HOPEとは?〜「生きづらさ」を抱えた子どもたちに、もうひとつの選択肢を〜
沖縄県糸満市にある「子ども第三の居場所 HOPE」は、学校に行けない、行かない選択をしている小学生から中学生までの子どもたちが、安心して自分らしく過ごせる場所です。
HOPEには、さまざまな背景を持った子どもたちが通っています。
教室に座ることができない子。人との関わりに疲れ、誰とも話せなくなった子。朝になると体が重くて布団から出られない子。理由がわからないまま涙があふれる日々を送っていた子。
家庭や学校の枠の中では支えきれず、それでも「どこかに助けてくれる場所があるかもしれない」と、わずかな希望を胸にたどり着いた子どもたちです。
私たちは、彼らのことを「怠けている」とは決して思いません。
ただ今いる環境では呼吸ができない。
ただ、自分をちゃんと見てくれる大人に出会えていない。
ただ、「休んでいいよ」と責めずに受け入れてくれる場所が、まだ見つかっていなかっただけなのです。
HOPEは、そんな子どもたちにとって、“初めて心がほどける場所”です。
ここでは、無理に学校に戻すことを目指しているわけではありません。
まずは「生きているだけで、あなたは素晴らしい」と伝えることから始めます。
子どもたちは、自分のペースで学び、自分の興味に触れ、人と関わりながら、少しずつ笑顔を取り戻していきます。
昨日まで無表情だった子が、ふとした瞬間に小さく笑ったり、
言葉を発することすら難しかった子が、「これ読んで」と本を差し出してきたり。
「もう一度、学校に行ってみたい」と学校へ行くようになった子、
家にこもっていた子が、地域の清掃活動に参加し、誰かに「ありがとう」と言われる経験を通じて、自分の価値に気づいていく。
そんな変化が、毎日の中に積み重なっています。
私たちはHOPEで、ただ“過ごす場所”ではなく、“育ち直しの時間”を大切にしています。
学び直すこと、生活リズムを整えること、感情を表現できるようになること。
遊びの中で自分を取り戻したり、人との関わりから安心感を得たり。
それら一つひとつが、子どもたちにとっては「生きる力」を育てる大切なステップです。
学校という道から一度それてもいい。回り道をしてもいい。
大事なのは、その子が「自分を信じられるようになること」。
「また歩いてみよう」と思える心を取り戻すこと。
HOPEは、そのための“もうひとつの居場所”です。
私たちはこの場所で、どんな子どもも見捨てない社会を実現したいと願っています。
子どもたちの心があたたかくほどけ、自分の足で未来を歩んでいけるように。
ここHOPEが、その出発点であり続けられるよう、これからもこの場所を守り育てていきます。
活動の背景、社会課題について
沖縄県の不登校児童生徒数は、全国でも深刻な状況にあります。
2022年度の文部科学省調査では、小学生の不登校率は全国ワーストの1,000人あたり25.3人。中学生も高校生も全国平均を上回り、県全体で不登校の子どもは6,853人(前年比1,567人増)。特に小中学生の長期不登校者は過去最多を記録しています。
その背景には、経済的困難、親子関係、学校での人間関係、発達特性の理解不足など、複合的な課題が存在しています。
HOPEは、こうした子どもたちと保護者が“孤立しない社会”をつくるために立ち上がった場所です。
ある母親はこう語りました。
「毎日一緒にいて、ずっと悩み続けて、どこに相談したらいいのかわからなかった。HOPEに出会って、ようやく母子ともに笑えるようになった。」
この声は、沖縄の多くの家庭の実情でもあります。
活動の内容
HOPEは、単なる“見守りの場”ではありません。一人ひとりの子どもに寄り添い、「生きる力」を育むための多面的なサポートを実践しています。
① 学習支援
・学習教材を使って、無理のないペースで「わかった!」「できた!」の成功体験を積み重ねます。
・学校復帰だけをゴールにせず、「学びって面白い」「わかるって嬉しい」と感じられることを大切にしています。
② メンタルケア
・月1回の個別面談やマインド講座で心をほぐします。
・感情のコントロールや自己理解を深める声かけ・対話を丁寧に積み重ねています。
③ 生活自立支援
・朝のルーティン、昼食準備、掃除などの生活習慣の確立を通して、社会性や自立心を育てています。
・「自分でできることが増える」ことで、自然と自信が芽生えます。
④ 登校支援
・学校行事や登校付き添い、送迎なども行い、「ちょっとだけ行ってみようかな」という気持ちを支えます。
・学校と連携しながら、家庭とも一緒に子どもの歩みを伴走します。
⑤ 社会とのつながりづくり
・課外学習、公共施設の見学、地域の人との交流を積極的に取り入れ、「世界は広い」と知るきっかけを届けます。
・キャリア教育や職業体験も実施し、未来への希望を育てます。
⑥ 遊び・イベント・ワークショップ
・体を動かしたり、地域で活動したり、農作業に取り組んだり。
・学校ではできない「ワクワク」を通して、人とつながる楽しさを体験します。
HOPEが子どもたちにもたらした変化
・机に向かうことすらできなかった子が、自分から「今日はこれをやる」と勉強を始めました。
・誰かと話すのも苦手だった子が、自分の意見をしっかり伝えられるようになりました。
・運動会や地域の行事に「出たい」と言うようになった子がいます。
・生活リズムが整い、朝ごはんを食べ、笑顔で「行ってきます」と出かけるようになった子がいます。
子どもたちは「ゆっくり、確実に、自分の力で」歩き出しているのです。
保護者からの声
・教室に入って勉強することを嫌がるようになった娘。私から離れようとせず、教室前のオープンスペースで一緒に過ごす⽇々でした。徐々に登校しぶりも始まり、少しでも状況を変えることができたらと、すがるような気持ちでHOPEを利用させていただくようになりました。HOPEには喜んで通い、表情が明るくなった娘。みんなといろいろなことに取り組みながら、楽しく過ごすことができています。「今日は学校行く」という言葉も出るようになり、娘も私も気持ちに余裕ができたと感じています。HOPEの活動を通して前向きに、楽しく過ごす娘の姿を見ることが、楽しみでもあり幸せです。(⼩4/40代母)
・不登校のときに苦しかったのは、母子で毎日ずっと一緒に過ごすこと。仕事が今まで通りできず、それがいつまで続くのか。どこに相談していいかわからず、不安と焦りでいっぱいでした。HOPEに出合って母子ともに離れる時間が増え、お互いに気持ちにゆとりができたと思います。親の想いや意向もヒアリングしてくれ、子どものペースに寄り添ってくれて、とても心が救われました。HOPEに通わせてもらったことで、私たち親子は本当に、心から元気を取り戻しました。学校以外の居場所があることが安心感につながり、今では息子は学校生活を楽しんでます。感謝しています!(⼩3/30代母)
・子どもの「学校辞める!」宣言から約1年が経ったある日、HOPEの一般開放イベントを通じて利用を開始することに。日々の活動やスタッフの皆さんのポジティブシャワーは、子どもの「今」を大切に尊重していただいている証だと強く感じています。おかげで、生活リズムにメリハリができ、異学年との交流や興味のある分野を広げられるようになりました。HOPEでしかできない貴重な経験や体験は、確実に子どもの心に刻まれていると信じていいます。(⼩3/30代母)
・移住してきて頼る先もなく、共働きで夜まで子どもが留守番をしなければならない状況でしたが、HOPEへ通うようになってからは大人の目がある環境で過ごすことができ、安心して仕事に行くことができるようになりました。成長期の子ども達に対する先生方のあたたかさと、子ども一人ひとりの成長をみる洞察力に【同じ地球に住む家族】なんだと感じさせられる、とてもありがたく愛情深い環境に感謝しています。彼らが大人になったとき、自分の経験を通して、注いでもらった愛情を世の中に循環できる人になるようにと願いながら、家庭でもサポートしていきます!(小3・中1の母)
保護者にも“希望”を届けたい
HOPEが支えているのは、子どもたちだけではありません。
子どもの不登校は、親の孤独でもあります。
「私の育て方が悪かったのでは?」
「誰にも相談できない」
「このままずっと家にこもってしまうのでは…」
そんな不安を抱えている保護者の方々に、毎月「ほっとスペース(お茶会)」を開催しています。
同じ経験をもつ親同士が語り合い、悩みを共有し合うことで、母親たちの表情が少しずつやわらいでいきます。
親子が一緒に希望を取り戻す。
HOPEは、そんな“家族支援の場”でもあるのです。
なぜ、今、支援が必要なのか?
HOPEはこれまで、無償での利用提供を続けてきました。
経済的に苦しい家庭の子どもたちにも「等しく安心できる場を」と、助成金の協力も得て、ギリギリで運営してきました。
しかし現実には、毎年かかる運営費は約1,000万円。
人件費・家賃・光熱費・活動費……全てを賄うのは到底難しく、今年度からやむを得ず月額7,700円の利用料を導入しました。
それでも、一般的なフリースクール(平均月3〜5万円)に比べれば、私たちの料金は約1/4程度です。
この金額は、経営努力と社会貢献を両立させるために、スタッフ全員で何度も話し合い決定した「最低限の継続ライン」です。
通っている子どもたちの家庭環境はさまざまです。
経済的に余裕がないご家庭、子育てをひとりで担うご家庭、日々の暮らしに精一杯なご家庭、両親が共働きで日中は家にいないご家庭など、さまざまな事情を抱えながらも、「この子に安心できる居場所を」と願う保護者の想いがHOPEに託されています。
私たちは、どんな子どもにも等しく居場所を届けたいと考えています。
そのためにも、地域の皆さま、全国の皆さまのご支援が必要です。
あなたのご寄付が、子どもたちの「明日もHOPEに行きたい」という気持ちを支えます。
どんな状況にある子どもにも、あたたかい場所と再出発の機会を届ける力になります。
寄付金の使い道について
皆さまからいただいたご支援は、以下の用途に活用させていただきます。
- 経済的に困窮する家庭の利用料の補助
- 子どもたちの昼食や教材、活動材料の費用
- 専門的支援スタッフの人件費・研修費
- 家賃・水道光熱費などの施設維持費
- 地域清掃や環境活動などの体験プログラム運営費
月1,000円から支援可能です。
たった1,000円でも、子どもたちの笑顔と安心に、確かな一歩を届けることができます。
最後に 〜HOPEという名前に込めた想い〜
私たちがこの場所に「HOPE(希望)」という名前をつけたのは、
どんな状況にあっても、「希望は、ここにある」と伝えたかったからです。
学校に行けない。家でも気持ちを出せない。
社会のどこにも“自分の居場所”を感じられない。
そんな子どもたちに、「大丈夫だよ、あなたを必要としている人がいる」と届けたい。
HOPEは、子どもたちにとって“第二の家”であり、“明日へつながる橋”です。
そして、これからも続けていきたい。どれだけ困難があっても。
そのためには、あなたの応援が必要です。
どうか私たちの活動に、マンスリーサポーターとしてご参加ください。
一緒に、子どもたちの未来をつくっていきませんか?