「子どもが高熱で、死ぬかもしれないの。」
AfriMedicoの代表理事が青年海外協力隊としてニジェールで活動をしていた時、
ある村のお母さんが、子どもを抱えて来てこう言いました。
「子どもが高熱で死ぬかもしれないの。 病院に行くので、200円ちょうだい。
日本人は、お金持ちでしょ?」
皆さんならどうしますか?
私はあげませんでした。
次に村に行くと、 その子どもは亡くなっていました。
このことがずっと私の中で引っ掛かっています。 お金を渡しておけば助かったのでしょうか?
それは本当の解決方法なのでしょうか?現時点で言えることは、こういった事象は国際協力の現場に山積する課題の一部に過ぎないということです。
一時的なサポートはもちろん重要ですが、これら様々なアフリカ現地の医療課題を解決し、
継続して回せる仕組みを作らないといけない、と思うようになったことがAfriMedicoの活動の原点です。
アフリカでは医療資源そのものが不足しており、日本の私たちが当たり前のように受けている皆保険制度も存在しません。 インフラの不整備等により病院や薬局までのアクセスが悪く、病院に行くことができても受診までの待ち時間が長い、 診察しても、病院に薬がない、私立などは受診料が高いといった問題があります。 その結果、病気にかかっても容易に医療サービスを受けられず、その間に病気が重症化して、死に至ることも珍しい事ではありません。
日本発祥の「置き薬」をアフリカに導入へ
私たちはこの課題を解決するために、「富山の置き薬」(配置薬)の仕組みにヒントを得ました。江戸時代から約300年間、日本の健康を守り続けてきた置き薬の仕組みを、現代版・アフリカ版の「置き薬」として、広めていきたいと考えています。
置き薬とは?
置き薬とは、いざという時にすぐ使えるよう、さまざまな薬を詰め合わせた「薬の箱」です。各家庭にこの箱を置いておくことで、体調を崩した時など、すぐ必要な薬を使うことができます。
AfriMedicoでは、風邪薬や鎮痛剤など、薬局で購入できる一般用医薬品を中心に薬を入れています。定期的にスタッフが訪問し、使用された薬の補充を行っています。
置き薬の大きな特徴のひとつが、「先用後利(せんようこうり)」という考え方です。これは、薬を“先に使い”、代金は“後から支払う”という仕組みです。これにより、その場ではお金がなくてもすぐに薬を使うことができ、子どもの高熱や家族の急な体調不良などにも対応可能です。
また、AfriMedicoでは置き薬を渡す際などに、薬の正しい使用方法や保管方法に加え、疾病の予防方法などを伝える医療教育を実施しています。これらの活動は現地の薬剤師のスタッフが中心となって進めています。


実際の置き薬
置き薬の使用方法の説明
何故、アフリカで置き薬を?
タンザニアで置き薬を設置する前に、置き薬が機能した当時の環境の特徴を富山県で調べました。
結果、未整備のインフラ、大家族、皆保険制度が無かったこと、これら3点が置き薬の普及した大きな要因だったことがわかりました。これは、今のアフリカの状況にそっくりなのです。
未整備のインフラ
AfriMedicoが活動している農村部の地域(Bwama、Mlegele、Chan'gombe村)では、最寄りの医療機関に行き、薬をもらうまでに数時間かかることも珍しくありません。また、病院や薬局に行っても在庫がなく、薬を入手できないことがあります。
1世帯当たりの人数が多い
アフリカの農村部では、ひとつの家庭に5〜10人もの家族が一緒に暮らしています。
一箱の置き薬を設置するだけで、その家族全員が、風邪をひいた時や頭痛に悩む時など、すぐに薬を使えるようになります。
皆保険制度がない
タンザニアでは国民皆保険制度がないことにより、所得の中で医療費が占める割合が高くなっています。また、農業を主な収入源とする農村では、季節による収入変動があり、時期によっては世帯の収入で医療費を捻出できない状況となっています。
置き薬は、間違いなくアフリカでも受け入れられる。私たちが確信している理由がこの環境にあるのです。


Bwama村の道
置き薬の設置した世帯
アフリカ版「置き薬」が描く未来とは――。
日本の健康を支えてきた「置き薬」は、古くは掛場帳といわれる帳簿で管理がされており、各家庭や村のデータベースとしての役割も担ってきました。 私たちは、ここで得られたデータを活用し、病気の重症化予防や医療費削減効果などについて様々な検証を実施していきたいと考えています。
その結果として、この置き薬を、「すべての人が、適切な保健・医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる」というUHC(ユニバーサルヘルスカバレッジ)を実現する保健システムの1つに位置付けることを目指しています。
それによって、AfriMedicoは、2030年までの目標を定めた持続可能な開発目標(SDGs)で宣言された「誰一人取り残さない」という原則の実現へ貢献していきます。
ご支援の使い道
AfriMedicoの活動は、皆さまからのご支援で成り立っています。AfriMedicoは、理事を含め所属する日本メンバーが本業をもちながら活動していますので、皆さまからいただいたご支援は、全て事業活動(置き薬ボックス準備費(薬剤購入含む)、村までの交通費、医療教育関連費、タンザニア側のスタッフ人件費、家賃など)に活用させていただきます。例えば、月々500円の寄付を1年間継続いただけると、置き薬セット4箱を村へ届けることができます。あなたの温かいお気持ちが、寄付という形で遠く離れた村に小さな安心、そして健康と笑顔を届けます。ともに歩んでいただけたら嬉しいです。
理事の紹介

薬剤師。青年海外協力隊としてアフリカのニジェール共和国で、2年間、感染症対策のボランティア活動に従事。ニジェールでの経験から、どうすればアフリカの医療をさらに改善できるか考え続け、グロービス経営大学院へ進学。「違いがあるからこそ共に学ぶものがある。アフリカと日本の両方を良くしたい」という想いから、AfriMedico設立に至る。


外資系製薬企業勤務。大学院在学中に実践での国際保健を求めAfriMedicoに参画。専攻していたヘルスプロモーションを生かすべく医療教育・研究に尽力。20代半ばという最年少の力で団体を動かす。


誰かの日常を支えたいという想いから、日常に溶け込む置き薬に魅力を感じ、AfriMedicoに参加。
長年の財務の経験を活かし電卓片手に団体のお財布を預かる傍ら、プロボの活動の魅力発信にも力を入れる。
長所は寝たらすべて忘れること。好きな言葉は「まぁいっか。」

現地メンバー:Geofreyの紹介

Geofrey YambaYamba
北・西アフリカを中心にビジネスを展開しているフランス最大の商社、CFAOにて薬剤師として勤務する傍ら、タンザニア薬学会で幹事(Executive Secretary at Pharmaceutical Society of Tanzania)を務めるなど、タンザニア医療の今後を担う若手リーダーの一人。
ST.JOHN‘S UNIVERSITY OF TANZANIA卒業、
薬剤師
Q. AfriMedico(アフリメディコ)と出会ったきっかけを教えてください。
以前、私はアメリカに留学して短期間の実地研修を受けていました。そんなある日、以前からの親しい友人である小林大翼さん(*)から電話がかかってきました。そして、提案されたのです。ある日本の女性がアフリカに薬を届けるプロジェクトを始めている。このプロジェクトをタンザニアでサポートしてみないか、と。
*小林大翼(ダイスケ)さん:一般社団法人日本薬学生連盟元会長。International Pharmaceutical Students' Federation (IPSF)を通じてGeofreyと交流
Q. すごい突然の話だったのですね。初めて聞かれた時、どのように思ったのですか?
すごい面白い、これが率直な感想でした。そして、私は直ぐに、この置き薬の有用性について理解できました。というのは以前から、医療アクセスの悪い遠隔地について、早急な改善が必要である事を認識していたためです。ただ、インフラ整備を待つしかないのかな、そう思ってたのです。 しかし、この置き薬システムは、その課題を乗り越えられる。医療アクセスが困難な遠隔地に住む人々にも、都会と同等の品質の薬を、同等の利便性で提供することを可能にするはずだ、そう確信したんですよ。
Q. その確信が、AfriMedico への協力に繋がったのですね?
そうです。私は直ぐに行動を始めました。タンザニアの中心都市ダルエスサラームに程近いKisalawe地区にあるブワマ村をプロジェクトのパイロット先として選定しました。その村の村長は私と同年代の友人なのですが、常に村の課題に真剣に向き合っていて必ず協力してくれる、そう思ったからなんです。もちろん彼からは直ぐに良い返事が返って来ました。しかし私1人ではやれる事が限られます。そこで私はインターンとして病院で勤務している薬学生などを巻き込み、薬剤師である私を中心としたローカルチームを立ち上げたのです。
Q. チーム・ジェフェリーが、そこで結成されたのですね。
はい(笑) このチームのポイントは、大学生が中心になっているという事です。それは若い専門家達にクリエイティブで革新的な機会を提供することがタンザニア全体、そしてアフリカ全体のヘルスケアシステムを向上させる事に繋がると考えたからです。実際私達のチームは、地方自治体や各村の人々と強固な信頼関係を結び、置き薬プロジェクトの立ち上げに貢献した、そう自負しています。
Q. Thank you! 私達もそう思ってます‼︎ 最後に今後の抱負を聞かせてください。
私はこれからも、チーム・ジェフェリーを率い、タンザニアのヘルスケアシステム関連の関係各所が、このプロジェクトを理解できるように尽力し彼らと上手く連携を取っていきたいと考えています。そして代表理事や日本チームと協働し、AfriMeidcoが目指すミッションを達成させたい、そう強く思っています。

