なぜ医療体験学習が必要なのか
「学業成績だけで医師を目指すのではなく、世の中に貢献したいと志す若者にこそ医療の担い手になってもらいたい」──
私たちのNPO法人役員には医大で教育に携わる医師が複数いますが、「学校の成績が優秀なだけでは医師は務まらない」という認識を共有しています。背景には「医療に携わる心構えがないまま医学部に入学してしまう」という問題があります。あるドクターは医学生の教育にたいへん苦労することがあると明かし、こう指摘します。
「医学部受験の難易度が著しく上がり、教科書的な知識を吸収することに長けた若者が入学してくるようになりました。中には、医療系ドラマなどで活躍する華やかな医師像に憧れる者もいる。そうした学生の中には、現実の臨床現場とのギャップが受け入れられなかったり、チーム医療に溶け込めなかったりして苦しむ者がいます。自分の将来像をイメージできない学生の教育をいかに達成するかは喫緊の課題となっています」
だからこそ、医学部を受験する前にリアルな現場を体験してほしいのです。
少子化で未来の担い手が減りゆくなか、医療分野でも今後多くの仕事がAIや医療ロボティクスに置き換わると言われています。そんな時代だからこそ、PCやロボットでは代替できない「心」を持つ医療人が求められると私たちは考えます。
「志の灯」をともすために
このページに辿り着いてくれて、ありがとうございます。NPO法人Touch the Future理事長・土井 毅です。
私は新聞社勤務時代に社会貢献事業の一環として、高校生が医療現場に密着する企画を立ち上げました。そして多くの生徒が医師や患者さんとの交流を通して「人を助けたい」という強い気持ちを抱く過程を間近に取材してきました。
しかし2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大によって企画は中止となってしまいました。当時の社会情勢からすれば、やむを得ない対応でした。オンライン講義に活路を求めましたが、「リアルな体験こそ重要」という考えが変わることはなく、「このままで良いのだろうか？」という疑問は膨らんでいきました。2022年、同じ考えをもつ医師らの支援を得て、良質な医療体験を広く提供するためのNPO法人Touch the Futureを設立しました。そして、コロナ第7波の真っただ中、2つの病院が生徒たちを受け入れてくれたのです。
初年度の2022年夏は、高校生5人がコロナ禍の病院で1週間を過ごしました。
生徒たちは手術見学から看取りまで多くの体験をする中で、医療が人の生死に関わる仕事であることを身をもって実感し、「ボランティアの精神がないと務まらない」と葛藤しました。ある生徒は高齢の患者さんを担当してコミュニケーションの大切さを学び、日本の社会問題にも気づきました。同じ志をもつ仲間たちと悩みを共有し語り合ううちに、生徒たちそれぞれが「今の自分に何ができるのか」「医師になったら何を解決したいのか」を一生懸命に考え、将来を探りはじめたのです。こうした主体的な発見と学びを私たちは大切にします。
経験から得た学びや悩みこそ、その後の過酷な勉学を支えるモチベーションとなります。たとえ彼らが医療の道に進まなかったとしても、「他人を思う気持ち」は形を変えて社会に還元されるでしょう。
高校生を受け入れる病院が少しずつ増え、有志の医学生もサポートに向けて動きはじめています。温かい心と強い気持ちを持つ未来の担い手を育むため、皆さまからのご支援をお待ちしています。
ご支援の使い道
Touch the Futureは皆さまのご支援で運営しています。2023年夏からは生徒を受け入れる連携病院を増やし、活動を拡大します。裾野を広げるためのオンライン・ミーティングも行います。
こうした活動を支えるのは早朝から深夜まで生徒に伴走する医師や病院職員、メンター役を務める医学生、NPO法人のスタッフです。皆さまからのご寄付は、活動を支援してくださる医療従事者への薄謝、学生やスタッフの旅費交通費などの活動運営費として大切に使わせていただきます。
生徒たちの進学事情・経済事情はさまざまです。医療の道を志す意欲的な若者を見落とすことがないよう、真摯な活動を心がけます。
未来の医療人の「志」を育むため、温かいご支援をお待ちしております。
