
先日、Xでとても印象的な投稿を見かけました。
「痴漢をしない男性たちは、“リスクを負ってでも毎日痴漢したい男性”が存在することを想像できないのかもしれない」
私は、この発言をとても鋭い指摘だと感じました。
というのも、私自身も最近、ある男性との会話の中で、その「想像のズレ」を痛感する出来事があったんです。
その人はコンサル業をしていて、痴漢抑止活動センターの寄付を増やすための施策を一緒に考えてもらっていました。痴漢抑止活動のサポートをしていただくのですから、痴漢犯罪に関する認識をすり合わせる必要があります。
ところが話しているうちに、痴漢被害に対する認識が私とはまったく違うことに、すぐに気づいたんです。
たとえば彼は、
「学校に1~2人くらいは痴漢に遭った子がいたかもね」と言っていました。
でも、東京都が令和5年度に実施した大規模な調査では、
「痴漢被害にあったことがある」と回答した人が30%にのぼっています。これは、決して少ない数字ではありません。
さらに内訳を見ると、女性では約45%、男性でも約9%。
つまり、「女子の2人に1人」「男子でも10人に1人」が、人生のどこかで痴漢などの性被害を受けているという現実があります。
※出典:「令和5年度 痴漢被害実態把握調査」(東京都)
さらに彼は、
「一度くらいは痴漢に遭った子もいるだろうけど」とも言いました。
でも、現実はそんな軽い話ではありません。
一度どころか、毎日のように被害に遭っている子が大勢いるんです。
まるで「日常」に溶け込んでしまっているような被害です。
たとえば、痴漢抑止バッジを考案した殿岡たか子さん(当時・高校2年生)が、まさにそうでした。
高校に入学した翌日から、下校時のラッシュの電車で、ほぼ毎日痴漢に遭っていた。
その電車には、朝のラッシュ時間帯にしか女性専用車両はなかったからです。
彼女はすぐにお母さんに相談し、母娘で警察にも鉄道警察にも行きました。
鉄道会社にも下校時の女性専用車両の導入を陳情しました。
でも、どれも彼女の痴漢被害を止める役には立たなかったんです。
勇気を出して加害者を捕まえようと声を上げても、周囲の誰も助けてくれない。
加害者は「俺じゃない。示談金目当てか!」と恫喝して逃げていった。
もう、これ以上は我慢できない。
そう思ったたか子さんは、お母さんにお願いして「痴漢は犯罪です」「私は泣き寝入りしません」と書かれたカードを作り、スクール鞄のストラップにつけて電車に乗りました。
すると、それまでの痴漢が、嘘のようにピタリと止まったのです。
加害者の中には、事前にターゲットを物色し、ネット上で情報交換をして、混雑や死角を利用して犯行に及ぶ人もいます。匿名掲示板では、都内の電車がトラブルで止まると「迂回路の@@線が大混雑。狙い目」といった情報が飛び交うありさまです。
痴漢犯罪は「つい魔が差してやってしまう」ような軽い出来事ではなく、痴漢は“性犯罪”であり、繰り返し行われている計画的な加害行為だということを、社会がはっきりと認識すべきだと思っています。
それなのに、「痴漢って服の上からちょっと触る程度でしょ?」と誤解している人がまだ多い。
このままでは、痴漢に遭う側だけが「我慢し続ける社会」になってしまいます。
でも私は、希望も感じています。
たとえば、「電車内で痴漢かも?」と思った人が、車掌さんに連絡し、車掌さんが110番通報。
次の駅で停車した際にドアを開けず、警察が来て現行犯逮捕」
——そんな対応が行われたという報道も出ています。
また、「痴漢は卑劣で悪質な犯罪であり、絶対に許されない」という認識が、少しずつ社会全体に広まりつつあります。
つまり、「痴漢をしない男性たち」の認識が変わることで、社会は急速に変わっていくんです。
今日、どうしても伝えたいことがひとつあります。
痴漢は、被害者と加害者の間だけの問題ではありません。
私たち社会全体で向き合い、解決していくべき課題です。
最近、こんなXの投稿が痴漢抑止活動センターのアカウント宛てにありました。
「女性がどれだけ痴漢にあおうが、無辜(むこ)——つまり“痴漢行為をしていない”男性には全く関係ない」
けれど私は、痴漢——つまり性暴力を“自分には無関係”と見て見ぬふりすることこそが、加害者に加担する行為だと思っています。
この認識が、ようやく今、少しずつ社会に広がりつつあると感じています。
痴漢行為をしない男性であっても、母親がいる。姉妹や友人、恋人がいる人もいるでしょう。
そのうちの誰かが、過去に、あるいは今まさに被害にあっていたとしたら、「自分には関係ない」なんて、本当に言えるでしょうか。
しょせん他人事としか捉えない人を減らすこと。
それこそが、“痴漢を許さない社会”を実現する鍵なのだと思います。
被害者に「我慢して」「自衛して」と求めるのではなく、加害者に「それは絶対に許されない」と伝える社会に。
私たちの「想像力」と「知ろうとする姿勢」が、その第一歩になるはずです。
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