認定NPO法人キャンサーネットジャパンは、小児がん啓発・支援の一環として、脳腫瘍の子供達が治療のために必要な検査を受けられるよう本プロジェクトを立ち上げました。皆さまからの温かいご支援をお願いいたします。
*本プロジェクトは、日本小児がん研究グループ(JCCG)脳腫瘍委員会の「小児脳腫瘍の遺伝子検査(メチル化中央診断)プロジェクト」に賛同し、実施しているものです。
なお、毎月、毎年定額で継続的にご寄付をいただく方法もございます。継続的にご支援いただくことで、安定して脳腫瘍の子供たちが最適な治療を受けることを支えることができます。
2022-12-22 14:53
コラム1:ドラッグラグと遺伝子検査ラグ
「ドラッグラグ」という言葉をご存じでしょうか?もともとは、既に有効であることが分かっていて、海外で承認されている薬が、国内で使用できるまでの時間を指した言葉です。最近では、特定の遺伝子異常を標的とした分子標的薬という種類の薬が増えた事で、国内であるがんに承認されている薬剤が、同じ遺伝子異常を持つ別のがんでは承認されていないという新しいドラッグラグが問題になっています。
「ドラッグラグ」という言葉をご存じでしょうか?
もともとは、既に有効であることが分かっていて、海外で承認されている薬が、国内で使用できるまでの時間を指した言葉です。
最近では、特定の遺伝子異常を標的とした分子標的薬という種類の薬が増えた事で、国内であるがんに承認されている薬剤が、同じ遺伝子異常を持つ別のがんでは承認されていないという新しいドラッグラグが問題になっています。
例えば、BRAF V600Eという遺伝子を対象とした分子標的薬は、悪性黒色腫や大腸癌では保険診療として使用する事ができますが、小児脳腫瘍でBRAF V600Eが検出されても同じ薬を使う事ができません。
この新たなドラッグラグの問題は、解決すべき重要な課題の一つですが、この問題は遺伝子検査が実施できるようになって初めて出てきた問題です。
ですが、脳腫瘍に対して保険承認されている遺伝子検査はほとんどありません。ですから、多くの小児脳腫瘍の患者さんは、中央遺伝子診断を通じて遺伝子診断を受けないと、最新の診断を受ける事ができないだけでなく、自分の腫瘍に有効な分子標的薬があるかどうかを知る事ができません。
この、遺伝子検査の承認の遅れが「遺伝子検査ラグ」です。
「遺伝子検査ラグ」を埋める事で、初めて「ドラッグラグ」の課題に直面する事ができるのです。
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2019年にがんゲノムプロファイリングが保険承認された事で、小児脳腫瘍の患者さんが遺伝子検査を受ける機会は少し増えましたが、非常に高価かつ煩雑な検査であり、限られた医療機関でしか実施できない検査ですので、「遺伝子検査ラグ」の問題はまだまだ未解決です。
本プロジェクトの支援の対象はメチル化アレイですが、この「遺伝子検査ラグ」を埋めるための中央遺伝子診断全体の支援も求められています。