活動・団体の紹介
松本一歩が主宰する平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co.は演劇カンパニーとして2015年の団体設立より東京都・新宿区を拠点とし、主に東京都内で演劇作品を発表してきました。劇場での演劇公演のほか、第8回せんがわ劇場演劇コンクールへの参加(2017年)、第3回神奈川かもめ短編演劇祭への参加(2018年)、静岡の野外演劇フェスティバルストレンジシードthePark2020への参加(2020年)など意欲的に創作を続けてきました。ストレートな演劇をバックボーンとしながら戯曲や小説など様々なテクストに対しジャンル横断的な表現手法を駆使したアプローチを用い、独自の作品を発表してきたことに特徴があります。

早稲田小劇場どらま館(2016年、2018年)、下北沢OFF・OFFシアター(2019年)など劇場での公演を軸としながら、コンテンポラリーダンスの聖地・神楽坂セッションハウスでの演劇作品の発表(2018年、2019年)、神奈川県庁庁舎での演劇作品の発表(2018年)、静岡の野外演劇フェスティバル・ストレンジシードへの参加(2020年)等、劇場以外の場所でも新たな観客へ演劇を鑑賞してもらえるような機会を求めて意欲的に創作を続けてきました。
その後コロナ禍の影響下で演劇活動は縮小せざるを得なかったものの、次世代への演劇表現の継承を企図したショーケース『Audi-torium vol.1 きれいに晴れわたった、しんとした朝』(2021年 西早稲田in the house)の企画・運営や、感染症対策を施した上での『俳優の魂/贋作 不思議の国のニポン演劇盛衰史』(2022年 シアター風姿花伝)の創作にも取り組みました。
2022年、2023年には東京から新潟へ向かい第2回、第3回新潟劇王にも参加し、それぞれ『俳優の魂/贋作 不思議の国のニポン演劇盛衰史』『コメの国の米吉の冒険を記す劇』といった作品を発表しました。
2024年からは戸山公園野外演劇祭に参加し、第8回公演『若き日の詩人たちの肖像』の上演のためにクラウドファンディングで資金調達をして野外劇上演用の所作台、客席を製作しました。野外劇を上演する団体への舞台設営協力など、野外劇上演のための環境整備にも積極的に取り組んでいます。

野外劇の実施に伴う付帯企画として、早稲田小劇場どらま館の協力も得ながら学生向けの舞台美術ワークショップ、過去作品の上映会等も開催し、地域の野外演劇祭の認知向上に努めています。さらに俳優の集団として、野外劇に挑戦することのできる俳優の技術向上を目的とした毎週水曜日の舞台俳優向けのファンダメンタルトレーニング(無料)といった機会も設けています。
近年は小規模ながらも旅公演にも積極的に取り組み、2024年5月には長野県上田市犀の角でのツアー公演(『若き日の詩人たちの肖像』原作:堀田善衞)、2025年5月には盛岡・風のスタジオでの試演会(『英雄たち』作:秋浜悟史)を行いました。
活動の背景、社会課題について
近年日本中で劇場や演劇のためのスペースの閉館が相次いでおり、若い人たちが自由に作品をつくり、発表できる場所はどんどん少なくなっています。東京でも昨年民間の小劇場として大きな役割を果たしてきたこまばアゴラ劇場が閉館してしまいました。
そうした状況を前にした時、自分なりにいま目の前の場所で何かできることはないだろうかということを考えました。
昨年から私たちが作品を発表している野外演劇祭は上演する場所が公園である以上、そこで行われる上演は望むと望まざるとに関わらず、自ずと公共的なものにならざるを得ないということが、昨年初めて公園という場所で野外劇を発表した私たちにとっては新鮮な驚きでした。そうしてそこで演劇活動をするにしてもただ自分たちのやりたいことだけをやるのではなく、公園という場所での演劇活動を通じて近隣に暮らす地域の方々に何かしらを還元していくことができないかということを考えるようになりました。
先に述べたように演劇のための場所が少しずつ、しかし確実になくなり、作品を発表する機会が少なくなっていくときにそれを誰かにどうにかしてもらうのをただ待つのではなくて、自分たちの手でそうした場所や機会を整え、次の世代に繋げることができないかということを考えながらいま私たちは野外劇に取り組んでいます。
壁も天井もない野外劇という特性上、そこで行われる演劇活動はすべて街に開かれています。だからこそ演劇をつくる私たち自身もまた劇場に閉じこもるのではなくて、街に出て、その街と人々と多くの接点をもち、交じり合いながら活動を続けていかなければならないと考えています。
ゆくゆくはこの街に演劇があることがこの街に賑わいと豊かさをもたらし、演劇があることで地域の人たちが互いにやさしく暮らすことができ、そして演劇という営みが他の街にはない独自の文化を発信するための原動力になってくれることを心から望んでいます。
トップダウンではなくボトムアップで、草の根的に市民の手で自らつくりあげ、盛り上げ、そして他ならぬ地域の方々から切に必要とされていく野外劇のムーブメントを実現することが、一つの街から文化を発信することのモデルケースになればということを夢見ています。
活動内容の詳細、実績について
近年の野外演劇祭をめぐる演劇活動と、その原動力となっている想いについては高田馬場経済新聞様の下記の特集に詳しくまとめて頂いています。
直近の活動として、2025年5/30-6/1に野外劇を発表します。
平泳ぎ本店 第9回公演 戸山公園野外演劇祭参加作品『英雄たち』

作=秋浜 悟史
演出=岩澤 哲野(theater apartment complex libido:)
◯キャスト
小川哲也
河野竜平
鈴木大倫
松永健資
松本一歩
草彅智文
◯日時
2025年
・5月30日(金)18:30
・5月31日(土)18:30
・6月1日(日)18:30
(全3回)
*受付、開場時間は各回開演の45分前
*上演時間 約70分
◯会場
戸山公園(箱根山地区)野外演奏場跡
(東西線 早稲田駅より徒歩10分)
◯チケット
◆事前精算(passmarket)
一般 2500円
U-25 1500円
高校生以下 無料
https://passmarket.yahoo.co.jp...
◆当日精算(シバイエンジン)
一般 3000円
U-25 2000円
高校生以下 500円
*当日精算予約また当日券は事前決算より各500円増しになります。
シバイエンジン(当日精算)
https://shibai-engine.net/pris...
こころざしチケット 5000円(事前・当日精算共通)
こころざしチケットは、平泳ぎ本店の活動を応援してくださる方へ向けたチケットです。
*U-25、高校生以下チケットを購入のお客様は当日年齢などが確認できる証明書をご提示ください。
*パスマーケット(事前精算)での高校生以下は無料ですが、チケットのご予約はお願いします。
◯作品紹介
『新劇』1956年11月号にて発表。
秋浜悟史が早稲田大学演劇科在学中、自由舞台の夏休み地方巡演のために書き下ろした作品。
戦後の六・三・三教育を受けた劇作家の最初の登場であった。
敗戦による大人たちの変貌と戦後民主主義の挫折を観たものによって描かれた若い英雄たちの解放された関係は、戦後民主主義による教育を素直に吸収した健康さによって支えられており、当時の読者に新鮮な印象を与えた。
(三一書房 『現代日本戯曲大系 第三巻』解題より 一部抜粋)
◯スタッフ
作=秋浜 悟史
演出=岩澤 哲野(theater apartment complex libido:)
舞台監督=伊藤美雪香
美術=平山正太郎(センターラインアソシエイツ)
照明=髙瀬勇佑
宣伝美術=輝蕗
記録写真撮影=北原美喜男
制作=加藤じゅんこ(ジエン社)
当日運営協力=石塚晴日(ぺぺぺの会)
広報・衣裳協力=廣瀬響乃(劇団ホワイトチョコが好き。)
企画制作・主催=平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 戸山公園サービスセンター
助成=公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 【東京ライブ・ステージ応援助成】
◯協力
theater apartment complex libido:
センターラインアソシエイツ
ジエン社 ぺぺぺの会 劇団ホワイトチョコが好き。 シバイエンジン 早稲田小劇場どらま館
◯公演情報詳細
https://note.com/hiraoyogihont...
◯公演情報・内容等のお問い合わせ
平泳ぎ本店
hiraoyogihonten@gmail.com
代表者メッセージ

平泳ぎ本店 主宰の松本一歩(まつもとかずほ)です。
通っていた養成所を卒業して、そのときの同期たちと立ち上げた冗談みたいな名前の劇団が活動を始めて、あっという間に10年という月日が経ちました。10年の間にさまざまな巡り合わせが重なって、今は公園で野外劇に取り組むようになりました。
あくまで私たちは個人の任意団体であって、区や都を代表するような組織ではありません。しかし作品を発表する場所が公園であることで、自ずと公共的なものやことについて考えを巡らせることが多くなりました。
今、私たちが演劇を発表するというとき、願っているのは単に作品の演劇的な成果だけではなくて、その上演がこの街に刺激をもたらし、新しい風を吹き込んでくれることです。かつては軍楽隊の演奏場だったものの永らく忘れられ、何もなかった野原を、演劇のファンのみならずもっと広く地域に根ざし、心から応援してもらえるような豊かな場所へと変えていくことが私の夢になりました。
そしてその場所からもっとたくさんの作品が発表され、日本中の、そして願わくは世界中のさまざまなアーティストが集まるような解放区になってくれたらということを(少なくとも私は)本気で願っています。
壁も天井もある安全な劇場の中で、研究生としてただ演劇だけのことを考えていたところから10年かけて、今は野晒しで、公演期間中に降るかもしれない雨を気にしながら地域に根ざした演劇のありようを想像するようになりました。
次の10年はだから、しっかりと野に立って自分の身の丈よりも少し大きな「野外劇を通じた街への恩返し」という、ちょっと大それた目標を叶えるために脇目も振らずに突き進んでいけたらと思っています。
誰に頼まれたわけでもない、自分で選んで歩き始める平泳ぎ本店の次の10年の一歩目に、どうか力を貸してください。
寄付金の使い道について
直近の野外劇『英雄たち』の公演では公的な助成金にも申請しており、収支が±0となるように当初の予算計画を立ててはおりますが、野外劇には天候という不確定要素があるため
①降雨・荒天時に当日精算予約のお客様がご来場されずキャンセルが発生する可能性
②同じく事前精算のお客様への返金対応が発生する可能性
③なるべく多様な方に演劇に触れてもらうために各種チケット代をなるべく安価に設定した結果、満席になったとしても赤字が発生してしまう可能性
といったリスクや、ご来場される方への降雨時の雨具(カッパ)の購入のための追加の出費等も想定されます。
こうした野外劇特有の事情に鑑みた時、当初の公演予算に対しておおよそ50万円の赤字が想定され、チケット収入と助成金だけではそれらの金額を賄うことができません。
観客の皆様、スタッフ、出演者一同が安心して野外劇を上演できるようにするために、頂いた寄付金は役立てさせていただきます。
また公演単位ではなく劇団の運営という視点に立ってみた時には、たとえば直近では
・創作環境整備のためのリスペクト・コミュニケーション研修受講費用
・同会場代
・楽器演奏のためのワークショップ受講費用
・同会場代
・上演作品のための楽器購入代金
・他団体の方の野外劇の所作台設置、撤去の手伝いに伴う人件費
・野外劇のための資材を保管しておくための劇団倉庫費用
・舞台俳優のためのファンダメンタル(基礎トレーニング)開催のためのスタジオ代金
・取材、地域交流のためのツアー費用(交通費・宿泊費・人件費)
といった合計約80万円の支出があり、これらをすべて自己資金で賄ってきました。
野外劇のための費用50万円と、劇団運営のための全費用80万円の合計130万円のうち、今回のクラウドファンディングでは50万円(ネクストゴールでは80万円)の寄付を募りたいと考えています。これらの費用のうち50万円は自己資金で負担したいと考えています。
皆様にご支援をいただくことでこれらの負担が軽減され、より持続可能な形で来年以降の劇団の運営を考えることができるようになります。
また主宰の松本一歩が公的な支援を受けて、この秋に南米・チリの舞台芸術のフェスティバルの視察へと派遣されることも決定いたしました。
もし多くのご支援を頂いた場合には、一部を視察の際の通訳や資料の翻訳の費用へと充てることでその視察内容をより充実したものとし、海外との交流の機会を拡げ、自分たちの活動を通じて新宿と世界とを繋げるきっかけを生み出せたらとも考えています。
平泳ぎ本店の次の10年に向けて、皆様のお力添えを心よりお願い申し上げます。