マンスリーサポーターの皆様、2026 年も、どうぞよろしくお願いいたします。
あおぞらの活動の中で、タンザニアを訪れた際に出会った、ひとりの男の子のことを、いまも心のどこかで思い返します。
妊娠高血圧症によるけいれんで、お母さんを亡くした子でした。
専門医ではないとはいえ、妊娠高血圧症が命に関わる病気だという認識が、当時の僕には正直ほとんどありませんでした。

本来であれば対応できたかもしれない病気で、お母さんを亡くした。
その事実を前にして、この世界は公平ではないな、と感じました。
平等になんてできないし、そんな思想を持ち合わせているわけでもありません。
それでも、こうした悲しみは減らしたい。
ただ、それだけを、ごくごく単純に思いました。
僕の原点は、いつもそこにあります。
医療の届いていない人に、何ができるだろうか。
それを、どうやって持続的に続けていけるだろうか。
この先どうなるかなんて、正直わかりません。

こんなことをしても無駄だと言われることもあります。
それでも、僕はこういう活動を続けたいと思っています。
お母さんは、いるべきだと思うからです。
宗教や肌の色、学歴や収入が違っても、救える命があるなら、シンプルに救うべきだと思うからです。
どれだけ自分のやっていることが小さくても、どうしても諦めきれません。
まだまだ、頑張っていきたいと思っています。
昨年は、「さよなら丸の内TOEI」にて、僕が原作を書いた向井理さんの主演映画「僕たちは世界を変えることができない」が上映され、監督の深作さん、プロデューサーの佐藤現さん、そして映画に携わってくださったスタッフの皆さんと一緒に、約10年ぶりに映画を観る機会がありました。

奇跡みたいな映画だな、と思いました。
20 歳の頃、渋谷の郵便局で「カンボジアに150万円あれば小学校が建ちます」というパンフレットを見ました。単純にワクワクした僕は、仲間と一緒にカンボジアに小学校を建て、2008年ごろ、誤字脱字だらけの自費出版の本を、借金をして世に出しました。
根性論で書店に突撃するという、今思えば極めて効率の悪い方法で本を売り、たくさんの人に助けられながら、気づけば映画になっていました。

深作監督と現さんが、「葉田くんの本を映画にしたい」と言ってくれなければ、それは起きなかったことです。
それ以下でも、それ以上でもなく、奇跡でした。
10 年ぶりに観た映画の中の自分は、今の僕には理解できない存在でした。
なぜ、別にやらなくてもいいことに挑戦し、勝手に傷つき、勝手に仲間を集め、勝手に自費出版までして、あそこまで真剣だったのか。
でも、少し羨ましくもありました。
映画化のあと、いろいろなことがありました。
何度も迷って、がむしゃらに動いて、失敗して、それでも最後は、いつも自分より優秀な人たちに助けられてきました。

当然ですが、力のない僕に、世界なんて変えられるわけがありません。
それでも、生きている限り、最後の最後まで挑戦したいと思っています。
いつか、また本を書きたいと思っています。
いまやっていることを、きちんと続けて、結果を出して、「僕たちは世界を変えることができる。」という本を書きたい。
過去に真剣に行動したことは、現在の自分の糧になって、人生を支えてくれることがあります。
だからこそ、いまを真剣に生きることが、未来の自分を、そして過去の自分を肯定することにつながるのだと思っています。

僕たちは世界を変えることができない。
だから何だ。
10 年以上経ったいまも、僕はまったく諦めていません。
全力でエベレストを登っていたつもりが、一息つくとそれが高尾山の五合目だったと気づくこともあります。
それでも、もう少し世界に貢献できるように、一歩ずつ、まだまだ登っていきたいと思っています。
答えは、いつもひとつです。
赤ちゃんの命を救いたい。
赤ちゃんのそばにいる、お母さんやお父さんが、泣かないように。
涙を、少しでも減らしたい。
そのために、引き続き支えていただけると嬉しいです。

現在、2024年にクラウドファンディングにて皆様から母子棟建設のご支援をいただきましたスヴァイルンピア保健センターに浄水バイオサンドフィルターの設置を進めています。
この地区は、鉄分による影響により井戸水が茶色く濁ってしまいます。水質調査の結果、浄水フィルターによって除去が可能と分かりました。
来月にはカンボジアに渡航いたします。
合わせて、子どもの命を救うための新生児蘇生法スペシャリストのスタッフチームも講習を行うために渡航いたします。

それ以降にも、カンボジアにて介護予防や能力開発への関わりが出来ればと考えています。どのようにして患者さんの潜在能力を引き出すかを現地の人と一緒に考え、実践していきたいと思います。
今年も、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
医師
認定NPO法人あおぞら
理事長 葉田甲太



