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シリアの情勢不安で教育の機会が奪われた子どもたちは、青少年や大人になっても、基礎的学力が培われていなかったり、仕事のスキルがないために搾取的な労働環境におかれることが少なくありません。IVYはそうした青少年が搾取的な労働環境から抜け出し、より安全で安心した生活を送るための支援をしたいと、初等教育もしくは職業訓練、そしてライフスキル教育を行うプロジェクトを開始しました。
240名の若者に学びの機会を
今でも外国からの空爆が続いたり、情勢が安定しているとは言えないシリア。それでもそこには、家族のため、社会のために未来を諦めない若者がたくさんいます。
今回のプロジェクトでは、女性約110人と男性約130人を対象として、識字教育もしくは就労支援とライフスキル教育プロジェクトを行います。
学校に行ったことがない者・小学校を途中でドロップアウトした若者には初等教育学習機会を提供し、既に初等教育を修了した若者に対しては職業訓練を行い、習得した職業スキルを生かして安全な就労ができるよう支援していきます。
また参加した若者全員に対してライフスキル教育を行い、人間関係や問題に直面したときによりよい解決方法を自分で見つけるられるよう学びあうなど、プロジェクトでは様々な側面からシリアの若者たちをエンパワメントしていきます。
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自分の力で歩みだした214名の若者たち
2022年10月より1年間同様のプロジェクトを実施し、214人の若者が参加しました。昨年9月には、受講生による成果発表会を開催し、修了式も行われましたので、その様子をご報告します。
成果発表会の開催
2023年9月13日〜14日、A市にある職業訓練・教育センターで、過去数ヶ月間の職業訓練・教育プロジェクトの成果発表会が開催されました。IVYとIVYの提携団体のプロジェクトからは、職業訓練・教育訓練部門、識字部門に加え、心理支援・ライフスキル部門を含む訓練コースでの成果や作業を発表しました。
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展示会には、地域の重要人物や人道支援団体の訪問者、地域で活動する地方議会のメンバーらが訪れ、プロジェクトの内容や地域における発展的役割を紹介しました。また、男女問わず青少年が収入を得るためのスキルを学ぶことで、今後就労できる職業の幅が広がることについても議論を行いました。さらには発表会の内容を踏まえて地域の青少年の状況を改善し、能力開発プロジェクトの中で少年少女を支援し、社会的・教育的状況を改善するためのアイデアや建設的な意見も多く出され、非常に有意義な時間となりました。
トレーニングの見直しや振り返りのため、すべての受益者とその家族も見直しのワークに参加し、これらのコースの重要性と、少年少女どちらもがスキル習得することのメリットについて学びました。
この発表会では、町の人々に対して子どもたちがこれらのコースに参加することの意義やメリットについて広報するいい機会にもなり、教育の機会を失った若者たちがより豊かな将来を手にするために、教育が非常に重要になることを改めて周知することができました。
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喜びに包まれた修了式
9月末には、事業を実施した町で、約4ヶ月半の職業訓練と初等教育コースを卒業する若者たちのために修了式を行い、女性・男性それぞれの若者の門出を祝福しました。
初等教育部門から女性60名、ヘアメイク部門から女性10名、コンピューター技能、携帯修理技能部門から男性10名、シリアのお菓子とパン作り部門から女性10名、電気機器技術部門から男性10名、電気機器修理技術から男性10名 、計110名が式典に出席しました。
修了式では卒業生を表彰し、参加証書と合格証書を授与したほか、部門ごとに必要となる器具や機材が入った「スタートアップ・キット」も贈られ、彼らがすぐに技術を活かして働ける環境づくりも手伝っています。
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実際に卒業生たちからは「コースで得た知識やスキル、そしてこのキットのおかげですぐに働くことができます!日本の支援のおかげです、どうもありがとう。」と喜びの声が上がっています。1人でも多くのシリアの若者が学び、明るい未来に向けて進むことができますように!
修了生の声 レヤールさん(仮名)
最後に、ヘアメイクの職業訓練をうけたレヤールさん(仮名)の声をご紹介します。訓練を修了した後、レヤールさんは小さな女性用美容院を開業し、そこから自分の収入を得られるようになりました。レヤールさんはこう語ります。
「私はシリアに住む17歳です。私やこの地域の多くの少女たちは、世界の他の少女たちのような教育を受けることができませんでした。私が6歳のとき、本来なら学校に行って勉強ができたはずなのに、戦争が始まったせいで教育を受けられなかったのです。悔しいし、勉強したかったなと今でも思います。その時から私の夢は、この社会で何かの役割を持つことでした。
勉強したい、何かを学びたい。ずっとそう思って機会を探していたら、今回のIVYのプロジェクトに参加できることになりました。ヘアメイクのコースに参加し、ヘアメイクをするための技術や、お店の経営方法など多くのことを学び、今では一人で仕事ができる美容師になりました。
IVYはコースを修了した際にヘアケア(カット、スタイリング、染色)のための器具が入ったスタートアップ・キットを贈ってくれ、叔父も起業を手伝ってくれたのでこのヘアサロンを立ち上げることができました。今私は、家族を養うために必要な第一歩を踏み出すことができたと感じています。
これからお店を経営していく中で、大変なことは色々あると思います。それでも、このプロジェクトで学んだこと、一緒に勉強した仲間との絆を大切にして、家族のために働きたいです。」
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