活動概要
『らんぼうものめ』は、KAATキッズ・プログラムの作品のひとつで、来場者には親子連れをはじめ、お子さまのお客様が多く来場されました。
これまでと同様、ヒアリングループの設置をはじめ、マンガの擬音・擬態語風に描写した字幕を楽しむポータブル字幕タブレットや上演台本の貸出し、受付での手話・筆談対応といったきこえない・きこえにくい方にご利用いただける鑑賞サポートを準備しました。ほかにも、今回は初めての試みとして、強い音(例えば雷鳴など)が苦手な方が安心して観劇できるよう、音を和らげる効果のあるイヤーマフ、耳栓をご用意しました。また、どの席でもヒアリングループと同じ音声補助ができるネックループの貸出しも行いました。
イヤーマフは、想定していた以上に需要が多く、どの回でも準備した分がほぼすべて貸出しとなりました。小さいお子さまも多かったので、劇場内での大きな音に少し不安を感じている親御さんがお守り代わりに借りていく様子も見受けられました。大人のお客様で借りていかれた方もいらっしゃったことから、劇場側が考えている以上に音に敏感な方が多くいらっしゃることもわかり、鑑賞サポートのひとつとして継続して取り組んでまいります。(写真1)
ネックループは、ヒアリングループと同じ原理(ループ状の電線に音の電流を流し、磁界として空中に出した音の信号を、補聴器や人工内耳で「音声」として感知させる仕組み)を簡易に、携帯できる形の機器にしたものです。ループ状の電線、音の信号を受け取るための受信機、イヤホンがセットになっています。ループと受信機の配置や距離の取り方など、扱いがやや難しいのですが、きこえにくい方がお好きな席で鑑賞できるメリットは大きいと考え、今回初めて鑑賞サポートとしてご用意しました。おひとりのお客様からご希望があったため、使い方を詳細にご説明したうえでお使いいただきましたが、ノイズが多くかえって聞きづらいとのご意見をいただきました。
お客様をお迎えする立場として、どのような鑑賞サポートが必要なのか、当事者や支援者の方にお話を聞いたり、先進的な取組を参考にしたりしながら事前によく検討して実施しています。それでも、実際に実施してみると、想定していなかったところに需要があったり、効果的なサポートだと思っていたことが逆に鑑賞を妨げてしまったりといったことが起こります。あらゆる方に劇場にお越しいただいて、舞台を楽しんでいただけるよう、これまで以上に、丁寧にお客様の声に耳を傾け、寄り添う対応ができるよう取り組んでまいります。
活動実績
KAAT神奈川芸術劇場キッズ・プログラム2024『らんぼうものめ』(作・演出:加藤拓也)
公演日程:2024年7月20日(土)~7月28日(日)
会場:大スタジオ
鑑賞サポート実施公演:7月27日(土)11:00/15:00 、28日(日)14:00
27日:のべ6名(字幕タブレットご利用4名、ヒアリングループご利用1名、ネックループご利用1名)
28日:のべ5名(字幕タブレットご利用3名、ヒアリングループご利用2名)
イヤーマフ、耳栓は公演期間中の全11公演で貸出しを行い、のべ32名のご利用がありました。
鑑賞サポートご利用の方のアンケートから
・字幕のフォントがよく工夫されていてよかった
・字幕スタンドが向きを調整できたので見やすかった。
・舞台説明に字幕フォントを展示していてよかった。
・(ネックループについて)ノイズが多く、かえって聞きづらかったので、結局使わなかった。