日頃よりYMCAの諸活動にご理解とご協力をいいただき、心よりお礼申し上げます。
さて、皆様ご承知の通り、新型コロナウィルスへの感染が世界的に急拡大し、ここにきて日本も再び厳しい状況に晒されてきました。その影響は経済活動や社会生活の随所に及んでいますが、我が国のYMCA運動も極めて深刻な事態に直面しております。そんななか、YMCAせとうちは3月14日に創立68周年を迎え、一貫して、こどもや若者たちのご家庭に寄り添いながら、皆様の成長を応援し続けてきました。ところが今、コロナウィルスの感染拡大の影響で運営が苦境に立たされています。キャンプ、スポーツ教室、英語教室、森のようちえん、アフタースクールなど、私共が行っている事業活動はいずれも多くの方に集っていただき、つながっていただくことで、その成長を促すものです。しかし今暫くの間、人がリアルに集まることは抑制しなければなりません。100年の長きにわたって続けてきた組織キャンプの実施の有無もままならない今、財政的には計り知れない打撃を受けています。
そこで、公益社団法人YMCAせとうちの総意として、ここにYMCAファンの皆様、さまざまな支援や応援を頂いている国(所管官庁)、地方公共団体、企業・団体、個人のすべての皆様に向けて、組織としての支援依頼メッセージをお伝えさせていただきたいと存じます。
まずは、新型コロナウィルスへの感染防止の趣旨から各種活動中止が相次いでしまったことについて、ファンの皆様にお詫び申し上げます。感染防止への取組みは社会全体が一致して注力すべき優先課題であり、この認識の下、苦渋の決断ではありますが、多数のYMCAが予定していた活動を中止ないし延期し、あるいはオンラインでの配信という形態を採っています。国や地方公共団体からの大規模イベント自粛の要請を受けたものでもありますが、活動を楽しみにして下さっていたファンの皆様の期待にお応えできない結果となり、大変申し訳なく存じております。
活動の中止・延期は、ファンの皆様の落胆だけでなく、主催YMCAの側にも甚大な影響を及ぼします。わたしたちYMCAの運営は、多くの方々にご支援を頂いて行われていますが、基本的には活動を行なうことによって得られる参加費収入によって支えられており、職員への報酬、会場の設営、事前の準備なども、大部分が参加費収入によって賄われています。活動の中止が続くことは、YMCA活動を支える柱である収益が断たれることを意味し、活動の継続、ひいてはYMCAとしての存続そのものが危機に晒されることになります。YMCAの多くは公益財団法人またはNPO法人であるため、収入と支出を均衡させなければならない「収支相償の原則」で運営されており、利益を蓄えておくことができません。財政基盤が失われれば解散を余儀なくされる可能性も否定しきれません。
YMCAのみならず個々の職員も危機に直面しています。職員の多くはYMCAとの雇用契約の下で活動に従事していますが、相当数の働き人が非常勤として参加しています。非常勤の職員は活動機会が失われれば直ちに収入を失う事態となりますし、雇用契約の場合でも所属YMCAの存続が危うくなれば仕事を失うリスクに直面します。YMCA職員は、長年にわたる高度の専門的な教育と修練を経て才能を花開かせ、日頃の研鑽に努めながら良質の活動を提供しています。このような職員の皆さんが、生活基盤を失いYMCAから退いてしまうとしたら、社会全体の体験活動の基盤が失われることにつながりかねず、計り知れない社会的損失となるでしょう。
今回の感染症危機の深刻さのひとつは、それがいつ終息するかの目安を持ちにくいことです。「明けない夜はない」とは、窮地での励ましとなる言葉ですが、夜が明けたときにYMCAやその職員が存続していないようなことになっては元も子もありません。明けた朝が直ちに快晴となることを期待するのは難しいかもしれませんが、曇り空や雨空の下であっても、体験活動が速やかに再開され、YMCAファンの皆様とともに従前の活力を取り戻す確かな歩みが進められることが肝要です。終息の目安が持てないことは、新型ウィルスとの戦いが長期戦になる可能性にも備えなければならないことを意味します。有効なワクチンや治療薬が開発されつつあることも喜ばしいことですが、相次ぐ変異株の登場による心へのダメージは計りしれません。一定程度の感染者が存在するという現実を踏まえながらも、最善の予防策を講じるなどしつつ何らかの形で活動とその現実とを共存させる道を探ることも、今後考えるべき現実的な対応かもしれません。
体験活動は、我々の心を潤し暮らしを豊かにするという意味で、やはり無くてはならない存在です。良質の本物体験活動は、われわれの停滞した気持ちを目覚めさせ、喜ばしい機会には楽しさを増幅し、不安に揺らぐ心を静め、悲しみに沈む魂に癒しをもたらしてくれます。
とりわけ活動の醍醐味は本物に触れるということにあると思います。同じ空間にあって、職員とメンバーが豊かな響きの中で一体化し、感動を共有できるのは素晴らしいことです。
体験は人の心に直接働きかけます。順境にあっても逆境にあっても、変わることのない恵みをもたらしてくれるのがそのような経験だと思います。世の中の雰囲気が委縮しているときにも、そこに潤いをもたらすことができるのではないでしょうか。その価値は、逆境でこそ強く感じられるものかもしれません。
このような状況下、各YMCAは最大限の自助努力を行っておりますが、このかつて経験したことのない危機的状況のもとでは、自助努力だけでは解決できない程度にまで問題が深刻化しつつあることも事実です。YMCAと職員がこの危機を乗り越えて存続していくことができますよう、これまでご支援いただいてきた企業・団体の皆様には、厳しい状況の下とは存じますが、引き続きのご支援をお願い申し上げますとともに、幅広い個人の皆様からのご支援など、YMCAの存続と活動の継続に向け、従前にも増して強力なご支援を賜りますよう切にお願い申し上げる次第です。
制度面でも緊要な課題があります。現行の公益法人制度では、各法人に収支相償が義務づけられ、緊急時に備えた内部留保を持ち得ないという実情にあります。また、2年連続で純資産が300万円未満となった場合には公益財団法人としての資格を喪失する、というルールも存在しています。今般の危機を契機に、これらの枠組みについてはその見直しを真剣に検討すべきですし、少なくとも緊急時における一定期間、その適用を猶予する手当てを是非とも早期に実現していただきたいと考えます。
イベントの催行についても、今後の長期戦に備え、地域ごとの状況や個々のイベントの性格なども加味した、きめ細かいガイドラインの策定が必要に思います。一律の全面的自粛ではなく、例えば、感染者が減り完治者が増えている地域では、PCR検査や抗原検査の実施を基礎とし、個別にイベントを催行する判断もありうるところかと思います。
しかしながら、私たちは落胆していません。というのは、このコロナ感染拡大という「黒船襲来」を通して、今までできなかったさまざまな課題が驚くべき速さで解決できているからです。とりわけ、オンライン上でのつながりの伸張スピードはすさまじく、そこにさまざまな可能性が見えてきたからです。会いたくても会えなかった人、つながりたかったけれど、繋がれなかった組織、変化できなかったけれど、大きく変わるチャンス。そのようなものがたくさん見えてきました。現在、インターネットを介した新しい活動の開発などを行っています。そこには、新たな希望の光が確かに宿っています。
70年近いYMCAせとうちの歩みは決して平たんなものではありませんでしたが、今回の事態は創設以来最大の危機と言っても過言ではありません。しかしながら私たちの活動はいつの時代も危機の中にある希望に導かれて、その困難を乗り越えてきました。今回も同じこと。YMCAは立ち止まらず、「みつかる。つながる。よくなる。」を新しい形で提供し、ポジティブネットのある豊かな世界の実現のため、全力を尽くします。
そのためにも、この状況を何としても乗り越えるため、「寄付金の拡大」へのチャレンジが急務となっています。公益財団法人格を有する団体ですので、寄付控除制度も整っています。みなさんも困難な中とは存じますが、ぜひ、YMCAせとうちにご寄付をいただくという形で、わたしたちの活動のサポーターとなっていただけませんか。ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
私たちは YMCA 運動の灯火をこれからも絶やさず掲げ続ける使命を荷っていると想っています。 今厳しい状況だからこそ募金を集めています。具体的には各種活動の運営費、スタッフの人件費、ユースリーダーの交通費・研修費等に使わせていただきます。どうぞ、ご協力のほど、よろしくお願いします。