私たちは猫の一生に責任があります
東京都心の千代田区では2000年に区議会全会一致で「飼い主のいない猫の去勢・不妊手術費助成事業」が始まり、区民を対象に普及員(ボランティア)を募集しました。この募集に応じて集まったボランティアがネットワークを強め、2001年に発足したのが「ちよだニャンとなる会」です。
行政と連携協力して地域の人たちとコミュニケーションをはかり、猫たちを一時保護して動物病院で手術を行い、元の場所に戻す、地域の人たちが猫たちを見守りお世話する、という仕組みが推進されました。猫の繁殖を抑えて頭数を増やさないようにしつつ、人と動物の共生を進めていく、というのが当初の私たちの活動でした。
「TNR(Trap/Neuter/Return=捕獲・去勢不妊手術・元の場所に戻す)」の徹底を目指すなかで、子猫や人に馴れている猫、馴れそうな猫については、家に迎えてくれる人を見つけて、譲渡するようになりました。
しかし都心では再開発が進み、猫たちの居場所は失われています。過去に手術を行い地域で生きてきた猫たちも高齢化し、傷病で次々と倒れているのが現状です。動物福祉・動物愛護が普及する時代、私たちは猫を保護して譲渡する活動を推進することとなりました。
猫を引き取り、譲渡先を見つけるためには、収容施設(シェルター)が必要です。私たちは、クラウドファンディングでリフォーム代の資金を集め、秋葉原と神田神保町に「保護猫ホーム」「老猫ホーム」を開設しました。2か所のシェルターには、譲渡をめざす保護猫たちが暮らすほか、高齢猫が穏やかな余生を過ごしています。
老猫が余生を過ごす施設を維持するためには、継続的なご支援が必要です
フラディさんは、秋葉原の「保護猫ホーム・老猫ホーム」でいちばんの長期滞在猫でした。保護されたのは、2018年8月。「炎天下で猫が倒れている」とJR神田駅近くの住民や在勤者から保健所に相談が寄せられ、職員が保護しました。地域の手術済み猫として何人かの住民・在勤者から食べ物を与えられていましたが、高齢・病気には抗えません。近寄ったら、立ち上がってフラフラと歩きまた倒れたことから「フラディ」と職員が命名。食べ物を与えていた人たちは誰も引き取れないとのことだったため、私たちが引き取ることとなりました。動物病院に運ぶと、全身ノミにたかられ重度の貧血に陥り瀕死の状態。「輸血すれば助かるかもしれない」とのことで、輸血をお願いしました。10日の入院と輸血でフラディさんの命は救われたのでした。
「高齢でもあり、長くはない」と複数の獣医さんから診断されていたため、譲渡先を探すのではなく、老猫ホームで余生を過ごしてもらうことになりました。せっかく助かった命、生きられるだけ生きてもらおうと考えていたのですが…
フラディさんは、みんなの想像を超える生命力を見せてくれました。老猫ホームの中をマイペースでフラフラと歩き、それなりによく食べ、よく眠り、時々、大きな声で「カアカア」と鳴きました。耳が遠かったのでしょう。老猫ホームを訪れる人たちから「フラちゃん」「フラ爺さん」「長老」などと呼ばれ、人気者でした。
QOLの維持を最優先として、動物病院に定期的に通院し、必要な医療とケアを行っていました。いよいよ弱ってからは、今まで以上にこまめに見守り、食事を介助し、排泄物で汚れた身体は常に清潔が保てるようにケアをしました。そして、フラディさんは2022年4月に息を引き取りました。
保護猫ホーム・老猫ホームという場所があったからこそ、フラディさんは安心できる場所で穏やかな余生を過ごすことができました。施設を持って本当によかったと思います。しかし、保護猫ホームの維持費やホームで暮らす猫たちへの医療費などの助成はありません。通院、投薬などの医療費、日々暮らすための猫砂やフードなど、その運営はご寄付と自己負担で行ってきました。すべての猫たちが継続的に安心して暮らすことができるためには、みなさまからの継続的なご支援が必要です。
ちよだニャンとなる会への支援を通じて、命を見捨てない社会づくりにご参加ください!
行政と連携協力する私たちの活動によって、2011年「猫の殺処分ゼロ」を実現しました。千代田区から東京都動物愛護相談センターに引き取られる猫がゼロになったということです。猫が路上で命を落とす「路上死」は2000年との比較で40分の1に削減されました。
しかし、日本全国に目を向ければ、自治体で年間11,718頭の猫が殺処分されています(環境省、2022年調べ)。殺処分される犬猫の頭数は年々削減されてはいますが、猫の殺処分数がなかなか減りません。猫の殺処分数は、犬の殺処分数の4倍のまま推移しています。
問題は殺処分だけではありません。猫は野生動物ではなく、家の中で人が責任を持って飼育するべきペット動物(家庭動物・愛護動物)です。にもかかわらず、飼い猫の何十倍もの猫たちが路上生活を送っています。台風、豪雨、降雪、酷暑…悪天候にさらされて、風邪などの感染症で倒れ、車に轢かれて無残な死を遂げる猫も少なくありません。路上で命を落とす猫の数は、殺処分される猫の頭数の10倍ともいわれています。
少子高齢化・核家族化の影響でしょうか、ペットについての相談も相次いでいます。高齢者の認知症、入院、入所、死亡により行き場を失ったペットを引き取ることが増えました。過剰な頭数の猫を飼育して適正な世話ができなくなる「多頭飼育崩壊」も今や社会問題となっています。
動物たちのセーフティネットの構築が急務です。「千代田モデル」を全国へ。私たちは、ちよだニャンとなる会が20年以上の活動で培ったノウハウ、「千代田モデル」を全国に広め、「命を見捨てない社会」を実現するという目標を掲げています。どの命もあきらめたくありません。あなたの力を貸してください。