雲ノ平トレイルクラブ

北アルプス・雲ノ平が目指す、新たな登山道管理に向けて

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雲ノ平トレイルクラブは、雲ノ平の登山道の整備・維持管理の活動を通じて、危機的な状況にある国立公園の管理体制に新たな可能性をもたらすとともに、環境危機の時代における社会と自然環境の、新しく創造的な関係を築くことを目的とした組織です。

「最後の秘境」雲ノ平

雲ノ平は北アルプスの最奥部、黒部源流域の標高2,600m付近に忽然と広がる溶岩台地です。
風にそよぐなだらかな草原の向こうには水晶岳が悠然と聳え立ち、黒部源流が流れる谷を隔てて三俣蓮華岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳、薬師岳、立山連峰などの名だたる山々が周囲を取り囲んでいます。また、草原に点在する池塘やハイマツ、火山岩がそこかしこで日本庭園のような独特な空間美を織りなし、雲ノ平の景色を特徴づけています。
かつては、人里からあまりにも離れた場所にあり、北アルプスの中でも最後までまとまった開拓の手が入らなかったことから“最後の秘境”と呼ばれました。

登山道整備を取り巻く課題

貴重な池塘の消失や、登山者の危険にもつながる木道の腐朽などの問題が進行する今、雲ノ平における生態系の保全、環境整備は、喫緊の課題です。
しかし現行の国立公園管理における制度面での障壁や、高山地帯という特殊な環境下で活動を行うことの困難さ、そして自然に対する深い理解を持ったエキスパートの不在と、そこから端を発する各方面からの課題が山積する中、大きな行き詰まりを見せているのが、登山道整備の現場の現状です。

構造的課題

登山道維持管理に関する問題は、日本で自然環境(環境保全)をめぐる世論が弱かったため、大規模な登山人口を擁しながらも、国立公園の自然環境を保全するための公的なシステムが成熟しなかったことが背景にあります。
国立公園に人材や予算、実践的な制度が備わらず、山小屋などの現場の小規模組織が登山道の維持管理などの役割を担う形がとられてきました。

土壌侵食のメカニズム

寒冷な気候や生命活動の弱さなど、高山特有の厳しい環境圧により、数万年の時間をかけて30センチに満たないところもあるほどに、雲ノ平における「表土」は大切な存在です。脆弱な場所に登山者の踏み跡が生じ、植生が失われると、雨による流水や雪解け、霜、乾燥、またさらなる登山者の踏圧が加わるなどの要因によって、貴重な表土の流失が引き起こされるとともに、浸食・裸地化が進行。一部では池塘がまるごと消失してしまうなど、周辺の生態系や景観の不可逆的な破壊につながることも稀ではありません。

旧来の登山道の問題点

現行の国立公園における登山道の維持管理体制では、責任や権限の所在が明確でなく、また管理のあり方に関する評価基準も確立されていません。山小屋や山岳会など、個人の手による整備作業には限界があり、自然環境に精通したエキスパートの不在が埋めがたい空白となっています。また従来の施工では、景観美や生態系を損なうばかりか、登山者の危険につながる結果を生んでしまっていることも少なくありません。まずは足元にある登山道の施工や発想のどこに問題があるかを認識し、共有していかなければなりません。

持続可能な未来を目指す、私たちの活動

雲ノ平トレイルクラブは、山小屋と専門家、そしてボランティアを志願した多様なキャリアを持ったメンバーが集まり、立ち上げられました。
生態系や景観美に調和した、「これから」の登山道のあり方と、その維持管理を可能とする、継続的な体制づくりのひとつのロールモデルとなるべく、現場での活動、および情報発信を行っていきます。

雲ノ平トレイルクラブについて

自然と共生する社会の実現に向けて

雲ノ平トレイルクラブの最初のステップとして2021年と2022年に行われた登山道整備ボランティアプログラムでは、祖父岳と祖母岳を中心に、石積み、植生復元、木道の修繕などの整備活動が行われました。
今後、実践と学習を重ねてスタッフを育成していくとともに、さらなる整備規模の拡大を目指します。

造園的な工法

「土木工事ではなく、造園的な発想で」が雲ノ平トレイルクラブの主要なテーマのひとつです。登山道の修復をする際には、水の流れや植生の状況など周囲の自然を注意深く観察し、道ができる以前の景観を思い描きながら施工に取り組んでいます。こうすることで、生態系保全と持続的な登山道利用の高いレベルでの両立を目指します。

景観・生態系の復元

雲ノ平山荘が東京農業大学との連携の中で長年に渡り行い、着実に成果を築きあげてきた植生復元の活動を継承。
高山という厳しい自然環境への理解を深めながら、雄大な山々をバックに作業を行うことで、「景色をつくる」という、登山道整備に携わることの喜びを感じることができます。

生まれ変わる祖母岳(アルプス庭園)の展望デッキ

祖母岳(アルプス庭園)のベンチが老朽化し崩壊している問題を改善するため、木道からそのまま連続する形で利用できるデッキに改修しました。
見晴らしが良く利用者がゆったり憩える環境になり、祖母岳本来の穏やかな雰囲気を取り戻すことができました。

老朽化した木道の修繕

雲ノ平山荘を中心に、全長7kmに渡る木道。一般に10年が交換のめどと言われる中、これらが敷設されたのは30年も前のことで、見過ごせない腐朽・崩壊が進んでいます。
雲ノ平トレイルクラブは、木道の修繕と再配置を、植生復元と併せて行うことで、登山者の安全確保と周辺の貴重な環境の保全とを両立させる「新しい道」をつくります。

寄付金の使い道について

雲ノ平トレイルクラブは、皆さまからお預かりした協力金を大切に活用し、整備・保全に必要となる資機材の購入や人材育成、および活動の進捗状況についての情報発信を進めていきます。

植生復元のモニタリングや、作業のほとんどを人力のみに頼る木道の張り替えなど、雲ノ平の自然環境と向き合い、登山道整備を行っていくためには、中・長期の視点を持つことが欠かせません。
そのためにも、私たちの活動へご理解をいただく、多くの皆さまの継続的なご支援を必要としております。
私たちとともに、未来へつながる「美しい道」をつくっていきませんか。

団体情報
このページは寄付・ 会費決済サービス
コングラント」で作成されています。
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