
この病気を知っていますか?
重症筋無力症(Myasthenia Gravis:MG)は、神経から筋肉へ送られる信号の伝達がうまくいかなくなることで、筋力の低下や疲れやすさといった症状が現れる病気です。しかし、手足の動作や移動のしづらさにとどまらず、呼吸や食事にも影響が及ぶことがあります。症状が進行すると、車いすの使用や胃ろうの設置、人工呼吸器が必要となる場合もあります。
MGの症状は、眼の周囲の筋肉に現れる軽いものから、全身に広がる重いものまでさまざまです。症状の現れ方や進行の仕方は患者によって大きく異なります。その中でも、特徴の一つに「変動性」があります。時間帯によって症状の強弱が変わる「日内変動」や、日ごとに違いが出る「日差変動」が見られることがあります。しかし、見た目では分かりにくいため、「怠けているのでは」「精神的な問題では」と誤解されることも少なくありません。さらに、患者が実際に感じている症状や困難と、医療従事者が想定する「重症筋無力症」のイメージとの間には、大きなギャップが存在します。これらが原因で、診断までに数年を要したり、症状が悪化して退職や退学に至ったりするケースもあります。つまり、理解の遅れが、患者にとっての「時間」と「人生」を奪ってしまうのです。
MG患者の現実
MGは放置すれば悪化しますが、適切な治療を受ければ回復が期待できる病気です。それにもかかわらず、診断や治療の開始が遅れ、長い間苦しむ患者は少なくありません。私たち自身も、その一人です。
リョウヘイ 将来有望視される研究者だったが、20代でMGを発症。診断・治療開始までに約10年を要したため、大学院を退学に。現在も4ヶ月毎に入院治療を受けながら、生活している。体調が良い時は、合気道道場の代表理事として活躍しているが、日差変動による症状が強い時には、歩行に杖が必要。

ユカリ 世界ランキング1位の大学院に合格したと同時に、MGを発症。診断・治療開始が遅れて重症化・難治化。20代の約半分をベッド上で過ごし、様々な機会を断念。現在も6週間毎に通院治療を受けるが、風邪など些細なことを契機に寝たきり入院になるなど、年に数回増悪を繰り返している。

ナツミ 10代で発症。診断が遅れ、酸素投与を要するほど重症化。本格的な治療を受けられるようになるまで、2年を要した。その後も在宅医療を必要とする厳しい症状に直面しているが、NPOでボランティアしながら、学問にも励んでいる。

MG患者が集まると、「診断までに10年かかった」という声を聞くことは珍しくありません。日本人の平均年収は460万円であるため、単純計算でも10年間で約4,600万円。働く機会の損失だけを見ても、これは個人の問題にとどまらず、社会全体の損失でもあります。
もし発症の時点でMGを疑い、すぐに治療を受けられていたら
私たちは、そう思わずにはいられません。どれほどの患者がこのような経験をしているか、信頼できる近年の統計データはありません。しかし、それは私たちが「いない」からではなく、私たちの声がまだ十分に届いていないという現実の表れです。
私たちの目的 重症筋無力症かけはし基金の設立
このようなMG患者を取り巻く困難を解決するには、①日々患者が経験している症状や苦労への理解と②MG患者を支える医療者・研究者のキャリア支援が必要不可欠です。そのために、私たちMG患者当事者が中心となって一般財団法人 重症筋無力症かけはし基金を設立し、患者の声を医療現場・研究者・社会に届け、“理解の橋(かけはし)”を築きます。



本賞は、初期キャリアの医療従事者・研究者を対象に、MG患者が日々直面する症状や困難への深い理解を示した方を顕彰します。まだ分かっていないことが多い疾患であるMGに対し、医学的知識の限界を真摯に受け止め、患者の経験に耳を傾け、理解しようとする姿勢も重要な審査対象とします。
応募は自薦・他薦を問わず受け付け、提出されたエッセイをもとに選考を行います。選考理由は公開し、日本を代表するMG専門医、研究者、患者支援の第一人者、理学療法士などで構成される評議員からのコメントとともに発表します。
「賞」という形で優れた人材を照らすと同時に、専門家とともにMG患者の声を医療現場と社会へ届けます。


100人の患者には、100通りの人生があります。発症の経過、診断までの道のり、治療、そして社会復帰。それぞれの経験を記録し、MG患者の質的データとして、医療・研究・教育の現場で共有できる形にしていきます。
“ペイシェントジャーニー(Patient Journey)”と呼ばれる患者の「生きた声」は、未来の医療を照らす道しるべとなります。
永続的な仕組み
いただいたご寄付は、財団の基本財産(元本)として積み立て、元本を取り崩さずに運用益によって活動を継続します。一度のご支援が、消えることなく長期的に社会を支える仕組みとなります。また、財団設立に必要な登記費用や、サーバー維持などの運営経費を直接支える形でのご寄付もお選びいただけます。

理事は無報酬のボランティアとして、監事・評議員は専門家によるプロボノ(無償協力)として活動します。会計情報はすべて寄付者の皆さまに公開し、弁護士・会計士によるプロボノネットワークの支援のもと、最小限のコストで最大限の透明性を保つ運営を行います。
ご賛同・ご寄付の種類について
「重症筋無力症かけはし基金」では、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまに、いくつかのコースをご用意しています。ご支援は、基金の運営のため、大切に活用いたします。
長期サポーターコース(基本財産として積み立て、継続的な活動の礎となります)
1) MG患者当事者枠 500円
MGにより就労や日常生活に困難を抱えている当事者が声を上げるための特別な応援枠です。
システム上、0円設定ができず500円となっております。
【特典内容】
お礼メールと活動報告をお送りします。財団HPや活動報告書のサポーター欄に「お名前」を掲載します。(匿名希望の場合、「公開するお名前」欄にニックネームをご記入ください。)
※掲載時は他のサポーターと同様の扱いで、当事者枠とは記載しません。
2)個人サポーター 3,000円
【特典内容】
お礼メールと活動報告をお送りします。財団HPや活動報告書のサポーター欄に「お名前」を掲載します。(匿名希望の場合、「公開するお名前」欄にニックネームをご記入ください。)
3)個人サポーター 1口 5,000円
1口=5,000円として、口数に応じて以下の特典がございます。
| 口数 | 特典内容 |
|---|---|
| 1口〜 | お礼メールと活動報告をお送りします。 財団HPや活動報告書のサポーター欄に「お名前」を掲載します。 (匿名希望の場合、「公開するお名前」欄にニックネームをご記入ください。) |
| 2口〜 | オンライン活動報告会にご招待します。 |
| 10口〜 | 財団HPでインタビュー記事を掲載(希望者のみ) |
| 20口〜 | 一般財団法人重症筋無力症かけはし基金の「設立者」の一人として登録 (希望者のみ。氏名・住所・電話番号の登録が必要になります。) |
4)法人・団体サポーター 1口 10万円
社会の一員として活動を後押しくださる法人・団体向けの枠です。
| 口数 | 特典内容 |
|---|---|
| 1口〜 | お礼メールと活動報告をお送りします。 財団HPや活動報告書のサポーター欄に「企業名」を掲載します。 オンライン活動報告会にご招待します。 |
| 3口〜 | 財団HPで対談記事を掲載します。 財団HPに企業ロゴ掲載します。 |
| 5口〜 | 患者視点の「重症筋無力症かけはし賞」選考詳細レポート (個人が特定されないように編集されたもの)が閲覧可能です。 |
| 10口 | 患者当事者でもある財団理事一同からメッセージ動画をお送りします。 |
短期サポーター(登記費用、サーバー管理費、事務費の直接支払いに)
5)設立経費サポート 1口 5万円
【特典内容】
お礼メールと活動報告をお送りします。財団HP・年次活動報告書のサポーター欄に「お名前/企業名」を掲載します。
応援者メッセージ

寄本恵輔 先生
国立精神・神経医療研究センター病院
身体リハビリテーション部
第1理学療法室 主任
重症筋無力症(Myasthenia Gravis: MG)は、神経筋接合部の自己免疫異常によって筋力低下を生じる疾患であり、この十数年で、抗体の種類や病態に応じた分子標的治療薬の開発が進み、症状コントロールの可能性は大きく広がりました。
しかし現実には、診断までに長い時間を要する症例、未知の抗体により進行する病態、さらにはウートフ現象(Uhthoff's phenomenon)などによる日常的な症状悪化に直面する患者が今なお存在します。加えて、MGはしばしば就学・就労・結婚・妊娠・子育てといった重要なライフステージに発症することが多く、再発への恐れや社会的理解の乏しさが、患者の人生設計に大きな影響を及ぼしています。症状が目に見えにくいため、周囲に理解されず孤立してしまうこともあり、その背景には医療者・社会双方の「見えない疾患」に対する想像力の不足があります。
このような現状に対して、「重症筋無力症かけはし基金」は、患者自身の経験を医療・研究・教育の現場に届け、患者の声を社会と医療をつなぐ"新しい知の基盤"として可視化する取り組みです。この構想は、医学の枠を超え、患者と医療者が共に学び合う文化を育てるものとして極めて意義深いと考えます。
私は、神経筋疾患のリハビリテーションを専門とする立場から、本基金の設立趣旨に深く賛同し、またその理念と活動を心から応援しています。
患者の声を出発点に医療を再構築していく姿勢は、すべての医療分野に共通する原点であり、この活動が将来、より包括的で人間中心の医療を築く"かけはし"となることを強く期待いたします。
最後に
医学の進歩は、いつも患者の経験から始まります。
まだ病名がなかった時代、人々が自らの不調を語ったことが、医学の礎となりました。
重症筋無力症(MG)は希少疾患ですが
“わからない症状を理解しようとする姿勢”は、あらゆる医療に通じる原点です。
「データにない声」を尊重する文化が広がれば、
慢性疾患や女性特有の疾患など、多くの領域でより良い診療が生まれます。
この基金は、MGに限らず、
「患者の経験から学び、新たな発見を育てる医療」を支える“かけはし”でもあります。
患者・医療者・研究者・社会が学び合い、
誰もが安心して不調を語れる環境を広げていく
その第一歩になることを願っています。
皆さまの温かいご理解とご支援を、心よりお願い申し上げます。
2025年11月7日
一般財団法人 重症筋無力症かけはし基金 設立準備委員会

このプロジェクトは「GIVING100 by Yogibo」の応援プロジェクトです。

金額500円 |

金額3,000円 |

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金額50,000円 |

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