活動・団体の紹介
2015年、東日本大震災以降、仙台市内や三陸沿岸地域で活動していたアーティストや研究者らが、自ら記録したものを地域社会に還元するために設立しました。
震災をきっかけに生まれたコレクティブのため、各地の災禍の現場や郷土史にかかわることが多いですが、わたしたちの活動の中心は「聞く」ことにあります。
出来事の経験者に話を聞き、記録をする。
積み上げられた記録をひもとくためにインタビューをする。
聞いた語りを受け止め、表現としてかたちづくる。
話を聞き合う場をひらき、コミュニティを耕す。
記録と表現の実践を行き来しながら、さまざまな「聞く」コミュニケーションをつくっていくことで、緻密で広がりのある、同時代的なネットワークを育んでいきたいと思っています。
活動の背景、社会課題について
「聞く」ことを軸に、大きく4つの活動を行っています。単発のプログラムから複数回にわたるものまで、ご一緒する相手や状況に応じて、さまざまなかたちで実施しています。
①ワークショップ〜話を聞き、応答する
誰かの語りにじっくり耳を傾け、応答するプロセスを大切にしています。たとえば、聞き書きワークショップでは、「あなたの大切な場所」などをテーマに参加者同士でインタビュー行い、相手から聞いた話を文章にまとめて朗読します。他者の話をどのように受けとめ、言葉として編み直すか。そのプロセスは、表現の工夫や倫理を考える機会になるとともに、「聞く/聞かれる」こと自体が、互いのケアにもつながっていきます。また、過去の出来事や誰かの語りを出発点にリサーチし、さまざまなメディアで表現するワークショップも行っています。
②対話と実践の場づくり〜安心して考え、動き出せる場
哲学カフェや講座、読書会など、さまざまな対話の場をつくっています。日々のなかで立ち止まることが難しい問いや感情に、誰かとともにゆっくり向き合う時間をもつことで、それぞれが一歩踏み出すことができるような場を目指しています。
③スタディツアー〜災禍の地から、未来を考える旅へ
災禍の歴史をもつ土地をつなぎ、それぞれの経験を学び合うためのプログラムです。大切にしているのは、痛みや経験を一括りにせず、土地ごとに蓄積された回復の知恵や技術に目を向けること。その土地の営みの細部に触れることで、他者への想像力が育まれ、自分の暮らす場所を新たな視点で捉えるきっかけになります。
④メディアづくり〜声や記憶をかたちにして残す、伝える
災禍の現場で活動する人びとの知見や、わたしたち自身が各地で見聞きした経験をもとに、YouTube番組やポッドキャスト、本、展覧会など、さまざまなメディアづくりを通じて、地域や個人に刻まれた出来事を広く共有し、異なる場所や人をつなぐ試みを行っています。街頭インタビューやゲストとの対話、手記の朗読など、多様な声に耳をすませながら、集合的な記憶や記録の継承、そしてその「分有(シェア)」について考え、届けています。オンライン配信では、企画・収録・編集・配信を一貫して手がけています。
活動内容の詳細、実績について
◉これまでの取り組み
ワークショップ【記録から表現をつくる】
2022年から、「災禍の記録=禍録(カロク)」を通して、記憶の地層を掘り起こす「カロクリサイクル」を行っています。毎年夏に開催している「記録から表現をつくる」は、公募で集まった人たちとともに、残された記録を見る、あるいは新しく記録をすることから、表現をつくるワークショップです(全5回)。作品としての完成を目指すのではなく、自らの関心を他
者と共有し、対話をするためにかたちをつくる。こうした営みを通して、災間をともに生きるネットワークづくりを行っています。
https://nook.or.jp/karoku/proj...
共催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
メディアづくり【つくる手 さぐる手 かきわけて】
障害のある作家たちがつくった作品と、かれらの手探りの歩みをたどる展覧会を行い、作家ごとに冊子を制作しました。一つひとつの作品と出会い、本人や周りの人たちに話を聞き、かれらの生活記録を行った一冊。巻末には記録を通して見えてきた、その人の作品や制作についてのレポートを掲載しています。作品をつくる背景をひもとくと、個人としての動機以外にも、家族や介助者との協働作業、社会福祉的な試みの痕跡などが見えてきます。
https://note.com/nook_tohoku/n...
共催:特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン
メディアづくり【10年目の手記】
東日本大震災から10年。「言葉にしてこなかった“震災”にまつわるエピソードを教えてください」。そんな呼びかけをして、日本中から75本の手記が集まりました。特別選考委員の
小野和子さん(民話採訪者/みやぎ民話の会)にコメントを寄せてもらい、10年目をきくラジオ『モノノーク』では俳優による朗読を行いました。ふと思い出したこと、忘れられないこと、
忘れたくないこと。一人ひとりの経験を分かち合い、これからをともに生き抜くためのヒントを受け取りました。
https://asttr.jp/feature/shuki...
共催:東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業(Art Support Tohoku-Tokyo)
スタディツアー【カロク探訪ツアー】
スタディツアーは、災禍の歴史をもつ土地を訪れ、人びとの営みや回復の知恵にふれる学びのプログラムです。被害を知るだけでなく、その土地に積み重ねられた経験をじっくり
聞き、ともに考えることで、自分たちの暮らしや未来を見つめ直すきっかけをつくります。ツアーの内容は、目的・対象・日数に応じて柔軟に設計可能。学校教育やゼミ合宿、大
人の学びの旅としてなど、さまざまなかたちで実施することができます。
対話と実践の場づくり【てつがくカフェ】
普段当たり前だと思っていることや、最近気になることについて、集まった人と一緒に語り合う場です。お茶を飲みながらゆっくり、自分の考えをあらためて言葉にしたり、相手の話を聞いたりして、対話によって自分の考えを深めていきます。グラフィックレコーディングで対話を可視化しながら、「自由に話す→キーワードを出す→問いをつくる」というプロセスで進めていきます。
ワークショップ・メディアづくり【とある窓】
「その窓から何が見えていましたか?」。生活空間と外の環境をむすぶ「窓」を出発点に「とある窓」をめぐる語りを記録した冊子と、窓から見えるそのまちの風景写真による展覧会を各地で開催しています。2023年は、公募で選ばれた10名のリサーチャーと江東区でリサーチを行いました。窓という装置を通して、その土地の現在・過去・未来が浮かび上がってきます。
https://nook.or.jp/karoku/proj...
メディアづくり【テレビノーク】
月に一度、リサーチで出会った土地や風景、出来事についてYouTubeで番組を配信中。「災禍の記録=禍録(カロク)」に関するゲストを招き、語らいます。災禍の現場で活動する人、禍録を丹念に読み解き、同時代への共有を試みる人などの話を聞きながら、それぞれの接点を見出
していく、オンラインのプラットフォームです。
https://youtube.com/playlist?l...
対話と実践の場づくり【のと部】
2024年の能登半島地震をきっかけにはじまった「のと部」。月に一度集まり、それぞれの関心や特技を持ち寄って、東京から能登を応援する活動を行っています。毎月の参加者は約30名、部員登録数は140名ほど(2025年9月現在)。現地に行ってきた報告会を行い、能登とつながるラジオ『のとと』の制作、場づくり、情報整理、グッズ制作など、班に分かれて手を動かしています。
◉主な事業内容
展覧会の企画・調査・制作
ワークショップの企画・運営
文化拠点の企画・運営
配信番組の企画・制作
事業記録の企画・制作(テキスト、写真、映像など)
視察・研修のコーディネート・アドバイス
◉主な連携先
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
公益財団法人仙台市市民文化事業団
特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン
3.11オモイデアーカイブ
寄付金の使い道について
◉以下の事業を継続するために使わせていただきます。
展覧会の企画・調査・制作
ワークショップの企画・運営
文化拠点「Studio04」の企画・運営
配信番組の企画・制作
事業記録の企画・制作(テキスト、写真、映像など)