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津山市では、新入職員研修としてだっぴのプログラムを活用してもらっています。
研修の目的と手順
この研修では、市民とのコミュニケーションが重要である行政職員がファシリテーションのマインドセット・スキルセットを身につけることを目的としています。
その方法として、津山市で実施されている中学生だっぴのグループファシリテーターとして参加する機会が活用できるのではないかと考え、5年ほど前から実施しています。
研修は
- ファシリテーション事前研修
- だっぴ本番に参加
という順序で行われます。今回は38名の新入職員さんが参加されました。
ファシリテーション事前研修
まず、ファシリテーション事前研修。およそ4時間、新入職員さんには午後の時間を丸々いっぱい使って研修を受けていただきます。研修で行うことはおよそ下記のとおり。
- ファシリテーションとは何か
- 「聴く」ことの練習
- グループでのファシリテーション実践
ファシリテーションはその型は様々ありますが、とりわけ教育系のファシリテーションを学び、異年齢の人たちがいる場を活性化すべく立ち回れるようにします。
個人の意味世界を紐解きながら、その場にいる人たちで共通点や相違点を探っていく対話のコミュニケーションにおいて、まず必要なのは個々人の意味世界を場のみんなで共有していくことです。
それは、普段なら聞かない(スルーしている)ことをわざわざ聴ける力とも言えます。相手の背景を知るために「なぜ〇〇をしようと思ったのか」「この人が本当に言いたいことは何だろう」など、個人の過去や感覚にダイブして、その人の目線から見えている世界を想像しながら聴きます。
そんなコミュニケーションは日常の仕事では(時間効率を考えれば)行わないことが多く、このコミュニケーションを成立させるためには①安心安全な場の形成と②問いかける力が必要です。
今回の研修では、どちらかと言えば②問いかける力の方にウエイトを置きながら進めました。グループでの対話を記録して振り返り、その場で出た問いかけをメタ的に整理しながら、自分たちの問いかける力を鍛えていきます。
最後に、非日常の研修を足場かけとしながら、日常の仕事に接続していくために、今日の学びに対する意味づけを行いました。
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だっぴ本番
続いては、ファシリテーションの実践となります。新入職員さんは、津山市で実施されている中学生だっぴのグループファシリテーターに挑戦します。
市内で実施されているいくつかの回に分かれて参加するかたちで、今年は研修から約1週間後に津山中学校にてだっぴが行われたので、そのときの様子をお伝えします。
中学3年生79名、キャスト22名、大人の方25名が参加しました。このキャストのうち半数は大学生、もう半数が新入職員さんとなります。中学生4名、キャスト1名、大人1名を基本形にグループをつくり、グループファシリテーターであるキャストは①安心安全な場の形成と②問いかける力を駆使して、場を活性化させるよう立ち居振る舞います。
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参加した中学生からは、下記のような感想がありました。
「自分では言葉にできなかったことが、会話の中で、自分が話したいのはそういうことだったんだと気づけた」
「性別や年齢が違う人が集まると多方面からの意見が出て、こんなにも面白いんだと思った」
「自分の意見に共感してもらえて、認められた気がして嬉しかった」
参加した職員さんの声
今回の研修に参加されたAさん(女性・新卒で津山市役所に入職)に津山中学生だっぴが終わった1週間後にインタビューを行いました。
Q.実際にだっぴでグループファシリテーターをやってみてどうでしたか?
中学生を笑顔で迎え入れて、溶けこみやすい雰囲気を作ろうと思い頑張りました。また、グループのメンバーで共通してそうなキーワードや違うところを見つける視点で話を進めていけました。
一方で、女の子で恥ずかしいのかあまり発言しない子がいたんですけど、もうちょっといい感じで振って、もっと会話できたらよかったなと反省もしています。
Q.今回の研修ではどんな学びがありましたか?
だっぴ本番では、人それぞれ色んな考え方や価値観があって、自分で思いつかないような答えを書いている中学生もいたりして、学びになりました。ファシリテーション事前研修では、私は自分のことを伝えるのがあまり得意ではないですけど、やっぱり自己表現する場は大事だと感じました。同期の人たちと元々仲は良いですが、研修のときのような感じ(対話的な雰囲気)で話したことはあまりなかったので、お互いのことをより深く知ることができました。
Q.今回の研修を通して成長した・変わった自分って、何か見つけられましたか?
他の人とコミュニケーションをとらないと、自分の視点が広がらないと思うんですけど、色んな人の考えに触れられて、物事を客観的に見えるようになって、自分自身を見つめ直すいい機会になりました。
私は元々、人に自分の意見を主張したり、グループワークの場で積極的に参加していけるようなタイプではないんですけど、今回の研修(ファシリテーション事前研修とだっぴ当日)では、意識してその殻を破る、積極的にもっと色んな人と関わろうと意識しながら過ごしました。
今回の研修がきっかけで、例えば仕事の場面でも、一緒に業務をしている先輩や上司に、今までは指示されて「はい」って返事してただやるだけだったんですけど、自分なりに「ここを改善したらもっと効率よくなるんじゃないか」と思ったところは、遠慮せずに先輩や上司に自分の意見を言う。そういう感じで、自分を表現することの苦手意識がちょっと減ったかなと思います。
おわりに
昨今、職場のウェルビーイング・心理的安全性が話題になることも多いですが、参加職員さんのインタビューを通して、今回の研修はそこにもつながるものだと考えられました。
中学生の学びの場を生み出すことに寄与しながら、新入職員さんの学び・成長機会にもなる。双方にとっての利益のある、こうした協力の仕組みを引き続き開発・波及していきたいと思います。