
独立の影響を受けた教育体制
東ティモールはかつて約400年にわたってポルトガルの植民地だった後、1975年から2002年までインドネシアの占領下にありました。インドネシア時代には教育機関の整備が進み、多くの教員や医療者がインドネシアから派遣されていました。
しかし、独立と同時にインドネシア人が一斉に引き上げ、多くの学校や医療機関が人材不足に直面。独立当時、東ティモール人の医師はわずか4人、教員も深刻に不足していたとされています。そのため、政府は中学・高校卒業レベルの人材に研修を施し、緊急的に教員として登用しました。

教員養成と大学教育の現状
現在では、東ティモール国立大学および私立大学3校に教育学部が設置され、教員養成が行われています。国立大学では、初等教育、中等教育、就学前教育の各コースがあり、中等教育では物理、体育などの専門に分かれています。
ただし、現職教員の中で大学学位を持つ人は約4割程度にとどまります。また、教育学部には保健科目が含まれておらず、保健教育に関する専門的な知識やスキルを学ぶ機会がありません。
東ティモールの学校制度と言語の壁
教育制度は日本と似た6・3・3制ですが、小中学校を合わせて「基礎教育」とし、学年を3つの「サイクル」に分けています。
* 第1サイクル:1~4年生
* 第2サイクル:5~6年生
* 第3サイクル:7~9年生

初等教育では担任制で1人の教員が全教科を教え、中等教育から教科担当制になります。一方で、教育の使用言語には課題があります。公用語はテトゥン語とポルトガル語ですが、学校教育ではポルトガル語が推奨されています。
しかし多くの教員は、インドネシア語で教育を受けた世代。ポルトガル語で授業を行うことに困難を抱えています。これに対応するため、政府は集中講義や学び直しの機会を提供していますが、保健教育など一部の分野では十分な支援が届いていません。
教室不足、半日授業、老朽化施設
物理的な課題も大きな問題です。教員や教室の数が足りず、多くの学校が午前・午後の二部制で運営されています。生徒は一日中学校に通うのではなく、半日だけの授業です。
さらに、トイレや給水設備、机・椅子などのインフラも不足。トイレがない、壊れて使えないといった学校では、子どもたちが近隣の家にトイレを借りに行くという事態も起きています。

保健教育の位置づけと課題
教育省(日本の文部科学省に相当)は、小中学校に保健科目を位置づけていますが、実際には多くの教員が保健を「教えられない」状況です。自分自身が子どもの頃に保健の授業を受けていなかった教員が多く、カリキュラムに保健があってもスキップされてしまうことがしばしばあります。
東ティモールでは、制度は整いつつありますが、人的資源や物的資源、言語の壁など、教育を「届ける力」がまだまだ不十分です。特に保健教育のような、子どもたちの健康や命に直結する分野への支援は、今後の重要課題です。

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