虐待やDVにさらされながら、
“かろうじて生きている”人たちがいます。
父親が帰宅する足音に、母親にしがみつく子どもたち。
夫婦と子ども2人。一見するとごく普通の家族に見えるその家で、母子は息をひそめるように暮らしていました。夜8時以降は、食事もお風呂もテレビも禁止。「どうしてこんなこともできないのか!」1日3時間にもおよぶ言葉の暴力に、正常な思考は奪われていきました。

ある日、子どもの耳が聞こえづらくなり病院を受診すると、ストレスによる難聴と診断されました。その時、母は家を出ることを決意しました。
「笑ってごはんを食べられるのが、嬉しい。」
ハッピーウーマンプロジェクトが運営するシェルターで一時保護された家族は、安心な環境の中で少しずつ日常を取り戻しました。
「笑ってごはんを食べられるのが嬉しい」という母親の言葉が、これまでの日々の過酷さを物語っています。家を出てから子どもの聴力も回復し、今では元気に学校へ通っています。家族は新しい生活に向けて歩き始めています。

DVという言葉から一般的に想像される「身体的暴力」とは異なり、多くの場合それは、精神的・経済的な支配という形で行われます。
まともな生活費を与えず経済的な自由を奪い、言葉の暴力や威圧的な態度で正常な思考を奪い、行動を制約して社会から孤立させる。

イヤなら逃げればいい。そう思われるかもしれません。しかし、それができなくなるのが、精神的暴力の本質です。果たしてこれは、その人個人の問題でしょうか?
20年の活動の中で、私たちはDVや虐待、性暴力に苦しむたくさんの女性や子どもたちと出会ってきました。私たちが出会ったもう一人の女性のお話をさせてください。
戻れる家はない。
たったひとりで臨む、初めての出産。
妊娠18週、21歳のその女性は、一度も病院を受診することなく、たった一人で県の相談窓口にたどり着きました。

幼い頃から両親の虐待を受けて育ち、コロナ禍で家を飛び出しました。アルバイトをしながら友人の家を転々とする不安定な生活の中で妊娠。それでも、彼女に戻れる「家」はありませんでした。
病院を受診し、シェルターへ。母親からは「何も支援はできない」と告げられました。
誰にも頼れず、たったひとりで臨む初めての出産。それでも彼女の「産みたい」という意思は揺らぎませんでした。
「子どもが、かわいい」
産後1か月間は、スタッフがシェルターに泊まり込んで子育てをサポートしました。

虐待を受けて育った人の中には、「子どもの抱きしめ方が分からない」という人もいます。それでも彼女は、まっすぐに「子どもが、かわいい」と言葉にします。
具合が悪いときの対処、離乳食の作り方。本来であれば、親から教わる日常の一つひとつのことを、懸命に周囲の協力者から教えてもらいました。現在は、周囲の助けを借りながら、自分の力で働き、子どもを守り育てる生活を送っています。
子どもたちに、女性たちに、
寄り添い続けてきた20年
私たち、NPO法人ハッピーウーマンプロジェクトは、2006年の設立以来、富山で虐待やDV、性暴力被害など、さまざまな困難を抱えた子どもや女性たちに寄り添い続けてきました。
私たちの団体は、産婦人科の医師や助産師などの医療従事者をはじめ、さまざまな職業や年代の女性が集まり、立ち上げました。そこで話し合われたのは、私たち自身が抱える性に関する悩みや、ときに性暴力やDV被害など、女性ならではの困難な状況でした。

「病院にすらたどり着けていない人がもっといるのではないか」。その思いから啓発活動へと取り組みを広げ、健康や性に関する講座の開催から始まり、DVや虐待、性暴力を受けた人の相談対応、母子シェルターの開設へと広がっていきました。
団体設立から約20年間で対応してきた相談件数は、2万2,500件以上にのぼります。
その人が、その人らしく、
自ら選択して、
自分の人生を生きていくために。
この写真は、私たちの母子シェルターを利用した親子が無事に七五三を迎えたときのものです。

私たちは、その人が本来生まれながらにもっている「生きる力」を信じています。
その力を奪うのがDVや虐待や性暴力です。しかし、力を失っているのは、その人を害する環境にいるからです。回復のスタートは、安心・安全な環境や人間関係をつくることから始まります。

シェルターでの生活や団体スタッフとの関わり合いを通じて、力を取り戻すことができたら、その人は必ず自らの足で動いていける——私たちはそう信じています。
私たちの活動は、もう一度自分の足で歩き出すためのお手伝いのようなものです。
あなたのご寄付で
できることがあります
私たちは、公的な母子生活支援施設・女性自立支援施設がない富山県で、困難を抱えた女性や子どもたちに安心・安全な一時的な住まいを提供するため、2021年に団体独自の民間シェルターを開設しました。
名前は「Kite Kite(キテキテ)」。一時保護や居場所の提供に加えて、専門家による心理面のサポートや就労支援など、自立までの切れ目のない支援を行っています。
こうした活動の多くは、個人や法人の皆さまからのご寄付によって支えられています。
子どもたちや女性たちを支援する輪に、あなたも加わっていただけませんか?

被害者も、加害者も
生まない社会をつくる。
人は、本来生まれながらにして「生きる力」を持っている。私たちはそうを信じて、困難を抱えた女性や子どもたちの回復の道のりに寄り添い続けてきました。
20年間の活動を通じて、もう一つ分かったことがあります。
それは、目の前の状況に対処するだけでは、問題の解決にはならないということです。
困難な状況にある人への直接支援と同時に、正しい知識や情報を持つこと、そして「困ったら相談していい」と知っていることも大切です。それを伝えるための活動にも取り組んでいます。

10代・20代の若者とつながる
きっかけをつくる「駅ナカ保健室」
月に1回、学校帰りの時間帯に、富山駅の南北自由通路にテーブルや椅子を出し、高校生や若者たちが気軽に立ち寄れる “ちょっとした居場所” をつくっています。
年の近い看護学部の学生ボランティアが話し相手になり、自然な会話の中から困り事のサインを見つけ、必要に応じて婦人科医などのスタッフへつないでいます。問題を早期に発見するアウトリーチの取り組みとして行っています。
児童養護施設を巣立つ子どたちへの
ひとり暮らし講座
虐待などの理由で児童養護施設で育った子どもたちは、家庭で育った子が当たり前に知っているようなことを知りません。それでも、18歳になると施設を出て、暮らして行かなければいけません。
私たちは、2012年から富山県内の施設で生活に必要な基礎知識を伝える講座を続けています。お金の管理や食事づくり、人づき合いの方法などを伝え、ガイドブックを“お守り代わり”に手渡しています。困ったときに思い出してもらえるつながりを残すことも、この講座の大切な役割です。

「生きる力」を育む教育を、
富山から、日本全国へ。
自分を大切にすること。そして、それと同じくらい相手を大切にすること。
それを伝えるために、私たちは、今、子どもたちが一人ひとり「生きる力」を育むための独自の教育プログラムの開発にも取り組んでいます。
それを富山に、そして日本全国へと広げていくことで、被害者も、加害者も生まない社会を、そして、一人ひとりが心も身体も健康に、社会とのつながりを持ち、いきいきと生きていける社会をつくっていきます。

Q&A
Q. 寄付したお金は、何に使われますか?
A. 皆さまのご寄付は、民間シェルター「Kite Kite」や「駅ナカ保健室」の運営、児童養護施設の子どもたちの巣立ちをサポートする取り組みに大切に活用させていただきます。
シェルターには、国や県からの補助もありますが、すべての費用を公費で賄えるわけではありません。当面の食費さえも持っていない人、夫に住所を知られずに病院を受診するため、やむなく医療費を実費負担とする場合もあります。また、夜間に急に不安を訴える入居者への緊急対応など、公的な制度ではカバーできない、柔軟できめ細やかな対応が求められる部分は、ご寄付によって支えられています。
Q. 寄付によって行われた活動や会計報告は、どのように知ることができますか?
A. 寄付者の皆さまには、ニュースレターやメールで定期的に活動をご報告します。また、財務会計報告は、内閣府のNPO法人ポータルサイトに掲載しております。(詳しくはこちら)
Q. 領収書は発行されますか?
A. 領収書は発行されます。クレジットカード払いの方は、申込み完了後に自動送信されるメールに領収書のPDFが添付されます。銀行振込・郵便振替でお支払いの方は、ご入金確認後にメールでお送りさせていただきます。紙の領収書の発行を希望される方は、個別にご連絡ください。
Q. 寄附金控除(税制優遇)の対象となりますか?
A. 当団体へのご寄付は、現時点では寄附金控除の対象とはなりません。現在、寄附金控除の対象となる認定NPO法人の取得を目指し、準備を進めています。認定を受けるためには、年間100人以上の方からのご支援が必要となります。ぜひ皆さまからのご支援をお願いいたします。

