Q1.メチル化アレイ検査って何ですか?
A1. メチル化アレイ検査は、メチル化という遺伝子の微妙な変化をとらえて腫瘍の診断に役立てる検査です。多数の遺伝子のメチル化の変化を一度の検査でとらえる事が可能です。
Q2.メチル化ってなんでしょうか?
A2. メチル化とは、遺伝子につけられた目印のようなものです。メチル化は遺伝子の働きを修飾する力を持っているため、腫瘍の発生に重要な役割を果たします。
Q3.なぜメチル化アレイ検査は腫瘍の診断に役に立つのでしょうか?
A3. 今までの研究で、腫瘍それぞれが独自のパターンで遺伝子にメチル化を起こしている事がわかりました。メチル化アレイによりそのパターンを認識する事ができれば、腫瘍細胞の見た目では診断が難しくても、メチル化のパターンでどの腫瘍であるかを見分けることができます。
Q4.なぜメチル化アレイ検査は小児脳腫瘍の診断に有用なのでしょうか?
A4. 通常小児がんの診断は、顕微鏡で腫瘍がどのような細胞で構成されているかを調べる病理診断、遺伝子パネル検査で調べるような遺伝子変異解析により主に行われています。
小児脳腫瘍は非常に種類が多くその診断は専門家でも困難なことがあり、他の小児がんと比べて通常の方法だけでは診断がつかないことが往々にしてあるため、メチル化アレイ検査が非常に役に立つことがしばしばあります。
小児脳腫瘍の患者さんを正確に診断して正しい治療を行うためには、メチル化解析をいつでも行える体制を作っておくことがとても重要です。ただ、現在メチル化アレイ検査は保険診療では行うことはできません。
Q5.今はどうやってメチル化アレイ検査をしているの?
A5. 日本小児がん研究グループ(JCCG)の中央診断システムの中で、必要な症例にはメチル化アレイを行うようにしています。資金は主に解析施設の研究費を充当していますが、こういった事実上の臨床検査に研究費を獲得することは困難であり、取れたとしても期間が限定されるため、検査費用としては十分ではありません。私たちは今後も研究費その他の資金を獲得するために継続して努力を続けていきますが、並行して皆様のご支援が必要です。
Q6.なぜメチル化アレイ検査は保険診療では行えないのでしょうか?
A6. 一般に保険診療で行う臨床検査は、「体外診断薬」という国の厳しい基準を満たす特別な検査キットを開発し、承認を得る必要があります。「体外診断薬」は医療者ではなく企業により開発されます。「体外診断薬」の開発には膨大なコストと時間がかかり、脳腫瘍のような希少疾患では開発に見合う収益が見込めないため、企業は体外診断薬の開発を行う事ができません。採算性のない希少疾患に対して必要な検査を提供するために、米国では「自家調製検査」といって、「体外診断薬」ではない研究用の試薬を使って検査センターで行われた検査が保険診療で認められていますが、日本ではまだ「自家調製検査」が保険で認められていません。私たちはメチル化アレイ検査を臨床検査として保険診療で行えるようにするために関係省庁に働きかけるなどの努力を続けておりますが、「自家調製検査」が保険で認められるまでにはまだ時間がかかると考えています。でも今検査が必要な患者さんは待っていることができません。だから、将来メチル化アレイ検査を臨床検査として行えるようになるまでの間、皆さんのご支援が必要なのです。
Q7. なぜ、メチル化アレイ検査を無料でしなければならないのですか?
A7. 実際に診療をしている施設と検査を行っている施設が異なり、経費を回収する方法が難しい事などから、メチル化アレイ検査に限らず、JCCGの中央診断は基本的に研究ベース、つまり無料で行われています。
保険収載されていない検査で患者さんに経費を負担していただく方法に先進医療がありますが、先進医療には制限も多いため、一部の患者さんにしか検査機会を提供する事ができません。JCCG中央診断の目的は、全ての小児がんの患者さんに均等に最高レベルの診断と治療の機会を提供することにあり、将来的には保険診療下にこれが実現することを目指して、今は研究という形で橋渡しをしたいと考えています。
Q8.メチル化アレイ検査と遺伝子パネル検査の違いはなんですか?
A8. 両方ともがんの遺伝子を調べる検査です。ただ、遺伝子パネル検査はメチル化とは異なる遺伝子の異常(遺伝子変異と呼ばれます)を調べます。遺伝子変異は、例えば「夕焼けがあかい」が間違って「夕焼けがあおい」になったような、いわば遺伝子の誤植です。これに対してメチル化は、「夕焼けがあかい」と強調するように、遺伝子が修飾される現象です。脳腫瘍の種類によって「夕焼けがあかい」「夕焼けがあかい」「夕焼けがあかい」など異なった部分が強調(メチル化)されるため、そこを見分けて腫瘍の診断に結び付けます。つまり、メチル化アレイ検査は遺伝子パネル検査では見ることができない、遺伝子の別の側面を調べることができます。
遺伝子パネル検査は条件が合えば保険診療で実施することができますが、メチル化アレイ検査は保険診療ではできません。