
エスカレーターですれ違いざまの違和感
その日、私は今里筋線のホームから改札へ向かうエスカレーターを利用していました。
乗っていたのは下り側。すれ違うって上ってくるエスカレーターには女子高校生くらいの女の子が二人並んで立っていて、そのすぐ後ろには、若い男性がいました。
視界の端に、その男性の姿勢が入りました。
少し前かがみになっていて、スマホのレンズを女の子の下半身に向けている――その姿は、明らかに不自然でした。
一瞬で「盗撮だ」と直感しました。
私の心拍は跳ね上がり、足が勝手に動き出していました。
駆け上がる私、逃げる加害者
私は慌てて、下りのエスカレーターを駆け下りました。
そしてすぐに、反対側の上りに乗り直して追いかけました。
でも――。
エスカレーターを昇った先は、すぐに改札口。
加害者と思われる男性はすでに改札を抜け、走って逃げてしまったあとでした。
間に合わなかった。止められなかった。
後悔が、心の奥から湧き上がってきました。
「盗撮されていたよ」――勇気を出して声をかけた
目の前には、地図を見ながら会話している女の子がいました。
「どうしよう」と迷いながらも、私は声をかけました。
「さっき、エスカレーターで後ろにいた人が、スマホを向けていたのを見たんです。たぶん盗撮されていたと思う」
「本当は、その場で止めたかったんですけど、逃げられてしまって…すみません」
「怖がらせてごめんね。駅員さんに通報するのなら、私も証言する」
驚いた表情を見せながらも、彼女たちは「駅員さんに通報はしない」と言いました。
私は、おせっかいかもと思いつつ
「できれば、エスカレーターに乗るときは手すり側に背中を向けるとか、少し横向きになると盗撮を防げることもあるんです」
と伝え彼女達と別れました。
私はそのあと #8103ーー性犯罪の被害に遭われた方が相談しやすいように、各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通の短縮ダイヤル番号で、自分が見た状況をできるだけ詳しく伝えました。
その場での確保はできなかったけれど、「通報する」という行動は取れました。
とっさには動けない。だからこそ、想像しておく
あのとき、「盗撮!」と声をあげていれば。
スマホで逃げる犯人の後ろ姿を撮っておけば――。
そう思うたびに、胸がざわつきます。
でも、これが現実です。人は、経験していない場面では、とっさにうまく動けません。
だからこそ、事前に想像しておくことが大切なんだと改めて思いました。
- 駅のエスカレーターで、盗撮のような動きを見かけたらどうする?
- 電車の中で、誰かの体が触れられているように見えたら?
- 「あれ、おかしいな」と思ったら、自分に何ができる?
答えは一つではありません。
でも、自分なりの「動き方」をイメージしておくだけでも、心の準備になります。
小さな行動が、被害を止める
最近、Xでこんな投稿を見かけました。
駅のエスカレーターでミニスカJKの後ろに立ってた男が急に靴紐結びだしてスカートの中見ようとチラチラしてたから、わざとガンって足音たてて威嚇したことある。
すぐ止めてエスカレーター降りた後猛ダッシュしてたから確信犯だったと思う。
出展:https://x.com/mr8c_h/status/19...
これを読んで、私はなるほど! と思いました。私もあのとき同じようにすればよかった。
- 足音をわざと大きくたてる
- 咳払いをする
- 目を合わせる
- 「見てるよ」という存在感を出す
こうした小さな行動は、加害者に「バレている」と思わせるだけで、犯罪の抑止になります。
「アクティブ・バイスタンダー」って知っていますか?
アクティブ・バイスタンダーという言葉があります。
傍観者で終わらず、被害や加害を目撃したときに、自分にできる範囲で動く人のことです。
すべての人が犯人を取り押さえなくていいんです。
でも、見て見ぬふりもしない。
「何か変だな」と思ったとき、小さな一歩を踏み出せる人が多ければ、社会は変っていくのだと思います。
あなたなら、どうする?
この文章をここまで読んでくださったあなたに、最後に問いかけたいことがあります。
もし、あなたがあの場にいたら、どうしますか?
きっと、誰だって「怖い」「関わりたくない」と思う瞬間はある。
でも、そんな中でも、自分にできる小さな行動を選べたら――。
それだけで、誰かの未来が守られるかもしれません。
私の失敗談が、誰かの「次の一歩」につながりますように。
