『原爆の図』は、近年ますます歴史的、社会的意味が大きくなっており、将来的には人類共通の財産と認められる可能性もあります。しかし丸木美術館では、建物の老朽化にともない、虫食いや紫外線などによって作品に傷みが出ており、このままでは永続的な展示が難しい状況です。そのため、2017年の開館50周年を期に「原爆の図保存基金」を立ち上げました。かけがえのない作品を次世代に引き継ぐために、お力添えをお願いいたします。
2025-08-02 17:15
原爆の図第2部《火》が丸木美術館に戻りました

夏の日差しが眩しい季節になってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。 日頃より当館へご支援・ご関心をお寄せいただきまして、誠にありがとうございます。
原爆の図の修復作業の進捗状況に加え、ひろしま忌や新たに加わった学芸員のご紹介等をお送りいたします。
原爆の図第2部《火》が戻りました
愛知県立芸術大学での修復作業を終えた、原爆の図第2部《火》が、6月13日に丸木美術館に戻りました。修復前と比べ、作品の画面が明るくなり、線や炎の描写が見やすくなりました。それにより、質感を生々しく感じていただけるようになりました。 久しぶりにすべての作品が揃い、大変多くの方々にお越しいただきました。 こうして、皆さまのご支援のおかげで、少しずつ原爆の図が修復できています。感謝申し上げます。 これからも、第3部、第4部、第5部と修復を続けていく予定です。どうぞ引き続き、原爆の図保存基金にご協力をお願いいたします。 |
改修工事の準備中
改修工事にともなう館内の片づけ作業がはじまり、位里と俊のアトリエ兼書斎だった小高文庫から、1950年代の貴重な資料がまとまって見つかりました。 発見したのは、全国巡回展や原爆被害の関係者を中心とする丸木夫妻宛書簡約330通、各地の巡回展のチラシや目録、そして1952年8月に発足した「原爆被害者の会」の最初の機関紙『ヒロシマ通信』第1号(1952年12月20日発行、B5判12頁、ガリ版刷り)、ウィーン平和大会への原爆被害者の代表派遣についての協力依頼文書などの資料です。 また、世界巡回展に関連する書簡や資料なども次々と見つかっています。これらの資料は整理を進めて、いずれ公開していきたいと構想しています。 |
「簪(かんざし)—位里、俊、スマの名作選」
7月19日(土)からは、「簪(かんざし)—位里、俊、スマの名作選」と題して、改修前の最後の展覧会を開催します。 俊は、スマが亡くなる年の春に描いた最後の大作について、次のように書いています。 「猫がおり、犬がおり、鳥が飛び交い、花が咲き誇り、おばあちゃんの生涯の曼陀羅図となりました。私たちは、きらきら輝く簪をこの絵の題名にして、働きとおした女、おばあちゃんの生涯を飾ることにしました」(『丸木スマ画集 花と人と生きものたち』、小学館、1984年=現在は絶版) この秋から長期休館に入る、丸木美術館の最後の空間を飾る「簪」の数々。位里、俊、スマの珠玉の絵画をお楽しみください。 ----- |
被爆80年ひろしま忌
被爆80年にあたる今年、丸木美術館は改修前の最後のひろしま忌を迎えます。 雨漏りや浸水など、近年の気候変動に対応するのが難しい建物ですが、4度の大規模な増築を経て、長く親しまれて愛着のある建物です。残された貴重な時間を大切に過ごしていきたいです。 今年は、振付家・ダンサーの白神ももこさんによるパフォーマンス「やまんば、かい。」を上演予定です(有料、要事前申込/詳細はこちら)。 丸木俊は東松山市の公民館のホールに、「平和のやまんば」の緞帳を残しています。民話に登場するやまんばを、自然と共生し命を育てる平和の象徴と考えていたのです。 かつて俊が夢想し、松谷みよ子、石牟礼道子ら親しい女性たちに語っていたという「やまんば会議」のイメージを手がかりに、現代のさまざまな声が集う場を創り上げます。 また、今年は2020年の新型コロナウイルス流行で中止して以来、5年ぶりに都幾川のとうろう流しを行う予定です。ぜひご参加ください。 なお、遠方の方など、当日、丸木美術館にお越しいただくのが難しい方は、ぜひ『オンラインでめぐる丸木美術館「原爆の図」ってなに?』※ をご視聴いただき、広島に思いを寄せていただければ幸いです。 ※こちらの映像は、新型コロナウイルス流行中の2021年に、54周年開館記念日の特別企画として制作されたものです。YouTubeには日本語・英語の字幕の設定もございます。 |
学芸員着任のお知らせ
5月16日より、新たに職員として関町卓朗学芸員が加わりました。 かつて丸木美術館で学芸員実習を行い、その後、イギリス・ロンドンへの留学などを経て帰国しました。現在は「原爆の図」世界巡回の調査を進めています。 常勤職員4人体制で改修工事、リニューアルオープンを乗り切っていきます。どうぞよろしくお願いいたします。 |
丸木美術館は2025年9月28日をもちまして、全館改修工事のため長期休館に入ります(リニューアルオープンは2027年5月を予定)。現在の丸木美術館の建物で「原爆の図」を観ることができるのも、あと少しです。休館前にぜひ一度、足をお運びください。 |