気良歌舞伎(けらかぶき)とは
地芝居(じしばい)とは、アマチュアの人々が行う歌舞伎のことを指し、岐阜県では地歌舞伎とも呼ばれます。
映画やテレビなどの娯楽がなかった時代、お祭りなどの余興として地域の住民が自分たちで楽しむために、歌舞伎を演じていたりしていたのです。
岐阜県は今でも地芝居(地歌舞伎)が盛んで、30以上の団体が活動を行っています。
気良歌舞伎(けらかぶき)もその団体のひとつで、岐阜県郡上市明宝気良に住む20代から40代までの約30名で構成されています。
「地域を盛り上げたい」との思いから、平成17年、途絶えていた地芝居(地歌舞伎)を17年ぶりに復活させ、以来16年間9月の気良白山神社祭礼の日に公演を行っています。
また、現在、郡上市文化財である明宝歴史民俗資料館(旧明方小学校)の木造講堂に自分たちの手で仮設舞台を設置するとともに、明宝歴史民俗資料館に収蔵されている地芝居関連品の展示、地芝居体験ツアーなどを行い、「歌舞伎」を通じた地域活性化に取り組んでいます。
昨年の「おうちで歌舞伎!地芝居映像配信プロジェクト」
岐阜県郡上市では全国的にも有名な「郡上おどり」をはじめ、毎年、数多くの祭礼、地域イベントが行われていましたが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止のためほとんどが中止に追い込まれてしまいました。
そして、令和2年9月に開催を予定していた気良歌舞伎公演も会場内における感染リスクが避けられないことから中止を決定せざるを得ませんでした。
地域住民にとって大きな楽しみであった地域イベントが中止となることで地域全体の活力が失われつつありました。さらに地域の伝統芸能・民俗芸能にとっては存亡の危機に直面したと言っても過言ではありません。いったん途絶えてしまった伝統芸能・民俗芸能を再び復活させることの困難さは想像以上のものです。舞台設営、スタッフ集め、資金の工面の方法などのノウハウや、演技技術の継承など一度中止してしまうと復活のハードルが高くなるということを、私たち気良歌舞伎自身が16年前の復活の時に嫌というほど痛感していました。
このまま自分たちは“公演中止”という事実にただ流されて何もしなくて良いのか?
いや、気良歌舞伎を復活させた諸先輩方の「歌舞伎で地域を笑顔に」という思いを、今こそ自分たちが受け継いで行動する時なのではないのか。制約があるからこそ、生まれる発想、モチベーション、絆がきっとある。今こそ、ピンチをチャンスに!
そこで気良歌舞伎が立ち上げたのが「おうちで歌舞伎!地芝居映像配信プロジェクト」でした。
何もかもが初めての取り組みで右往左往しながらも、地元のみならず、全国各地から力強いご支援をいただき、無事に事前収録を終え、令和2年9月19日の気良白山神社祭礼日に地元ケーブルテレビおよびYouTubeにて映像配信をすることができました。
このプロジェクトでは映像配信だからこそのメリットを強く感じました。
気良歌舞伎メンバー達は自宅でゆっくりと歌舞伎を観ながら、家族との団らんを楽しむことができました。
例年、会場にまで足を運べない地元の人にも観てもらうことができる。中には寝たきりのおじいちゃんも、孫の役者姿を見て楽しんでもらえました。
そして、YouTubeでの配信では、これまで気良歌舞伎を観たことがなかった地元以外の多くの方々に気良歌舞伎を知っていただく機会となりました。
家族の絆、地域の絆、そして全国の方々との新しい絆を感じるプロジェクトとなったのです。
【地芝居で通し上演に挑戦!】「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」映像配信プロジェクト
令和3年7月現在、いまだ新型コロナウイルスの脅威は続いていることから、自治会とも協議の結果、9月の祭礼公演については観客を入れることは困難との結論に至り、昨年同様の映像配信公演の開催を決定いたしました。
しかし、常に挑戦を続けてきた気良歌舞伎です。”やるのであれば昨年を上回るものに挑戦したい!””応援してくださる皆さんに、進化した気良歌舞伎を見せる!”という想いのもと、
【地芝居で通し上演に挑戦!】「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」映像配信プロジェクト
を立ち上げました。
【プロジェクト概要】
・「仮名手本忠臣蔵三段目・九段目」(事前収録)をYouTubeおよび地元ケーブルテレビにて配信・放映する。
【配信・放映日(予定)】
赤穂浪士討ち入りの日である12月14日をクライマックスに四夜連続で配信・放映いたします!
令和3年12月11日(土)19時~ 仮名手本忠臣蔵三段目「門前進物/松の間刃傷」
令和3年12月12日(日)19時~ 仮名手本忠臣蔵五段目「山崎街道鉄砲渡し/二つ玉」
同六段目「与市兵衛内勘平腹切」
令和3年12月13日(月)19時~ 仮名手本忠臣蔵七段目「祇園一力茶屋」
令和3年12月14日(火)19時~ 仮名手本忠臣蔵九段目「山科閑居」
※三段目・九段目は今回のプロジェクトにて新たに収録したものを配信・放映いたします。
※五段目・六段目は令和3年6月の地歌舞伎勢揃い公演に、七段目は平成26年の祭礼公演で収録したものを再配信・再放映いたします。
【目的】
・YouTube配信およびケーブルテレビでの放映により、例年、公演を楽しみにしてくださっている地域の方に自宅で歌舞伎を楽しんでもらう。
・YouTubeでの配信により、これまで地芝居を観たことがない全国の方々にも、地芝居(地歌舞伎)の魅力を知っていただく。また、郡上市や明宝地域に興味を持ってもらうきっかけとする。
・「仮名手本忠臣蔵五段目・六段目・七段目(気良歌舞伎・高雄歌舞伎)」(令和3年6月27日清流の国ぎふ地歌舞伎勢揃い公演)と併せて見ていただくことによって仮名手本忠臣蔵の通し上演の雰囲気を味わっていただく。
・歌舞伎ソムリエのおくだ健太郎さんの舞台解説をしていただくことで、視聴者の方に物語を深く知っていただき、歌舞伎の魅力をじっくり、たっぷり味わっていただく。
・今回の収録場所である郡上市重要文化財「旧明方小学校講堂」の芝居小屋化に向けたトライアル公演とする。
【寄付金目標額】
〇ファーストゴール:50万円
(資金使途:太夫・三味線・下座演奏費用、大道具・小道具制作費用、照明・音響費用、その他撮影にかかる費用など)
〇ネクストゴール:100万円
(資金使途:郡上市重要文化財「旧明方小学校」の芝居小屋化に向けた整備費用)
※特典DVD送付の費用の関係上、寄付金の受付は3,000円以上とさせていただきます。
今回の挑戦の意義
『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』は歌舞伎を代表する演目で、『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』・『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』とともに「義太夫狂言」の3大名作の1つとされています。
この演目は、江戸時代の赤穂浪士の討ち入りを題材としており、史実の吉良上野介(きらこうづけのすけ)は高師直(こうのもろのう)、浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)は塩冶判官(えんやはんがん)となり、大石内蔵助(おおいしくらのすけ)は大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)という役名で登場します。
物語は全11段構成で、師直による判官の妻・顔世御前(かおよごぜん)への横恋慕からはじまり、判官が殿中で刃傷事件をおこして切腹に至り、お家断絶のため浪人となった由良之助以下の四十七士が苦心のすえ討入りを遂げるまでを描いています。
特に「お軽」と「勘平」の物語を描いた五段目、六段目や、歌舞伎の演目の中でもとりわけ華やかで「大星由良之助」の心情が掴める七段目は大歌舞伎でも上演回数が多い人気の演目です。
地芝居でも五段目、六段目、七段目はよく演じられる演目ですが、それ以外の段は上演回数がぐっと少なくなります。その理由は複数あると思いますが、単独の上演ではストーリーが掴みづらいこと、また、特に「九段目」は主役級の役者を複数揃える必要のある難しい演目であることが大きな理由だと思います。
今年の6月27日(日)「清流の国ぎふ地歌舞伎勢揃い公演2020」では、気良歌舞伎がお世話になっている同じ郡上市の高雄歌舞伎保存会との合同公演ということで、仮名手本忠臣蔵「五段目」「六段目」「七段目」を通して上演し、ぎふ清流文化プラザのYouTubeチャンネルにおいて配信されました。三幕を続けて見ることで、物語のつながりが理解でき、歌舞伎ソムリエのおくだ健太郎さんの解説もあって、観客の皆さまには深く物語として地芝居を楽しんでいただけたと感じています。
歌舞伎において全段もしくは物語がつながるよう複数の段を上演することを「通し上演」と呼びますが、今回、気良歌舞伎で仮名手本忠臣蔵「三段目」「九段目」を新たに収録することによって、物語が大きく動きはじめた「三段目」から討ち入り直前となる「九段目」を通しで映像配信することが可能となります。
また、「三段目」と「九段目」を見ることで、仮名手本忠臣蔵の重要なキーパーソンである「加古川本蔵」の家族の悲劇が浮かびあがり、視聴者が忠臣蔵の物語をさらに深く味わうこともできるのです。
同じ年に仮名手本忠臣蔵を通しで上演する地芝居団体というのは、全国でもなかなかありません。特に「九段目」は主役級の役者が何人も必要であることから、地芝居では滅多に上演されることない難しい演目といえ、その2つの意味において、今回はかなりの挑戦ということになります。
コロナ禍だからこそ、高い目標に向かってメンバーが一致団結して取り組むことに価値があり、また、それは地域の方や、応援してくださる方々への恩返しにもなると考えています。
”コロナだから、地方だからといって諦めるのではなく、常に挑戦しつづける気良歌舞伎の姿を皆さんに見ていただきたい!”
これが私たちの強い想いです。
さらなる夢に向かって! 自分たちの手で芝居小屋を!
今年のプロジェクトは次の大きな夢に向けてのファーストステップでもあります。その夢というのは、今回の収録場所でもある「旧明方小学校講堂」(郡上市重要文化財)の芝居小屋化です。
岐阜県内の他団体の多くが芝居小屋を拠点に活動している一方で、私たち気良歌舞伎は芝居小屋を持っていません。そのため、気良歌舞伎復活以降、毎年9月の公演は隣の地区にある公共施設に仮設舞台を設置して上演を行ってきました。
一方、気良歌舞伎の活動が徐々に広まっていく中で、地域の方から「旧学校の木造講堂を気良歌舞伎で活用してもらえないか」と相談をいただきました。
この木造講堂は気良地区内にある廃校となった校舎(鉄筋の校舎が新築されたため)に隣接するものです。校舎そのものは「明宝歴史民俗資料館」として生活用具など約47,000点、うち国指定文化財約3500点を収蔵・展示をしていますが、当時、木造講堂については、利用されていなかったのです。
そこで、私たち気良歌舞伎は「明宝歴史民俗資料館」に収蔵されている地芝居の衣装・化粧・小道具等を当該講堂にて展示する「気良歌舞伎展」を企画・開催、さらに、その後、手作りの仮設舞台を設置し、気良歌舞伎の稽古場として利用できるまで整備をしてきました。
昨年の「おうちで歌舞伎!地芝居映像配信プロジェクト」においては、当該講堂にて収録を行うなど、芝居小屋化への一定の手ごたえは得ましたが、依然として観客席の整備、照明・音響の機材不足、楽屋スペースの確保などの課題が残っています。
今年のプロジェクトを単年の映像配信に終わらせるのではなく、この次の夢を叶えるための足場づくりとすべく、芝居小屋化のための整備を加速させたいと考えています。
”来年(令和4年)には芝居小屋を完成させ、お客様を呼んででこけら落とし公演を行いたい!”
これが私たち気良歌舞伎メンバーのネクストゴールなのです。
もし、ファーストゴールを上回れるご支援を賜ることができた場合は、芝居小屋整備のために活用したいと考えております。
お礼について
これまでも気良歌舞伎は地域住民の方をはじめ、皆さまからのご寄付によって公演を行ってきました。
今回のプロジェクトも皆さまからのご寄付によって実現が可能となるものです。わたくしどもの思い、活動に賛同していただける方は、ぜひともご寄付いただければと思います。
資金面での制約があり、なかなか十分なお礼をお返しすることは難しいですが、ご寄付いただいた方には以下の特典をつけさせていただきます。
【特典1】舞台映像DVD郵送
・舞台映像を収録したDVDをご自宅へ郵送させていただきます。(発送は12月以降となる予定です)
※本特典を希望される方は必ず住所を入力ください。
【特典2】舞台映像エンディングロールでのお名前のクレジット表示
・舞台映像のエンディングロールにてご寄付いただいた方のお名前を表示させていただきます。
【特典3】地芝居(地歌舞伎)無料体験(希望者のみ)
・ご希望される方には気良歌舞伎メンバーによる地芝居(地歌舞伎)の解説や、簡単な振付指導など地芝居(地歌舞伎)を体験していただくことも可能です。時間・内容等は事前に相談をさせていただければと思います。
【特典4】次回公演の案内状送付
・次回公演開催の際には、事前に案内状を送付させていただきます。
皆様からのご支援をいただきながら、このプロジェクトをぜひとも進めたく考えておりますので、ご協力いただければ幸いです。
令和3年7月吉日 気良歌舞伎座長 佐藤真哉