活動・団体の紹介
レインボーリボンは東京都葛飾区のある公立小学校PTAで出会ったお母さんたちがつくったNPO法人です。
活動を始めたきっかけは2006年の小学校PTA広報部でした。
その年の広報部は1年生から6年生まで2クラスずつ12人のお母さんが集まっていましたが、そのうち2人が外国人だったのです。
PTAの役員、委員といえば「押しつけ」「強制」というイメージが今以上に強かった当時、特に広報部はなり手がなかなかいないため、なんと、日本語が読めない外国人のお母さんが広報紙を作るという事態になったのです。
しかし、このことが意外な展開に結びつきました。
外国人のお母さんは、わが子が通っている学校はどうなんだろう、先生はどんな人なんだろう、心配と憧れと、「知りたい」という純粋な気持ちで取材に取り組みます。一方、外国人であるために差別を受けた苦い経験も語ってくれました。
外国にルーツがある人、障がいのある人、子どもに障がいがある親、引っ越してきたばかりの人など、PTAは多様な文化的背景を持った人の集まりです。わが子を同じ学校に通わせているという一点を共通項として、子どもの幸せのために活動するのです。
思わぬ「PTAの面白さ」を発見し、私たちはお節介にも、「PTAは楽しいですよ」「外国人の保護者がいたら声をかけて友だちになりましょう」というムーブメントを起こしていきました。これが「多文化共生のPTAを作ろう」というレインボーリボンの原点です。
活動の背景、社会課題について
活動の2本目の柱「いじめ防止」は、NPO法人化に向けて動き出した2012年から14年にかけて、私たちの子どもが通っていた中学校で実際に起きた事件をきっかけに取り組み始めました。
子どもの幸せのために活動しているPTAが、いじめ事件に対して無力であって良いはずがないという強い思いが原動力でしたが、現実に被害者側と加害者側が存在する枠組みの中で、無力感に打ちひしがれたことも事実です。いったん起きてしまった事件を解決に導く力は、残念ながら私たちにはありませんでした。
ただ、いじめ事件を繰り返さない環境を作ること、未然防止、早期発見のための活動はできるはずです。
大人の世界でも同じですが、被害者が自分の気持ちに蓋をして我慢するのではなく、「逃げる」「誰かに相談する」など自己防衛をすること、傍観者は自分自身の安全を優先しつつ被害者に寄り添い、安全管理者(学校の場合は先生)に通報すること、加害者は加害行為に至る根本的な問題(自分自身の傷つき体験など)の解決に導かれるチャンスを得ること――が必要です。
こうしたことを子どもたちに伝える「いじめ防止教室」の実施を中心に、子どもを暴力から守る活動に取り組んでいます。
2016年からは地元で「こども食堂」を運営しています。
厚生労働省が2014年に発表した「子どもの相対的貧困率」16.3%、6人に1人の子どもが相対的貧困状態にあるというショッキングな数字を見ても、当時は自分の身の周りの子どもたちに置き換えて考えることは難しいと思っていました。
相対的貧困は絶対的貧困とはちがって、ボロボロの服を着ているわけでもないし、ある程度の年齢になればプライドもあり、家庭の困窮具合などは外に見せないようにするものだからです。
しかし、「こども食堂」をやっているうちに、これもやっぱり「私たちの目の前で起こっていたことだった」と分かってきました。
PTAで活動していれば、周囲から「困ったお母さん」と言われる存在が「6人に1人」くらいの割合でいるものです。それは「困っているお母さん」なのです。
ひとり親世帯の子どもの貧困率は50.8%、2人に1人です。
子どもを育てながら夜も昼も働いているようなシングルマザーは、経済的にも精神的にもたいへんなストレスにさらされています。
活動内容の詳細、実績について
現在は地域の居場所としての「あおとこども食堂」と、経済的困難を抱える子育て家庭を支援する「フードパントリー」を交互に、毎週土曜日、開催しています。
「あおとこども食堂」は赤ちゃんから高齢者まで、地域の誰もが参加できる「遊びコーナー」と、経済的な事情で学習塾に通えない子どもに大学生ボランティアが勉強をみる「学びコーナー」で過ごした後、ボランティア手作りの栄養たっぷり弁当をお持ち帰りいただきます。
フードパントリーは経済的困窮、障がいや病気、ひとり親など、困難を抱えている子育て家庭を支援する取り組みです。子ども時代の困難な経験から生きづらさを抱える若者や、難民申請中の外国人なども支援しています。
皆さまからのご寄付によって購入した食料や、地元の方々からのご寄贈品、企業様が障がい者雇用の場として運営している農園からの野菜の寄付などをお持ち帰りいただいています。
ボランティア・スタッフとの温かい交流を通して、親御さんにもお子さんにも、「ひとりじゃないんだ」と実感していただき、誰も孤立することのない地域づくりに貢献しています。
代表者メッセージ
2014年にNPO法人化したときは、「10年がんばろう」が目標でした。
10年がんばれば、全国のPTAは子どもの幸せのために生き生きと働く社会教育団体としてイノベーションを遂げているに違いない――それを見届けて解散しよう――そう思っていました。
しかしPTAは自由な発想で活き活きと活動しているところと、任意団体なのだから加入も活動も任意のはず…と、停滞しているところ、二極化しているように見えます。
いじめ防止教室もこども食堂・フードパントリーも、ありがたいことではありますが、切実なニーズがあって、やめるわけに行きません。
教育や福祉の分野で専門知識や経験を積んだわけでもない、「地域のおばちゃん」の私たちですが、困難を抱えた子ども、親御さんが目の前にいる限り、そして私たちの体力知力気力が続く限り、小さなNPOとして頑張っていきたいと思います。
寄付金の使い道について
設立当初には思いもよらなかった皆さまからのご期待と信頼をいただき、現在の事業規模は500万円ほどになっていますが、この規模では専従スタッフを雇用することは難しい状態です。
レインボーリボンの活動を必要としてくれる子どもたち、親御さんたちのためにも、世代交代が可能な、持続可能な組織に生まれ変わる必要があると考えています。
いただいた寄付金はこども食堂・フードパントリー等の事業経費に充てさせていただくとともに、将来の組織基盤強化のためにも活用させていただきたいと思います。