
毎日のように電車やバスで痴漢(性暴力)が起きている――この現実を知っていますか?
皆さんも、電車やバスの中で痴漢や盗撮の性暴力が起きているのをご存じだと思います。もしかしたら、周囲で被害に遭っている人を見たことがあるかもしれません。でも、そのときに「何もできなかった…」と悔やんでいる方もいるかもしれません。
「公共交通機関」は、本来なら安全であるべき場所です。それなのに、性暴力が日常的に発生していて、それを周囲の人が見て見ぬふりをする。この状況は明らかに異常です。
電車内痴漢は100年以上前から存在していた社会課題です。例えば、痴漢の被害が相次いだことで、明治45年(1912年)には女性専用車が設置されました。また、当時の新聞には「電車内で痴漢にあって悔しい」といった女学生の投稿も残されています。
なぜ、こんなことがいつまでも起きているのでしょうか?
最近も、X(旧Twitter)でこんな投稿が話題になりました。
**「高校生の娘がバスで痴漢され、バス停から家まで追いかけまわされ泣いて帰ってきた(警察連絡済み) **
・相手は50~60代男性
・おそらく同じ町内(家は知らん)
・今年に入ってから3度付けられ追いかけられる
こういう場合の対処方法どうしたらいいんだろ?教えてください**」**
https://x.com/tomocha_kabu/status/1898364270796218521
娘さんは、怖すぎて声あげることもできず、運転手さんに伝えることもできなかったそうです。保護者である投稿者さんは、すぐに警察に通報。その後、警察の捜査で監視カメラの映像から犯人の顔がわかり、犯人の自宅も判明したそうです。
保護者の方が冷静に対応し、迅速に警察へ通報した判断は適切だったと言えます。
電車やバスの中で、被害者が勇気を出して声を上げても、助けてもらえないことがあります。
実際、痴漢抑止バッジを考案した殿岡たか子さんも、警察の指導で「相手の手を掴んで“この人、痴漢です!”と叫べば、誰かが助けてくれる」と言われました。彼女は、毎晩、声を出す練習までして、勇気を振り絞り「この人、痴漢です!」と声を上げました。
しかし、実際には…
- 誰も助けてくれなかった。
- 加害者は「俺じゃない」「冤罪だ。示談金目当てか」と罵倒して逃げていった。
痴漢被害にあった彼女は、誰にも助けてもらえなかったことで二重に傷つきました。痴漢抑止バッジを考案したころの彼女は、大人(社会)に対する不信感の塊になっていました。
なぜ被害者が声を上げても、だれも助けてくれないのでしょうか。
これは、**「傍観者効果」**と呼ばれる現象が原因の一つと考えられています。
傍観者効果とは?
傍観者効果とは、「周囲に人が多いと、誰かが助けるだろうと考えてしまい、結果的に誰も助けない心理現象」です。
公共交通機関は人が多く、まさにこの「傍観者効果」が強く働きやすい環境です。
- 「自分が声を上げたら間違っていたときに恥をかくかもしれない」
- 「自分が介入してトラブルに巻き込まれるかもしれない」
- 「周りが静かにしているのに、自分だけ動くのは怖い」
そうした心理が働いてしまい、痴漢被害に遭っている人を見ても、助ける行動が取れないケースが多いんです。
痴漢抑止活動の成果
でも、この状況は少しずつ変わってきています。
2020年に作家のアルテイシアさんが台本を書き、【性教育YouTuber】シオリーヌが制作した「#ActiveBystander=行動する傍観者」の動画は、当時、大きな反響を呼びました。この動画でアクティブバイスタンダーという言葉や概念を知った人も多いでしょう。
東京都の「令和5年度痴漢被害実態把握調査」によると、目撃者の行動によって痴漢被害の9割超が止まったことがわかりました。 「周囲の人が痴漢を防ぐ」という考え方を広め、「その場に居合わせた人=第三者」の介入行動を増やしていくことが重要です。
痴漢抑止活動センターも、長期スパンで痴漢犯罪を見過ごす社会を変えようと活動を継続してきました。
それが、毎年、学生を対象に実施している「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」です。これまでに、16000人以上が、デザインの応募や審査に関わっています。参加の3~4割が男子で「痴漢がひどいことだと初めて知った」「友達が被害を受けたと知ってショック」「痴漢を許せないと思った」いったメッセージを多数いただいています。
学生時代にこうした意識を持った子ども達は、将来、痴漢から子どもを守ってくれる大人になると信じています。
実は、痴漢抑止バッジをしばしばネットで炎上しています。ある年には、**「バカなことをやっている」**と嘲笑され、Xで炎上しました。
ところが、ある日、痴漢抑止バッジユーザーさんからこんな投稿がありました。
「このバッジをつけてから、被害に遭わなくなった。だから、あまり叩かないでほしい」
この一言が、嘲笑するポストはぱったりと止み、変りに応援のコメントが増えました。それだけではなく、活動に共感しマンスリーサポーターになってくださる方も増え、翌春から痴漢抑止バッジの無償配布に踏み切れました。
痴漢抑止バッジを付けることで、「自分は痴漢を許さない」という意思表示ができ、加害者への抑止力になります。
- 実際にバッジをつけてから、痴漢に遭わなくなった
- 「バッジを持っていることで安心感がある」との声が届いた
- 周囲に女性が立ってくれるようになった
このように、バッジを通じて電車の中の安全度も少しずつ変わってきています。
改善への提案・行動の呼びかけ
痴漢を許さない社会を作るためには、一人ひとりが「自分ごと」として考えることが大切です。
「公共交通機関での痴漢や性暴力」は、被害に遭った人の心に大きな傷を残します。だからこそ、「異常な状況」を放置しないでほしい。助けを求める声が聞こえたら、ぜひ一歩踏み出してほしいです。
では、私たちにできることは何でしょうか?
✅ もし目の前で被害に遭っている人を見かけたら、声をかけてください。
→ 直接助けることが難しくても、「大丈夫ですか?」と声をかけるだけで加害者は引く可能性があります。
「誰かがやるだろう」ではなく、自分が動くことで状況を変えましょう。
✅ 痴漢に困っているなら、バッジを申し込んでください。
→ 痴漢抑止バッジは、無料で配布しています。
✅ 子どもたちを守りたいと感じている方は、ぜひ「サポーター」になってください。
→ 痴漢を防ぐための活動を支援してくれる仲間を募集しています。
この問題の解決を一緒に目指していきましょう。