
Dove KK Medical Crew発足の経緯
今回JCBLが支援を決めた現地NGO(DKK)はどんな組織なのかを紹介します。
DKKは、市民的不服従運動(CDM)に参加している医療従事者や教員、観光や飲食業の若者、学生たちで構成されています。
現在のスタッフ数は35名。うち医療従事者は4人の医学生も含めて13名います。
主な活動地はタイ国境に近いカヤー州とシャン州南部の山間地です。
DKKの創設メンバーの一人であるNさんは現在26歳。コロナ前はインレイ湖のほとりにある五つ星ホテル、インレイ・プリンセス・リゾートで働く料理人でした。
コロナ感染予防対策の一環でホテルが閉鎖され、仕事を失った彼は、他の観光業の仲間たちとユースボランティアセンターを開設して、コロナ感染で生活が困窮した人々への食糧支援などをしていました。
そして迎えた2020年11月の選挙では、コロナ後の社会に大きな希望をもって一票を投じたそうです。
しかし、翌年2月に起きた軍部によるクーデターは、政治を停滞させ、前政権と市民が一丸となって取り組んで来たコロナ対策に壊滅的なダメージを与えました。その結果、著しく減少した検査、ワクチン供給の停滞、軍に抗議する人々の受診差別などによって、医療機関は混乱し、大幅な感染拡大をもたらしました。
コロナ後の社会再生に希望をもってボランティアセンターで活動していたNさんたちの未来は打ち砕かれ、絶望感に苛まれる中、多くの医療従事者たちとともに、Nさんたちも市民的不服従運動(CDM)に参加し、軍政の支配に抗議の意思を表明しました。
クーデターから数か月、雨期に入り、故郷のカヤー州の山間地の避難民村でデング熱が流行りだしたことを聞いたNさんは、仲間たちと協力して3台のトラックをチャーターして、長い時間をかけて、医薬品や食料を届けました。
その時、Nさんたちは、避難民村には国軍との戦闘に巻き込まれて傷ついた人々や地雷を踏んで足を失った人々が大勢いることを知り、CDMの医療従事者たちに協力を求めました。
Nさんたちの求めに応じてくれた4名の医師、医学生、看護師たちが仲間に加わり、同地域での医療サービスを含めた生活支援が始まりました。
これが、DKK Medical Crewの始まりです。
現在は、同地域の山間地に設置した仮設病院の運営と、約150カ所の避難民村の訪問診療や物資支援を行っています。
また、避難民村に疎開している子どもたちが教育を受ける機会を失うことがないよう、CDMに参加している教員たちが臨時の学校を設営し、授業を行っています。
これから数回に分けて、現在の活動について一つずつ紹介していきたいと思います。
(文・清水俊弘 JCBL代表理事)