入所理由のトップは虐待・育児放棄
『 約16万件 』
これは2018年に全国の児童相談所に寄せられた児童虐待相談件数です。1990(平成12)年には約1,000件だった虐待相談件数がこの20年間で20倍以上に増加しています。児童虐待の防止、被虐待児童に対する保護は切迫した社会課題です。
児童養護施設に入所する子どもたちの理由のトップも虐待・育児放棄です。他にも経済的困窮や離婚、親の精神疾患など、様々な理由があります。子どもたちの多くが心に傷を抱えたり、周りに頼れる大人の居ない状態で施設にやってきます。
行き場のない怒りと孤独を変えたのは未来への希望
私たち共生会は、このような心の傷を抱えた子どもたちを「できる限り良好な家庭的環境」で迎えたいと考えました。かつて大人数収容の施設が主流だったころから、全国に先駆けて施設の小規模化、地域分散化を進め、一人一人の子どもたちに寄り添えるホームの運営を心掛けています。
かつてこんな子どもがいました。高校進学時に児童養護施設「希望の家」に入所してきたとおる君(仮名)は、入所後もしばらくの間、職員に対する暴力・暴言が収まりませんでした。とおる君となかなか心が通わないことの辛さに、当時の職員たちは疲弊をしていましたが、それでも日々丁寧な関わりを諦めることはありませんでした。最もつらい、やりきれない想いを抱えているのはとおる君だと理解していたからです。
しかし、高校生活の終盤に差し掛かる頃、とおる君は同じ「希望の家」出身の子どもたちが、多く進学をしていることを知り、施設を出た後の自分の未来について考え始めました。社会人となった卒園生が、高校卒業後の進路や自分の仕事の話をしてくれる合宿に参加したとおる君は大きな影響をうけ、勉強を頑張りはじめました。家族と離れて暮らす孤独や満たされない思いから、自分の未来へと視点を移してくれたのは、かつて同じ境遇にありながらも努力し、立派な社会人となって仕事に誠実に取り組んでいる先輩たちの姿でした。自分も頑張れば、希望の道を進むことができるのかもしれない、と思わせてくれたのです。
18歳になったら社会に一人、放り出される
施設の中では地域の方々や職員から見守られてきた子どもたちにも、巣立ちの時がやってきます。児童養護施設では、18歳になると施設を退所しなくてはいけません。普通なら、その年齢の若者たちは進学をしても就職をしても、困ったとき辛い時に助けを求められる保護者がいて必要なサポートを受けられるでしょう。ですが、児童養護施設の卒園生たちは誰からの支援もなく、不安なまま社会に出ていかなければいけません。
大きな家族のように暮らしてきた施設を一人離れて、孤独感にさいなまれたり新しい環境にストレスを感じる子も少なくありません。
例えばこんな卒園生がいました。
幼児期から高校卒業まで「希望の家」で育ったさおりさん(仮名)。高校卒業後は大学進学したのですが、新しい環境に馴染むことができず生活習慣も乱れてしまい、不本意ながら中退をしてしまいました。
学校にはもう行けない、就職しようにもどこに相談していいかわからない。これから生活をどうしたらいいのか。さおりさんのように、卒園後、様々な岐路で路頭に迷う卒園生たちは後を絶ちませんでした。
彼らには、卒園後も新しい生活を支える「自立支援」が必要だったのです。
社会に出る為の準備の長さは人それぞれ。自立までの期間をサポート。
共生会は、卒園生のためのシェアハウス「自立訓練棟」を作り、自立までの道のりに必要な生活のサポートをしています。さおりさんもこのシェアハウスに入居し、生活を立て直しながら、自分が学びたいこと、将来やりたいことをゆっくり考え、福祉の専門学校に再進学しました。就職後は独り立ちし、現在では20代半ばとなって特別養護老人ホームの中堅の介護職員として頑張っています。
勤務先の老人ホームの施設長からは、彼女の声かけや笑顔がお年寄りを癒してくれると評価が高く、老人ホームの職員紹介の案内欄にも推薦されたそうです。
安心して暮らせる家と、悩みに寄り添う大人が居れば、若者たちは何度でも立ち直ることができる。そう再認識させてくれる出来事でした。
あなたからの支援が、子どもたちの未来を照らします
高校時代荒れていたとおる君もその後勉強に本腰を入れ、無事に大学に進学することができました。現在は「自立訓練棟」で生活をし、アルバイトをしながら、憧れの大学生活を満喫しています。また、先輩の卒園生から仕事のこと、社会人生活のことを聞きながらまた次の進路を考えているところです。彼がどんな未来を描き、どのような職に就くのか、職員一同楽しみにしています。
とおる君やさおりさんのように、悩んでも、つまづいても、乗り越える力を身につけて生き抜いてほしい。より多くの子どもたちに寄り添える温かいサポートを届けたい。そのためには、皆様からのご支援が必要です。
この社会に、自分を応援をしてくれている人がいる。そのことが、子どもたちにとって何よりの支えになります。
ぜひ、子どもたちの自立までの道のりを応援するマンスリーサポーターになってください。
■支援の使い道
共生会の運営する児童養護施設、および自立支援事業での子どもたちの養育、サポートの費用に使わせていただきます。
●例えば・・・
*1カ月1,000円のマンスリーサポーターが4人集まると
→子ども1人に私服を年二回(夏・冬)買うことができます。
特に女の子たちは自分で服を選んで買うことが一番の楽しみです。
*1カ月3,000円のマンスリーサポーターが4人集まると
→中高校生1人が1年間英会話教室に通う月謝相当になります。
中高生にとって英語力はその後の進路選択にとても重要です。英語で話すって楽しい!を早くに体験することが学習意欲への近道になります。
*1カ月10,000円のマンスリーサポーターが4人集まると
→自立支援棟での生活に必要な家電4点※1施設につき(テレビ・冷蔵庫・洗濯機・乾燥機)を新規購入することができます。
卒園時に、生活に必要な生活必需品を全部一気に買い揃えるのは大変です。自立支援棟では共有の家具家電を用意し、経済的負担を最小限にして新しい学校や職場に集中できるようにサポートを行います。