2022年現在、全国で約35万人以上の女性が、性風俗産業で働いていると言われています。
世間的には「遊ぶ金欲しさで働いている」と思われがちですが、大半の女性は、他の仕事と同じように、毎月の生活費や学費、子どもの養育費のために働いています。
また性風俗の仕事は「楽して高収入を得られる仕事」と思われがちですが、客数や指名の数によって収入が日々変動する不安定な仕事です。決して、誰もが簡単に稼げる仕事ではありません。
そんな彼女たちの姿が、私たちの目に映ることはほとんどありません。現在の性風俗業界は、無店舗型のデリバリーヘルス(通称デリヘル)が主流であり、お客の待つホテルや自宅に女性が派遣される形になっています。
店舗の看板もなく、インターネットでの集客・求人が中心になっているため、女性たちがいつ・どこで・どのように働いているかは、外からは全く分かりません。
そして、性風俗の仕事で働いていることを隠している女性が大半であるため、彼女たちは「見えない」存在になっています。
新型コロナによる社会的な自粛・休業の拡大と、それに伴う経済状況の悪化は、こうした「見えない」女性たちの生活にも大きな影響を与えています。
Aさんは、高校生の子どもと、介護が必要な高齢の母親との同居です。
親の介護のためフルタイムの職にはつけません。子どもの学費と生活のため、短時間で高収入を得られるデリヘルでどうにか家計を回しています。
しかし、コロナの影響で仕事が無くなり、生活が成り立たなくなってしまいました。
出勤しないと家族を養えない。子どもも進学できない。
しかし、風俗で働いていることを知られるのが怖くて、他の人に相談することができません。
Uさんは子供の頃から何かを覚えることが苦手でした。
中学校を卒業後にアルバイトを転々としてきましたが、どれも長続きしません。
今は昼間は派遣で介護の仕事をしています。でも、自分でお金の管理ができないため、カードローンの負債は100万円を超え、利息の支払いで精一杯。
生活のため、土日に格安のデリヘル店で働くことにしましたが、月に数万円程度の収入にしかなりません。
知的障がいがあるにもかかわらず、彼女は医療にも福祉にもつながっていません。
☑ 小さな子供を抱えており、子育ての合間時間にしか働けない
☑ 親の虐待から逃れて、今日の食事と寝る場所を自分で確保しないといけない
☑ 発達障がいのために、努力しても職場の人間関係になじむことができない
☑ うつ病のために朝起きられず、不規則に出勤できる仕事でしか働けない
「働いていることを誰にも言えない」「身バレが怖い」という理由で、生活に困っても助けを求めることができず、行政や福祉などの相談窓口にもつながれないまま、社会的に孤立してしまいます。
盗撮や性暴力、性感染症や望まない妊娠のリスクに常にさらされています。そしてマナーの悪い男性客の言動、ネットでの誹謗中傷などによる心身のストレスから心を病んでしまうこともあります。
その日のうちにまとまった収入が得られる現金日払い制、好きな時に好きな時間だけ働ける完全自由出勤制といった働き方や金銭感覚に慣れてしまうと、普通の仕事に戻ることが難しくなってしまいます。
私たち「風テラス」は、性風俗の世界で働く女性のための無料生活・法律相談サービスを、2015年より行っています。
性風俗の世界で働く女性の方々が、現在抱えている悩みや困難(借金、離婚、障害、病気、介護、育児、DVなどの問題)を、性風俗で働いているという事実を隠さずに、安心して相談できる機会を作ることを目的にしています。
相談に来られる女性は複雑で多重化した悩みを抱えていることが多いため、弁護士・ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)がチームで相談に乗ることで、問題の全体像を明らかにし、解決の糸口へと導くお手伝いをしています。
性風俗店の待機部屋(お客の指名が入るまで、在籍女性が待機している部屋)での相談会を中心に、対面・電話での相談を行っています。メールやLINE、ツイッターでも、24時間365日、相談予約を受け付けています。2020年のコロナ禍以降は、オンライン相談に力を入れています。
■身バレを気にせず、LINE・ツイッター等のSNSで、24時間いつでも相談が可能
■彼女たちの働いている性風俗店の待機部屋に出向いて相談会を実施
▲2020年~2021年は、コロナ禍の影響で相談が急増しました
■弁護士とソーシャルワーカーがチームを組んで、相談者の悩みに丁寧に対応
■行政、福祉、医療、法的サービス、提携NPO団体等の支援窓口と連携
■緊急時には無料の食料支援(宅配)、支援窓口への同行を実施
性風俗の現場で起こっている課題に対して、社会の認知を深め、支援の輪を広げるために、書籍・研修・イベントでの情報発信や、全国各地の支援団体や専門職との連携に取り組んでいます。
▲風テラスの現場から得られた経験や課題を書籍で発信
様々な課題や困難を抱えながら性風俗の世界で働いている女性たちに対する支援は、まだまだ不足しています。福祉や司法の世界においても、性風俗に対する偏見や差別、無理解などのために、この領域に関わる支援者は限られているのが現状です。
風テラスでは、こうした現状を少しでも改善し、つながりづらい世界で働いている女性たちが、必要に応じて適切な専門職や窓口につながることのできる仕組みを作っていきたいと考えています。
今後は、現在相談会を実施している地域だけでなく、全国の性風俗店で働く人たちの相談に対応できるように、相談会の開催拠点や相談員の増員、相談内容をまとめた冊子やチラシ、業界向けの機関紙の作成など、各地で活動を広げていきたいと考えております。
■■■あなたの寄付で、実現できること■■■
※1年間のご寄付で実現できること
月1,000円で 4世帯の母子家庭に、36食分の食事を届けることができます
月5,000円で 4人の女性に生活保護の申請同行を行い、公的支援につなぐことができます
月10,000円で 1か月(4回)の相談会を開催し、20人の女性を必要な支援につなぐことができます
頂いたご寄付は、弁護士・ソーシャルワーカーの相談員への謝金、緊急を要する相談者の方への食料・物資支援に使わせていただきます。
「お忙しい中お時間を作っていただき、本当にありがとうございました。親身にお話を聞いてくださったり、情報を提供してくださったり、心から感謝申し上げます」(20代・デリヘル)
「お優しい女性の方の声で励まして頂けたことで、心が軽くなりました。相談員の皆様もご多忙な毎日かと思いますが、くれぐれもご自愛なさってください。本当にありがとうございました」(30代・デリヘル)
「先日はありがとうございました。その後、生活保護も決まり、自己破産に関しても弁護士の先生にお世話になり順調に進んでいます。まだまだ道半ばですが、早く普通の生活に戻れるよう、がんばりたいと思います」(30代・ソープ)
「本当に相談させて頂いて良かったと思いました。コロナの中、仕事を続けることに対する恐怖心がとても強かったので、感謝の気持ちでいっぱいです」(40代・デリヘル)
「お忙しい中お時間を作っていただき、本当にありがとうございました。親身にお話を聞いてくださったり、情報を提供してくださったり、心から感謝申し上げます」(30代・ヘルス)
「相談の最中は、『ソーシャルワーカーとしてできることは何なのか』を必死になって考えて対応をしていたのですが、弁護士やソーシャルワーカーという職種の枠を超えて、人間として一緒に相談を受けることが重要だと感じました。SWの視点と弁護士の視点から、一緒にメッセージを送る。二人で相談を受けることで、相談者の方に『生きていてほしい』というメッセージを二倍増で伝えて、勇気づけたい。」(ソーシャルワーカー 佐藤さん)
「改めて思ったのは、風俗で働くことを肯定も否定もしないことの大切さです。ただ債務整理をするだけでは、その人の人生の課題は解決できないこともある。客観的な事実としての大変な部分の問題解決に焦点を当てて、フラットに困りごとを相談できるようにしなければいけない」(弁護士 鈴木さん)
「コロナによって、風俗で働く人たちが元々抱えていた問題が顕在化したのであれば、そこにアプローチしていかなければいけない。解決手段を伝えるだけでなく、本人に解決する力を身につけてもらうための試みが必要になってくるのではと思います」(弁護士 坪内さん)
YouTubeの人気チャンネル「ホンクレch-本指になってくれますか?-」にて、風テラスの活動と相談員(三上弁護士・佐藤SW)の声が紹介されています。
坂爪真吾(さかつめ・しんご)
NPO法人風テラス理事長。1981年10月21日新潟市生まれ。東京大学文学部卒。
私が風テラスを立ち上げるきっかけとなったのは、2015年に東京・鶯谷の激安デリヘル店を取材で訪問したことです。雑居ビルの中にあるお店の待機部屋には、生活困窮・多重債務・DV被害・発達障害・軽度知的障害・精神疾患など、様々な困難や課題を抱えた女性たちが集まっていました。
明らかに福祉的・法律的な支援が必要にもかかわらず、彼女たちの多くは、公的な支援をほとんど受けられていない。仕事のことを誰にも話せないため、行政にも、支援団体にも、どこにもつながれない。
「この待機部屋に、彼女たちを適切な支援につなぐソーシャルワーカーがいれば・・・!」と痛感しました。
そこで、知り合いのソーシャルワーカーと弁護士に声をかけて、店舗の経営者の方のご協力を頂いた上で、お店の待機部屋で女性向けの無料生活・法律相談会を開催したのが、風テラスの始まりです。
開始から約5年半で、4700人を超える女性の相談を受けることができました。しかし、35万人もの女性が働いている性風俗の世界には、社会的に孤立し、誰ともつながることのできていない女性たちが、まだまだ大勢存在しています。
一人でも多くの女性とつながり、彼女たちの孤立を解消するため、あなたの力を貸してください。
あなたの温かいご支援、お待ちしております。
一年の終わりに、考えたいのは未来のこと。
もっと楽しい未来。もっと優しい未来。
もっと平和な未来。もっと多様性が認められる未来。
そんな未来を手にするために、あなたの気持ちを寄付にしよう。
寄付は意思、寄付は投資、寄付は応援、寄付は願い。
寄付で未来は変えられるのです。
だから、「Giving December」。
一年の終わりに、未来を考え寄付をする。そんな習慣を、はじめたいと思います。
欲しい未来を叶えてくれるさまざまな取り組みに、あなたの想いを託しましょう。
さあ、年の終わりに、新しい「寄付」がはじまります。
寄付月間とは
寄付月間(Giving December)は、NPO、大学、企業、行政などで寄付に係る主な関係者が幅広く集い、寄付が人々の幸せを生み出す社会をつくるために、12月1日から31日の間、協働で行う全国的なキャンペーンです。