ブレヒトの「アルトゥロ・ウイの興隆」について
20世紀を代表するドイツ演劇の巨匠ベルトルト・ブレヒト(1898-1956)。日本ではクルト・ヴァイルの音楽で知られる「三文オペラ」が特に有名ですが、2つの世界大戦の時代を生きたブレヒトは、政治への関心とあいまって、演者への感情移入を求めるのではなく、舞台を「出来事」として客観的・批判的に見せる「叙事的演劇」や、演劇に奇異な要素を差し込む「差異効果」などの演劇手法を生み出し、今日の演劇界に多大な影響を与えています。マルクス主義の影響を受けていたブレヒトは、ナチスの標的となり、亡命生活を余儀なくされますが、たどりついたアメリカで書いた戯曲のひとつが、この「アルトゥロ・ウイの興隆」でした。
アルトゥロ・ウイとは、シカゴを拠点とする冴えないギャングのボスのこと。舞台は不況の風が吹き荒れるシカゴ。野菜の卸売りを独占するカリフラワー・トラストの実業家たちが、市からの貸付を巡り市長ドグズバローを買収したことを知ったアルトゥロ・ウイは、ドグズバローを脅迫。その一方で、買収事件の揉み消しと警察・司法からの保護を持ち掛け、それと引き換えに、シカゴの政治、経済の内部に深く入り込んでいきます。さらにウイは、シェイクスピア俳優に教えを請い政治家としての振る舞いや話し方を身につけていきます。部下のローマ、ジヴォラ、ジーリらと共に、陰謀や暴力を駆使して見事シカゴを手中に収めたウイ。彼は次第に自らの勢力を、彼を糾弾する新聞社の株主ダルフィートが牛耳る隣町シセロへと拡大していきます。
ここで描かれたストーリーは、ナチスが台頭していく際に実際に起きた出来事と重なっており、主人公のアルトゥロ・ウイは、ヒトラーがモデルです。また他の登場人物も実在の人物がモデルとなっており、陰謀、脅迫、暴力、プロパガンダを駆使して次第に権力にのぼりつめていくという、この時代の暗い側面が作品に影を落としています。
今回のブレヒトの原作「アルトゥロ・ウイの興隆」は、ブレヒト研究の第一人者として知られる故市川明氏(大阪大学名誉教授)の翻訳によるもの。2024年1月に急逝した同氏は、今回の公演をとても楽しみにしていらっしゃいました。
私たちは今、ウソと真実の区別がつかない時代を生きながら、他者への醜い差別と排斥を目の当たりにし、暴力と武力で問題を解決しようとする戦争の前になすすべがありません。ブレヒトがこの作品を通して伝えたかったことが、今再び、とても大きな意味を持ち始めているように思えてなりません。この「アルトゥロ・ウイの興隆」を通して、今一度、私たちの時代を見つめ直すきっかけになれば幸いです。
公演「アルトゥロ・ウイの興隆」概要
公演名:大阪劇団協議会プロデュース公演「アルトゥロ・ウイの興隆」
■主催:大阪劇団協議会
■企画制作:劇団往来/共催:公益財団法人吹田市文化財団
公演詳細
2025年2月20日(木) 19時開演(18:30 開場)
2025年2月21日(金) 19時開演(18:30開場)
2025年2月22日(土) 14時開演(13:30 開場)
2025年2月23日(日) 14時開演(13:30 開場)
■会場:吹田メイシアター中ホール
■料金:一般3,500円/学生2,500円(要学生証提示)/障がい者2,500円(要障害手帳提示)/当日4,000円 ※配信予定あり(詳細後日)
■新たな取り組み
今回の公演に際し11月17日ー18日と2日間にわたり、大々的にオーディションを開催しました。関西の演劇界に新風をおこしてくれそうな若手から、深い演技を求める事の出来る熟年の方まで、幅広い俳優たちとの出会いがありました。彼らの競演にもぜひご注目ください!!!
大阪劇団協議会とは
大阪劇団協議会(旧大阪新劇団協議会)は、1971年に大阪府下に活動拠点をもつ劇団13団体が集まって結成されました。各劇団の連絡や協調および親睦をはかり、また各劇団の活動を高揚させることを目指し、ひいては、日本の演劇界および京阪神地方における新劇活動の健全な発展普及に貢献することを目的に活動しています。
1973年からは、毎年「劇フェス(旧:大阪新劇フェスティバル)」を開催。2024年で52回を迎えました。
大阪劇団協議会の3つのミッション
1、加盟団体の連絡協調と親睦向上を図ること
2、加盟団体の活動を高揚させ、京阪神地方に於ける演劇活動の発展普及に資すること
3、関西、大阪に於ける文化活動の窓口としての社会的責任を自負し、その責務を果たして行くこと
設立当初に掲げたこれらのミッションは50周年を迎えた今も変わりません。
継続実践することは、現代の「問題」「課題」に向き合い、「気づき」と「発見」につながると信じます。団体として協力することで「演劇活動の発展・普及」の拡大を目的に活動しています。
1973年からは、毎年フェスティバル(劇フェス)を開催。コロナ過でも実施しました。50年続くこのフェスティバルは、審査員を迎え、各賞を創出し授与することで加盟劇団の「意欲向上」と「発展」につながっています。また、年1回「大阪劇団協議会プロデュース公演」を企画、加盟劇団の枠を超えた「親睦」と「交流」により観客拡大に貢献しています。
今年度のプロデュース公演劇団往来企画制作「アルトゥロ・ウイの興隆」はまさに現代の問題、課題に向き合い気付きと発見につなげられる作品として取り上げました。2025年戦後80年を迎えるこの年に、次の世代の考察の一助になればと考えています。
プロデュース公演の企画を行う「劇団往来」について
劇団往来は今年創立40周年を迎えました。
「演劇はカーニバルだ! 芸術は場数だ!」をモットーに仕事を続けながら芝居ができる環境を作ろうと1984年9月に旗揚げ、同年12月に会社を立ち上げました。公演もさることながらテレビ局や他劇団のセット製作、各種イベントの企画など施工・企画集団の顔を併せ持つ会社へと成長したと思っております。将来像は「演劇の総合商社」を目指し、これからもお客様のニーズに応え、クオリティの高い興行、品質の良い製作物を届けていきます。コロナ禍以降、舞台のライブ配信など公演のあり方も少しずつ変わってきています。劇団員の世代交代も含め若い団員に引き継ぎつつも全員の可能性を見い出せる団体、そして新しい企画、斬新な演劇を目指し関西のみならず全国展開できる劇団になるよう今後も尽力していきます。
劇団往来2022年-2024年主な活動実績
・2022年劇団往来第54回公演 「マクベス」近鉄アート館
・2022年幣原喜重郎生誕150周年記念「平和への願い」門真ルミエールホール 制作プロデュース
・2022年大阪憲法ミュージカル 「憲法のレシピ」クレオ大阪中央 制作プロデュース
・2022年平和祈念劇団往来プロデュース公演「チンチン電車と女学生」JMSアステールプラザ
・2023年劇団往来第55回公演 「十二夜」 近鉄アート館
・2023年劇団往来第56回公演 「我愛你」 インディペンデントシアター2nd
・2023年松原市こどもフェスティバル 「オズの魔法使い」 松原市文化会館
・2023年劇団往来第57回公演 「地下鉄1号線THE NEW WORLD」近鉄アート館
・2024年劇団往来第58回公演 「赤いハートと蒼い月」 近鉄アート館
・2024年劇団往来創立40周年特別公演「わさんぼん(話三本)~語り、狂言、物語の世界~」インディペンデントシアター2nd
寄付のつかいみち
みなさまからいただいた寄付は、舞台装置の制作、および今回の公演のために作曲されるオリジナル音楽の制作費用に充てさせていただく予定です。
このプロジェクトに寄付をすると税の優遇措置が受けられます
アーツサポート関西は公益財団法人関西・大阪21世紀協会が行う取り組みであるため、このプロジェクトに寄付をいただくと税の優遇措置が適用されます。個人と法人のいずれにも適用されます。たとえば個人が3万円を寄付して「税額控除方式」で税金の還付を受ける場合、11,200円が寄付者に戻ってきます。詳しくはこちらをご参照ください。
寄付をしていただく際にご確認いただきたいこと
■このプロジェクトは、アーツサポート関西の2024年度公募助成で選ばれた団体が行う活動です
■いただいた寄付は、公益財団法人関西・大阪21世紀協会への寄付となり、税の優遇措置が受けられます。詳しくはアーツサポート関西ホームぺージ「税の優遇措置について」をご覧ください。
■プロジェクトを行う団体には、いただいた寄付から必要経費10%を控除した金額をアーツサポート関西から助成金として支払います。クレジットカードをご利用の場合はカード手数料分も控除されます。
■プロジェクトが目標額に達しない場合でも集まった寄付金を助成金として支払います。それにより事業規模が縮小されることがありますので、予めご了承ください。
■やむを得ない事情により、プロジェクトが中止となった場合、寄付金は返金せず、アーツサポート関西が行うほかの芸術・文化支援活動に活用します。
■寄付者のご連絡先については、当方の個人情報保護の基本方針に則り、プロジェクトを行う団体からのお礼のお手紙やメール等をお送りするため、当方から団体にお伝えさせていただきます。プロジェクト団体へのご連絡先の開示を希望されない場合は、寄付申込みページの備考欄に「個人情報の共同利用不可」とご記入いただきますようお願いいたします。