
ミャンマー国軍のクーデターをいち早く支持したのはロシアでした。
ロシアは、東南アジアにおける米国と中国の勢力争いに割って入るように、ミャンマー国軍への軍事支援を強化しています。
国軍は、自らの支配に抵抗する民族組織や抗議デモを決行する若者たちに容赦なく銃を向けます。特に民族単位の自治勢力の強い地方山間地において、地の利で劣る国軍は、陸上での活動を避け、空中からの爆撃を多用しています。空爆はロシアからの軍事支援を受けますます激しくなっているといいます。
国軍による空爆は、住宅地や教会、田畑などにも投下され、一般市民の多くが山間地への避難を余儀なくされています。

市街地から避難する人々
しかし、多くの避難民が身を寄せている山間部には病院はありません。そのため、爆弾の破片で大怪我をした人、もともと持病を抱えている人々など多くの人々が必要な手当てを受けられず、最悪の場合命を失うケースもあります。
DKKは、そのような人々に対して必要な医療支援を実施するために、市民的不服従運動(CDM)に参加している医師や看護師、助産師などの医療従事者と協力して、山間地に2カ所の仮設病院と、避難民村への移動診療を行っています。


画像左:仮設病院の設営
画像右:外で受診の順番を待つ人々
仮設病院は当初、カヤー州に1カ所とシャン州南部に2カ所の合計3カ所に設営されていましたが、シャン州南部にあった病院の一つは国軍の空爆で破壊されました。
その際、医療従事者の間でも人道的名医として信頼されていたアウン・ジー医師が爆弾の破片を頭に受けて亡くなったそうです。
残った医師たちはこの悲劇を乗り越えて、今も片道3時間の道のりを歩いて山間地の避難民村への診療を続けています。そして診療日には、怪我の手当てをする人々、体調不良を訴える人々などが集まってきます。


画像左:険しい山道を登る女性医師たち
画像右:診療の様子

また、訪問日数が限られているため、住民たちに健康管理に関するレクチャーや、救急法のトレーニングなども実施しています。
(文・清水俊弘 JCBL代表理事)