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今回は、レバノンの経済危機とシリア難民についてご紹介させていただきます。
ニュースなどでお聞きになりご存じの方も多いかと思われますが、レバノンは現在、経済危機に陥っています。経済危機は2019年頃から始まり、2020年の3月には国家財政が破綻し、国の借金を返すことができない状態に陥りました。市民の生活は急激に困窮し、現在ではレバノン人口の約7割が支援を必要としています。2019年からの4年間でレバノンポンドの価値は60分の1になり、物資のほとんどを輸入に頼るレバノンでは燃料価格は60倍以上に、生存に最低限必要な食品を購入するための価格は47倍に跳ね上がるなど、非常に厳しい状況です。例えるなら、4年前には100円で買えたものが、今は6,000円になり、4年前と同じ食費では満足のいく食生活は送れないということです。非常に困窮した生活であることがお分かりいただけると思います。
レバノンは、人口約600万人のうち1/4の150万人がシリア難民と、大勢のシリア難民が生活しています。近年、シリア難民を「自発的」に退去させようとするレバノン政府の政策も行われています。しかし、多くのシリア難民はシリアに帰還したくても、10年以上続く内戦により公共インフラや自宅が破壊されていたり、住み慣れた町が大きく変わっていたり、仕事を失っていたり、さらには迫害の恐れがあったりといった理由で帰還することができません。
レバノンで生活するシリア難民の子どもたちの就学率は、6割程度と低いです。保護者が授業料や交通費を支払うことができない、あるいは家事や仕事の手伝いをしなければならないという背景があります。しかし、保護者は子どもたちの将来の希望を教育に託しており、本当は学校に通わせたいのです。
私たちが教育支援を行っているアルサール市はシリア国境に近く、シリア難民が多く住んでいます。しかし、同市は大きな産業がなく、レバノンで最も貧しい地域の一つであるうえに、首都のベイルートからも遠いので、支援が届きにくい地域となっています。さらに、この地域は標高が高く、冬には雪が降ったり、気温が氷点下に下がったりするほど寒さの厳しい地域です。
私たちが教育支援を行っているアルイマン校ではレバノン人とシリア難民の子どもたちが学んでいます。冬の教室はとても寒く、子どもたちは上着を着こみ、帽子や手袋をしたまま授業を受けますが、それでも耐え切れずに席を立ってしまう子どもも多くいます。そもそも充分な防寒着を持っていない子どももいます。経済危機の中にあって、学校の運営も非常に苦しく、暖房代を捻出することができません。暖房用の灯油が購入できなければ、寒さの厳しい間は休校にせざるを得なくなります。子どもたちにとって学校は学びの場であると同時に、苦しい生活をつかの間忘れ、友達や先生と過ごせる楽しい場でもあるのです。冬の間も学校に行きたい、学びたい、子どもたちのそんなささやかな、でも切実な願いを叶えるために私たちは灯油を届けたいのです。
皆様の応援でアルサールの子どもたちが冬の間も勉強を続けることができます!ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします!