増え続けるこども食堂
2012年に、最初にこども食堂という暖簾がかかってから、全国に「こども食堂」が広がっています。その数は、2023年12月現在の速報値で9,131箇所と、全国の中学校の数の約1万箇所に迫る勢いです。
【図】こども食堂の箇所数の推移(2023年度むすびえ調べ)
「こども食堂」とは
多くのこども食堂は、子どもだけでなく、その親や地域の高齢者などさまざまな人が集う多世代が交流する地域の居場所として全国に広がっています。
<こども食堂でのエピソード>
「ここでは好き嫌いなく食べる、家よりたくさん食べて、お母さんもびっくり!」
「不登校になった子どもが大人や他の子どもたちとの交流を通じて、再び学校に通えるようになった」
「ボランティアで参加した一人暮らしの高齢者が生きがいを見出して、毎日お散歩をはじめた」
地域にあたたかい居場所を提供しつづける全国のこども食堂は、コロナ渦においても工夫をこらしながら「食」を通じてつながり続けました。
【写真】コロナ禍には、多くのこども食堂が会食から食糧配布に切り替え地域を支えた
また、こども食堂の運営者の約40%が「気になる子どもや保護者、家庭等を行政や社協、民生委員・児童委員等の支援へ繋いだことがある」と回答しています(※1)。
近年、大きな社会課題となっている孤独・孤立の解消やこどもの貧困対策、虐待予防など、こども食堂の皆さんとのつながりがあったからこそ、支え合える地域づくりを進められています。
※1 むすびえ「第1回全国こども食堂実態調査」2022年
「こども食堂」の増加とともに増える心配事
私たちが2023年12月14日に発表した最新の箇所数調査では、こども食堂の年間増加数が過去最高になりました(※2)。つながりが弱くなっていると叫ばれている中で、市井の皆さんがそれに抗ってこども食堂をはじめられている、その輪が毎年広がっているというのはとてもすばらしく、心強いことです。
しかしながら、こども食堂が増えると同時に、こども食堂のさまざまな運営上の心配事も同時に増加します。
その一つが「衛生管理に関する心配事」です。
私たちが実施した「こども食堂の現状&困りごとアンケート」でも、「運営資金の不足」の困りごとに比べて数は少ないものの、約15%のこども食堂が食中毒などの衛生管理への不安を抱えていることがわかりました(※3)。
※2 むすびえ「2023年度こども食堂全国箇所数調査結果(2023年12月速報値)」
※3 むすびえ「第8回こども食堂の現状&困りごとアンケート」2023年
【写真】食品衛生への細心の注意を払いながら運営しているが、こども食堂の不安は大きい
こども食堂で食中毒が多発した場合、料理を食べた利用者の体調不良という問題だけでなく、全国のこども食堂の活動の自粛という事態につながる可能性もあります。
また、それ以外にも「感染症拡大」「アレルギー対応」「事故や怪我」といった心配事にも運営者の皆さんは心を砕かれています。
保険加入等の負担
こうした心配事を和らげ、安心してこども食堂を運営していくためにできることとして、万が一に備えるための保険加入や「食品衛生責任者」等の資格取得などが考えられます。そうすることで、運営者と参加者、こども食堂を応援する皆さんが安心できるだけでなく、保護者や行政・学校等のこども食堂への安心感が高まり、子どもたちも行きやすくなります。
【図】加入を検討するといい保険(共済を含む)
出典:「むすびえのこども食堂白書 地域インフラとしての定着をめざして」本の種出版/湯浅誠 編/全国こども食堂支援センター・むすびえ 著
例えば、こども食堂でよく活用されている保険は社会福祉協議会の「ボランティア行事用保険」があります。また、食品衛生責任者の資格を取るのに必要な費用は1万円ほどです。
しかしながら、困りごとのアンケートでも「運営資金の不足」は多くの運営者の悩みであることがわかっています。実際、運営者の持ち出しでまかなっているところも多いという実情もあります。さらに、物価上昇の影響もこども食堂の運営に影響を及ぼしています。
2023年6月に実施した最新の「こども食堂の現状&困りごとアンケート」では、「物価上昇の影響を受けている」との回答が8割を上回り、高騰した食材の使用を控える等の工夫をこらしながら、なんとか踏ん張っている運営者の姿が明らかになりました。
実際にこうした声がむすびえにも寄せられています。
<むすびえに寄せられたこども食堂の声>
「資金不足については、検便の費用やボランティア行事保険の保険料の負担があり、
参加費を値上げするか検討している」
「場所代と保険代が馬鹿にならない」
「食材、器材の購入費用が必要なため、保険、検便等などに使えない」
「働いても働いても賃金が上がらず、物価は上がり、税金や保険料はあがり、
少しばかり子育て支援をして少子化対策した気になっている今の社会を
なんとかしてほしい」
「食品衛生責任者資格の受講料が上がっている。
自分の県では4500円だったのが10500円になってしまった。なんとかならないか」
※ むすびえ「第8回こども食堂の現状&困りごとアンケート」自由回答等より抜粋
こども食堂に安心・安全を届けたい!
私たちはこれらの状況を踏まえて、これまでも保険加入助成や食品衛生責任者資格取得のサポートなどを行ってきました。またコロナ禍の対策として、感染症対策自己点検シートや対策実施マーク・動画など作成し、こども食堂の皆さんに届けてきました。
そして、この度5周年を迎えるにあたり、改めてこども食堂がこれからも地域に広がり、つながりが溢れる社会をつくっていくために、こども食堂の安心・安全をみんなで守っていきたいと考え、「こども食堂 安心・安全向上プラットフォーム」を立ち上げることにしました。
安心・安全向上の「プラットフォーム」としたのは、特定の企業や団体と進めるのではなく、より多くの皆さんと一緒に取り組んでいきたい、一度きりではなく、継続的にこども食堂の安心・安全向上の取り組みを行っていきたいという願いからです。そして食品衛生や保険加入だけでなく、食材を保管するための設備等、こども食堂にとってのさまざまな安心・安全な環境づくりを実現したいと考えているからです。そのために、こども食堂の安心・安全をともに実現してくださる個人の皆さまだけでなく、多くの企業・団体の協力も呼びかけていきます。
<今回のクラウドファンディングのご寄付で実現したいこと>
食品衛生の安心安全の向上のために活用させていただきます。
具体的には下記の事業を予定しています。
・ボランティア行事保険加入費の補助
・食品衛生管理者資格取得費の補助
・衛生管理等の研修の開催
・支援を広めるための広報活動(HP作成・広報宣伝費)
など
※ご寄付は寄付金控除等の対象となります
なお、今回のクラウドファンディングで集まった500万円と同額分を、すでにむすびえでお預かりしている寄付500万円を上乗せして、この取り組みを加速させます。
多くの個人、企業・団体の方とともに、この安心・安全を届ける活動が「こども食堂安心・安全向上プラットフォーム」です。ぜひご参加いただき、一緒にこども食堂を応援していただければ幸いです。
こども食堂を支える仲間になってください
むすびえは2023年12月11日に設立5周年を迎えました。
5年前、全国各地のこども食堂運営者と立ち上げたのが、むすびえの前身団体「こども食堂安心・安全向上委員会(代表 湯浅誠)」でした。この時も「こども食堂安心・安全プロジェクト」と称してクラウドファンディングでのご寄付を通じ、全国200箇所のこども食堂の保険加入料3年分を補助することができました。
今回の「安心・安全向上プラットフォーム」は、5周年を機に、まさに私たちの原点に立ち返ったプロジェクトです。
増え続けるこども食堂に、
子どもたちを、地域を、あたたかく、やさしく包んでいきたいという
思いで運営してくれている皆さんに、そこに集う子どもから高齢者の皆さんに、
安心と安全を届けたい。
私たちはこの取り組みを、皆さんと一緒に進めていきたいと考えています。
皆さまからのあたたかいご支援をお待ちしております。
理事長 湯浅誠からのメッセージ
今年、こども食堂の数は9,131箇所に達しました。
子ども、そしてみんなの居場所として機能しているこども食堂が数多くあります。
これからますます社会のインフラとして、
地域の保護者の方、高齢者の方、地域のすべての方が
安心して行ける場所になるように、
保険、衛生の面をよりいっそう整えていきたい。
そのためのこども食堂への支援として
「こども食堂安心・安全プラットフォーム」を立ち上げることになりました。
みなさんにご協力いただければ、
より多くの子どもや地域の方々が
安心してこども食堂に行ける環境が全国に整っていきます。
ぜひ、ご協力いただければ幸いです。
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・
むすびえ理事長
湯浅 誠 (ゆあさ・まこと)
社会活動家、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、経済同友会会員、こども家庭庁「こども家庭審議会こどもの居場所部会」委員。1969年東京都生まれ。東京大学法学部卒。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1990年代よりホームレス支援に従事し2009年から3年間内閣府参与を務める。法政大学教授(2014〜2019年)を経て現職。