人えひめ西条つながり基金の「事業指定助成プログラム」を通じてお届けします。
えひめ西条つながり基金は、愛媛県西条市を拠点とする公益財団法人で、「つながりを豊かにして持続可能な地域を創る」ことを理念に掲げています。地域の課題解決に取り組む団体を支援する助成プログラムの運営や、複数の協働プロジェクトの実施、個人・企業・団体からの寄付の仲介などを通じて、西条・東予エリアをはじめとする地域の活動を資金面から支えています。
「事業指定助成プログラム」は、寄付者の皆さまが「応援したい」と選んだ団体・プロジェクトに、寄付が直接活きる仕組みです。今回、当基金の審査を経て採択された「東予東部登山道整備プロジェクト」へのご寄付は、基金を通じて確実にプロジェクトの活動資金として活用されます。
いただいたご寄付は、税制上の優遇措置の対象となる場合があります(詳細は基金公式サイトをご確認ください)。
基金公式サイト:https://escf.jp

