活動・団体の紹介
一般社団法人El Sistema Connectでは、『ホワイトハンドコーラスNIPPON』というユニークな合唱隊の活動を運営しています。DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)を体現する合唱団が世界中に広がることを目指して、活動しています。
VISION: 舞台から未来を創る〜音楽による社会インクルージョン
育てたい3つの力
①Imagination-想像力。それは誰かの痛みを想像するチカラ
②Creation-創造力。それは創造で枠を壊すチカラ
③Innovation-イノベーション。それは感動で人を興すチカラ
ろう者も、音楽家も、車いすユーザーも、弱視のメンバーも、みんなで創り上げる舞台。
「手歌」という表現方法で、全ての人がつながる新しい音楽のカタチを届けます。
ろう者と創る「手歌」についてはこちらから動画をご覧いただけます。
また写真家・田頭真理子氏とのコラボレーション作品『第九のきせき』も、国内外から大きな反響を呼んでいます。
取り組んでいる社会課題
1. 貧困と体験の格差
「貧困の最大の問題は、パンがないことでも、屋根がないことでもない。それは、社会から必要とされないと感じることだ」とマザーテレサは述べています。障害や貧困が社会からの疎外を生むことは日本においても同じです。子どもの頃からの体験格差による諦め(保護者も含む)によって、障害児、あるいは経済困窮家庭では、「夢」を見れなくなるケースが多いのです。また、体験の格差は貧困と関連しています。年収 300 万円以下の世帯で「文化芸術活動の体験をしたことがない」子どもは82.4%(2023 年チャンス・フォー・チルドレン調査)でした。
文化的体験、社会で注目されるような大きな舞台にチャレンジする経験は、社会への帰属意識や自己肯定感を高めると同時に、夢見ることを諦めている子どもや保護者が、アクションを起こし、将来の選択肢
を増やす後押しになると感じています。
諦めていた大学に進学したろう者、特別支援学校での守られた環境から飛び出て一般校に転校し、合理的配慮などを獲得するためにパイオニアとして対話しながら環境を変容させたメンバーもいます。貧困の格差を是正するためには、外的要因(衣食住の確保)と内的要因(モチベーション)の両方にアプローチが必要です。社会との繋がりを実感できる文化体験は、内的要因に働きかけることができると信じています。
2. ともに学ぶ権利が保障されていないこと
国連人権委員会が 2022 年 日本政府に対し、インクルーシブ教育の遅れに対する厳しい勧告を出しました。「最初の分離は一生の分離」と言われるように、障害のある子どもを特別支援学校に囲い込む分離教育は、社会の偏見や分断の土壌となっていると指摘されています。特別支援教育を受ける子どもは 10
年前の2倍になっていることから、日本において分離教育の傾向は増加していると言えます。
障害の有無にかかわらず共に学び、関わり合える場所は、学校教育、習い事をとっても障害のある子どもにとって希少です。また、障害のある子どものように様々な視点や感覚を持ち、困難に対し工夫して生活を乗り越えている同年代の青少年と関わる場がないことは、障害のない子どもにとっても大きな損失なのです。
聞こえる子どもが学校に「手話部」を設立し、学校全体で手話に取り組むケースもありました。幼稚園から特別支援教育を受けてきた中学3年生の弱視のメンバーは「学校でも社会でも僕は障害者だけれど、ここに来れば障害者ではなくなる。みんな平等なので自分だけが違うと思わないで済む」と話してくれました。子どもたちが安心して参加し、様々な背景の子どもが関われる場を創ることは、子ども、保護者、関係者を変容させる力があるのです。
日本のインクルーシブな社会形成において、教育システムがすぐに変わらなくても自治体や劇場と連携できれば民間団体としての強みを活かした貢献ができると考えています。
3. ろう者や難聴の子どもの音楽教育
ホワイトハンド、白い手袋の「手歌」は音楽ですべての人をつなぐ革新的な表現方法です。
「聞こえる」ことを前提にした音楽を押し付けた結果、「音痴だから歌わないで」「静かに待ってて」と言われ音楽の授業がトラウマになっているろう者が非常に多くいます。
また、私立のろう学校で「音楽」の授業がない学校もあります。
日本中の学校の音楽室に、白い手袋が楽器の一つとして置かれ、ろう者がろう者らしく参加できる場所が確保されたなら、音楽の授業だけでなく、子どもがありのままの姿で協働する知恵を生み出せると感じています。音楽を聴覚だけでなく、視覚で表現することや写真で音楽を表すこと、あるいは写真を目で見るのではなく触って楽しめるようにするなど、それぞれの身体的特徴や視点があるからこそ既存の概念を壊し、新しいものを生み出すことができるということを子どもたちに伝えたいです。
また、将来ろう学校での音楽教育改革に寄与できるよう、定期的な子どもの成長の記録をとり、学術研究や学会での発表も始めています。
4. 障害者雇用の課題
「障害者=単純労働」という一括りの雇用実態が蔓延すると「夢」がなくなります。
縫製、調理など技術を獲得してきた障害児が雇用の場面になると「障害者枠」にしか応募できないことが多々あるのです。個々のスキルや特長を理解する姿勢が浸透すれば、障害者が会社のイノベーションに貢献できる場面がたくさんあると、私たちは考えています。また、手話のできる聴者の人材も企業の顧客拡大に貢献できます。
例えば、自閉症で難聴の子どもが、ホテル客室のソファーのほつれや壁紙の汚れを誰よりも早く見分けられるという特性から、メンテナンス部門の仕事を任されたというマッチング成功例もあります。
障害に対する理解促進、雇用における想像力と企業の創造を促す目的で、私たちは、ホワイトハンドコーラスを応援する企業が子どもたちと交流するイベントなどを企画しています。雇用の選択肢が広がりロールモデルが増えれば増えるほど、「夢」とイノベーションが育つと信じています。
活動内容の詳細、実績について
観客数30,000人超え!東京・京都・沖縄でワークショップや公演を開催
東京でのワークショップ事業は、東京都/公益財団法人 東京都歴史文化財団 東京芸術劇場との共催です。
【過去の受賞】
2025 年 2 月 第3回やなせたかし文化賞受賞(授賞式は4月12日)
2024 年 2 月 Zero Project Award バリアフリーの国際賞受賞(於:国連ウィーン事務局)
2023 年 8 月 KIDS DESIGN 賞 「子どもの創造性と未来を拓くデザイン」
2021年11月 京都市はぐくみアクション奨励賞
2019 年 11 月 ローマ法王来日に合わせ演奏 メダル授与
【公演】
2024年 オーストリア国会議事堂、国連ウィーン事務局にて第九初演から200年を記念し、演奏
2022年 SDGs ソング《ツバメ》手歌バージョン NHK「みんなのうた」出演 ※聴覚障害者の出演初
2021年 東京芸術劇場 第九番交響曲 手歌版初演
2021年 新国立劇場 新作オペラ Super Angels ※新国立劇場で障害のある子ども出演初
■子どもたちの声
■保護者の声
世界一のインクルーシブ合唱団を目指して
ホワイトハンドコーラスNIPPONは、世界一のインクルーシブ合唱団を目指しています。地域の、小さなコミュニティの、そして一人一人の物語を一番の宝物としつつ、視野を広く持って旅立ってほしい、大きな世界を見ながら自分にも友達にも誇りを持てるようなメンバーになってほしいと願っています。
設立の時、芸術監督のコロンえりかは子どもたちに約束しました。「5年後にはカーネギーホールに連れて行くから、そのつもりで練習についてきてほしい」と。
応援隊の皆様と一緒に、世界を変えていく一歩を共に歩んでいきたいと考えています。
代表者メッセージ
夢を見るには練習が必要です。私たちの団体には、多様な子どもたちと音楽家・写真家・俳優などアーティストが集っているからこそ、その「夢」の描き方を知っています。
私たちが大切にしている姿勢は、障害者権利条約のモットーである「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という言葉です。
子どもも大人も互いから学び、どうすればインクルーシブな社会を共に創っていけるか常に対話し、団体の重要な事柄については、子どもが意思決定に参画します。
例として、「障害者」の手話を変える運動が始まったことが挙げられます。「障害者」は手話で「壊れた+人々」と表されている。年配のろう者は慣例的に使っている言葉ですが、若いろう者と対話する中で「私は何も壊れていない」という意見がでました。このため、数ヶ月に及ぶ対面、地域を超えたオンライン対話を通して新しい手話を考えました。
オーストリアの国会議事堂、及び京都市議会でパフォーマンスした際にメンバーの中学生2名が、新しい手話を紹介するとともに過去の手話の問題点を訴えました。
その時の様子は、こちらからご覧いただけます。
京都市議会においては、68人の議員が党派を超え全会一致で「手話言語における適切かつ時代に即した表現のあり方の議論と普及を求める意見書」をまとめ上げ、内閣総理大臣、衆・参議院議長、厚生労働大臣らに提出してくださいました。
ろう者の高校生は「これまでの人生で、この場所のように自分の意見を聞いてもらったことはなかった」と語っています。
また、ある10歳の障害のないメンバーは、「オランウータン」という楽曲に取り組む中で、インドネシアのパーム油栽培がオランウータンの絶滅の危機を招いていることを知り、大好きなふりかけにパーム油が使われていることがわかった際、ふりかけ製造会社の社長に手紙を書きました。代替原料の提案も行い、見事に聞き入れられて社会アクションに繋がった例もあります。子どもも大人も関係なく、互いに声を聞く場を創ることで、「自分たちの社会は自分たちで創る」という当事者意識が芽生えています。
「できるかどうかじゃない、やりたいかどうかだ」という絵本ムービーのセリフを胸に、枠を壊すチャレンジを私たちは全力で応援し続けます。
ホワイトハンドコーラスの子どもたちは、障害の有無に関わらず常に「助ける」「助けられる」の役割が交代していきます。リーダーがみんなに助けられることもあれば、手話のできる子が聞こえる子を助けることも頻繁に起こります。そして何より、ここで成長し、自信をつけた子どもたちが大人に教えてくれることは無限大です!
人生に教科書はありません。得意なこと、苦手なこと、障害のある人もない人も、みんな自分にしかない「人生」を描いて生きていかなければなりません。一歩を歩き出すには、その先に見える目標と「大丈夫!できる!」と思える心が必要です。自己肯定感がなければ、足を踏み出すことすら難しい。そんな時に、いろいろな目線から、仲間が支えてくれるのがホワイトハンドコーラスです。
子どもたちがそれぞれ自分らしい「夢」を歩いて行けたなら、きっと想像もできないような未来が広がるでしょう。私たちは舞台の上から未来をデザインします。
ありったけの「夢」を載せて、子どもたちが皆様に「インクルーシブな社会」の楽しさや美しさを存分に見せてくれるでしょう。
目の前にいる子どもたちが実現できることなら、答えはすぐそこに見つかるはず!子どもたちから起こす社会アクション、一緒に一歩を踏み出しませんか?
寄付金の使い道について
ホワイトハンドコーラスは、実に様々な人たちが関わることによって、活動を成立させています。例えばコミュニケーションに欠かすことのできない情報保障として、手話通訳が必要です。楽譜の購入費や点字楽譜の制作にも費用が発生します。また入院中など体調が優れなかったり、遠方からもメンバーがレッスンに参加できるように東京では常にZoomを繋げるようにしています。今では欠かせない手段の一つとなっており、接続する機器や通信料が発生します。このように、より良い音楽教育のため、皆様のご支援が必要です。
また、エル・システマでは、どのような経済状況であっても音楽を学べるよう、全てのプログラムが無償で提供されています。子どもたちは経験を積んだヴォイス・トレーナーやろう者の俳優から指導を受け、お互いから多くのことを学んでいます。活動は寄付や助成金で賄われており、皆様のご支援が必要です。いただいたご寄付は、手話通訳や点字、また私たちが最高の合唱団になるために欠かせない日々の練習のために使わせていただきます。