活動・団体の紹介
キッズファームin京都大原は、京都市左京区大原地区を拠点に、小学生までの子どもたちとその家族に対して農業体験と食育体験を提供しています。大原・三千院の裾野に広がる段々畑の一角で、農薬や化学肥料は使わず自然の恵みをたっぷり受けながら野菜を育てています。
畑では鶏糞を使った土づくりから種まき、追肥や間引きなどのお世話を経て収穫に至るまで子ども達と一緒に行っています。栽培する野菜は菜の花、じゃがいも、玉ねぎ、にんにく、スナップエンドウ、万願寺唐辛子、きゅうり、さつまいも、大根、人参、白菜、春菊など季節ごとに約20種類の野菜を栽培しています。
食育体験では畑の野菜を使ったお料理体験はもちろんのこと、春にはよもぎ団子作り、夏には地域の特産品であるしば漬け作り、秋はおいもほり、冬はお餅つきやみそ仕込みといった具合に四季折々の味覚を楽しむ取り組みも行っています。このほかにもうどん・そば打ち体験や、「命をいただく」ことをテーマに鶏の解体やジビエワークショップ、プロの料理人さんによるお出汁の試飲や鮎の串差し体験など多岐にわたる食育体験を展開しています。
活動の背景、社会課題について
活動のきっかけはまだ幼かった我が子(キッズファーム代表の子ども)が蚊におびえて泣く様子を目の当たりにしたことでした。山に囲まれた自然豊かな地域で育った私には考えられないことでした。また我が子は気持ちがとても繊細で、自分の気持ちがうまく表現できず、しょっちゅう癇癪を起こしていました。テレビや洗濯機、掃除機などの音にも敏感で気持ちが混乱してしまうため、どうしてあげたら良いものか、頭を抱えてしまうことも少なくありませんでした。
時を同じくして社会人入学した大学院では偶然にも社会実験として子ども向けの食農体験の運営がなされており、当時の私には希望の光のように思えたことを鮮明に覚えています。運よくその運営に携わらせていただくことになり、手ごたえを感じ始めたころ、諸事情のためこの社会実験は終了することになりました。
せっかくならこの取り組みを継続したいー。繊細な我が子にも豊かな里山でのびのび過ごさせてあげたいー。そしてそれはもしかすると我が子のみならず、子育て中の家庭でも望まれていることかも知れないー。そんな思いを教授に相談したところ深く共感と理解を示して下さり、それならばと畑の場所と道具を譲り受け、更には『キッズファーム』という名前まで授かり、キッズファームが誕生することになりました。2015年4月のことです。
里山に出入りするようになった我が子といえば、目の前に広がる無限の世界におっかなびっくり。それでも神経質でありつつ、やんちゃな一面もあった我が子は徐々に自分の世界を広げていきました。そして小学校低学年になったある日、蚊ですら怖がっていた子が同世代の子と一緒に近くの田んぼにいた「アカハライモリ」を捕まえてきたのです。しかもその数、無数!少なくとも50~100匹は居たように思います。アカハライモリは読んで字の如く、お腹は鮮やかなオレンジ色をしていますが、背中は真っ黒。つまり色のギャップが大きく、見た目はお世辞にも可愛いとは言い難い、水辺にすむイモリです。子ども達は近くにあった一輪車を拝借し、ここぞとばかりに捕まえては集めていたようでした。周囲の大人達はもぞもぞとうごめくアカハライモリに大きな悲鳴をあげましたが、満面の笑みの2人を見た瞬間、こんな風に子ども達は成長していくのだなと目から鱗が落ちる思いでした。
そして、親として子育てがうまく行かないように感じ、苦しく感じていた時間は、子どもにとっては自分で学ぶ大切な時間だったのだと理解しました。子どもは大人と比べて経験値が圧倒的に少なく、学んでいくためにはその子なりのペースで時間と体験を積むことが必要だったのです。この出来事はかれこれ10年近く前の話になりますが、今でも子ども達を見守る上でとても大切な指針となっています。
他方、子ども達の体験活動の意義についてこれまで様々な研究がなされています。令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究(文部科学省)によると子どもの頃に体験活動の機会に恵まれていると、その後の成長に良い影響がみられることが分かりました。例えば小学生のころ体験活動(自然体験や社会体験、文化的体験)や読書やお手伝いを多くしている子ども達は、家庭の経済状況などに左右されることなく、その後、高校生になった時も自尊感情や外向性、精神的な回復力(新しいことに興味を持つ、自分の感情を調整する、将来について前向き等)が高いことが分かっています。つまり、子どもの頃の様々な「体験」の積み重ねは未来社会を担う子ども達の健やかな成長を確かなものにするために必要な要素であることが明らかになっています。
こうしたことからもキッズファームでは、子ども達にとって自然に触れる機会がもっと当たり前になればと願い、活動に取り組んでいます。
活動内容の詳細、実績について
キッズファームは2015年4月から活動をスタートしました。最初の数年は思うように参加者数が伸びず、細々とした運営が続いていました。しかし、有難いことに年々参加希望者数は増え、今では毎回のようにキャンセル待ちがあり、畑を広げたり開催回数を増やしたりしながら、出来るだけご希望いただいているみなさんの受け皿を拡大できるよう工夫を重ねているところです。
取り組みにおいては子ども達自身が「楽しかった!」「自分で出来た!」と思えることを重視しており、運営では子ども達が理解しやすい方法で伝える工夫をしています。例えば畑仕事の中で、これまで子ども達にとって難易度が高かった大根の間引き作業では、その作業の必要性と具体的な方法を、イラストを多用したスライドで説明し、スムーズに作業ができるようになりました。「命をいただく」という難しいテーマの取り組みでは、動植物の命を頂くということは人間が食べて自分の命に変えるということを、わかりやすく解説しています。特にニワトリの解体では元気に生きているニワトリから「いのち」をいただきます。「いのち」をいただく過程でニワトリは流血もするため、そうしたことも予め伝えたうえで、怖くなったら見なくても済むよう安全地帯を設けて実施しています。
活動の中で特に意識しているところは、子ども達が、失敗しても大丈夫、ありのままで大丈夫!と思える場を整えることです。事故や怪我が無いよう注意を払うことは当然ですが、子ども達が出来るだけ伸び伸び過ごせる空間をつくるため、例えば食育活動時は室内にブルーシートを敷いてこぼしてしまっても大丈夫!また活動の中で使用するペンは水性のものとし、つい机や服に書いてしまっても大丈夫!といった具合です。畑に出て野菜より虫に目を輝かせていることもありますが、それもウエルカム!子ども達が安心して失敗できる場は言い換えれば子ども達にとって自由に挑戦できる場でもあり、「ちょっとやってみようかな?」という気持ちを後押しできればと思っています。
最近の傾向では参加者の6~7割程度がリピーターであり、経験の積み重ねにより子ども達に変化がみられるようになってきています。畑の土が『汚い』と感じていたあるお子は、回数を重ねるごとに土に触れられるようになり、今や収穫が楽しくて仕方がない!とまで思えるようになりました。これまで野菜嫌いで食べようとしなかった子が、自分でお世話や収穫した野菜なら喜んで食べるようになったこともあります。畑で捕まえた雨蛙を家に持ち帰り、毎日エサを与えてお世話を続けた結果、半年たっても元気に育っていると話してくれた子もいます。目の前の生き物に目を輝かせ、愛でる様子はまさに生きた情操教育といえるのではないでしょうか。誰かに強制されたのではなく、自分の気持ちで「やってみようかな」と思えたこと、そしてやってみたら「できた」「楽しかった」と思えた経験の積み重ねはまさに子ども達の生きる力になると確信しています。
キッズファームの特長は、全てのプログラムは親子(家族)参加を前提としていることです。その理由は2つあります。
1つは、子ども達は自分で自分の食の選択ができないからです。いくら食べ物に興味関心を持ったとしても、家に帰った子ども達が自分で献立を考えてご飯を作ったり、もしくは食材を購入したりするのは難しく、そこはやはり大人の力が必要だからです。
2つ目に、こうした体験活動は子ども達のみならず、親にとっても貴重な学び直しの機会になると考えているからです。実際に畑に出ると『土に触れるの、幼稚園ぶりやわ!』と子ども達と一緒に夢中になっておられる親御さんの姿があったり、かつて日本の農村では日常だった保存食づくりに目をまぁるくしながら子ども達と一緒に楽しんでおられる姿があったりします。ほんの少し前の世代までは当たり前のようになされていた手仕事のある暮らしは今や、少し遠い存在になってしまっているようです。親御さんの中には“自分の田舎”と呼べる場所がないという人もあり、キッズファームを通じて大原地区を自分の田舎(=故郷)のように感じながら1年を通して順繰り学べる場があることの意義は大きいのではないかと考えています。
こうして親子一緒に取り組みを行うことで特筆すべきなのは子ども達のみならず、家族の暮らし方に変化が表れていることです。お出汁のワークショップの際、子ども達が「おいしい~」と顔をほころばせている姿を見て「家でもお出汁を引いてみようかな」という動機になったという親御さんがありました。子どもからのリクエストで自宅前に花壇を作り、家庭菜園を始められたご家族の声も届いています。忙しい日常のなかで、家族が一緒に同じ経験を積むことで「美味しかったね」「楽しかったね」と共感し、親子(家族)の絆が深まる一助になると考えています。
じゃがいもの収穫体験。大きいものが掘れると嬉しいね!
畑で育てた藍を使った藍染体験。出来上がりは千差万別でどれも素敵!
臼と杵を使ったお餅つき。毎年12月の恒例イベントです。
キッズファームでは2025年、活動10周年の節目を迎えるにあたって法人化するという決断をしました。法人化しても、過去10年の歩みの中で築いてきた基本路線や私たちが大切にしたい思いが変わることはありません。むしろ法人化することで「これからも頑張ります!」という私たちの所信を表明するものであります。法人化を実現することによって社会的信用を獲得し、これからも多くの子ども達とその親御さんのイノベイティブな体験活動の場として取り組みを行っていきたいと思っております。
これまで私たちの『親子に体験の場を』という思いに対して、参加して下さった子育て世代のみなさまをはじめ、地元の方々、近隣の農家さん、料理人さんや猟師さん、活動を応援してくださっている企業・団体・会社・個人のみなさま、無償・有償にかかわらず仲間として関わってくださっている多くのみなさんの温かいご理解とご協力がなければ、思いを紡ぎ、ここまで歩んでくることはできませんでした。もっと言えば、キッズファームの前身の、大学院での社会実験プロジェクトがなければ、今のような形を作り上げることは不可能でした。
これまでにいただいたご縁の大きさに、感謝しても感謝しきれませんが、これまでの深い感謝の気持ちを込めて、そしてこれからも頑張っていきたいという私たちの思いも乗せて、2025年秋ごろに法人設立を記念したイベントを企画しています。
法人設立記念イベントでは、これまで関わってくださった関係者のみなさまや現在子育て中のご家族はもとより、お子達の成長とともにご卒業されたご家族のみなさまともいわば同窓会のように、再び緩やかに繋がっていける場になればと願っています。またこれまでキッズファームの体験にお越しくださったことはないけれど関心を寄せてくださっている方々や活動をそっと見守ってくださっている方々にも私たちの想いを知っていただくきっかけになれば嬉しいです。お子達を見守る温かい”目”が世代を超えて社会に広がっていくことを願っています。
次の10年に向けて、引き続き『子ども達には体験の場を、大人達には学び直しの場を』という考えのもと、畑から食べるまでの”丸ごと”を体験できる場を運営していきます。畑や里山は子ども達にとって生きる力を獲得できる絶好の遊び場であり、学び場であると確信しています。健やかな子育ての場として、そこに関わるみんなで大切にしながら歩んでいきたいと思います。そして願わくば、活動を通じて大原を新しい自分の故郷のように感じる子育て世代が増え、地域の関係人口が増加する一助となれれば幸甚の至りです。
今回、初めてクラウドファンディングに挑戦します。頂いたお金は法人化の手続きのためにかかる諸経費と、その後の設立記念イベントの会場やゲストの招へい、広報などの運営資金として活用させていただきます。子ども達の”生きる力”の素となる豊かな体験の場を守り、育てていくためのしっかりとした”土台”を築いていく所存です。どうかみなさまの温かい応援をどうぞよろしくお願いいたします。
代表者メッセージ
今回、初めてクラウドファンディングに挑戦することになりました。キッズファームの活動に関心を寄せて下さり、誠にありがとうございます。私たちはこれからも子ども達には体験の場を、大人達には学び直しの場を提供していくため、10年の節目を機に法人化し、より強力な”チーム”として豊かな体験活動の場を運営していく所存です。その昔、蚊を怖がって泣いていた我が子は、いつの間にか野山を駆け回ることが大好きになり、畑では野菜の味見(!)を率先して行うような逞しい人に成長しました。子どもの頃の豊かな体験活動は必ずや人生の糧となり、困難な時代を生き抜く力になることを確信しています。ぜひ私たちの活動を応援していただけますと幸いです。どうかよろしくお願いいたします。 キッズファームin京都大原 代表 廣瀬昌代
寄付金の使い道について
●法人化のための書類作成および登記費用 20万円
●法人設立記念イベント運営費用 30万円(会場設営・広報など)
このプロジェクトは「ゆめ・まち クラウドファンディング」の認定プロジェクトです。
「ゆめ・まち クラウドファンディング」では、寄付決済手数料を阪急阪神ホールディングスが負担し、広報PR等を支援することで、社会課題の解決に取り組む市民団体の資金調達を応援します。阪急阪神ホールディングスは本プロジェクト等を通じて、ステークホルダーと協働しながら、持続可能な社会の実現に向けて地域社会の発展に貢献してまいります。
▽ゆめ・まち クラウドファンディング特設サイトはこちら
https://congrant.com/jp/corp/h...
金額10,000円 |
金額30,000円 |
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