読み書きに困難がある「ディスレクシア」の人たちは壁にぶつかっている。
ディスレクシアは、LD(学習障害)のひとつで、知的能力の低さや勉強不足が原因ではなく、生まれつき、大脳の機能の問題で、読み書きが正確にまたはスムーズにできない症状です。症状は人によってさまざまです。
●音読に時間がかかる、たどたどしい、読み間違える
●漢字の誤りが多い、練習しても書けない、字を書くのに時間がかかる
●漢字を使いたがらない、句読点を書かない、マス目におさまらない
●読み書きが疲れる、嫌がる
周囲も本人もディスレクシアであることに気づかず、「勉強量を増やしても結果が出ない」「自分はバカなのか 」と悩み、苦手をきっかけに学業不振、自信喪失、不登校、精神的ダメージを受けて二次障害が出ることがあります。また保護者が気づいても学校側と調整がうまくいかず、情報や支援を求めて右往左往しているケースも目立ちます。
ディスレクシアを支援する制度が日本にはない。この現状を変えたい。
ディスレクシアは病気ではないので治りません。時間をかけて読み書きのトレーニングをしても克服できるものではありません。その子がもつ知的な力、強い能力、語彙力、理解力、音読や書字の正確さ・流暢さなどを総合的にアセスメントでとらえて、特性に合った学習方法を選べるようにすることが、本来持っている力を発揮して伸ばすために必要です。
ディスレクシアに関する対応が進んでいるアメリカやイギリスでは、権威あるエデュケーショナル・サイコロジスト(教育心理士)が重度な困難さがみられる生徒の読み書きのアセスメントを行い、教育的診断をして、便宜供与にあたる調整や変更による教育的な対応ができるようになります。また、そこまで重度でなくても各学校に読み書きのアセスメントができる教諭がおり、すぐに必要な調整や変更ができるようになっています。時間延長やPCの使用などの便宜はすでにアクセスアレンジメントとして自己申告だけで実施できるようになっています。学校だけではなく資格試験などでもそのような対応がなされています。
ディスレクシア支援が制度として根付いていない日本で、ディスレクシアの人たちが生きやすい社会をつくりたい。「認定NPO法人エッジ」の活動にお力をお貸しください。
ご寄付でおこなうディスレクシア支援事業
- 読み書きアセスメント(スクリーニング検査)の拡充に向けた活動
早期に読み書きアセスメントを広く実施して、ディスレクシアの特性があるこどもに合った支援が開始できるよう、自治体や教育現場での集団「読み書きアセスメント」を手がけます。制度化されるよう、行政への啓発活動にも力を入れます。
2.学習支援者の拡充とディスレクシアセミナー講師派遣
支援する人材を増やすための「読み書き困難指導・支援講座」「学習支援員養成講座」「読み書きアセッサー養成講座」を引き続き開講。ディスレクシアの認知度を上げ社会全体で受け入れる土壌をつくるため、ディスレクシアに関するセミナー講師派遣を実施します。
3.10月をディスレクシア月間とする啓発キャンペーン実施
2023年にLD啓発支援をする5団体で協力してディスレクシア月間キャンペーンを初開催。今後も毎年10月に続けます。また読書バリアフリーの対象にディスレクシアがすでに含まれていますが本人も保護者も周りの人も知らないことが多いため、環境整備(ディスレクシアコーナー、職員の研修、ディスレクシアが“読みやすい図書”や方法を提供、一般利用者へのセミナー等実施)を啓発キャンペーンの一環として図書館に働きかけます。
4.ディスレクシアのこどもたちの居場所作りとワークショップ開催
K&T(キッズ&ティーンズ)クラブとして、夏休みなどにディスレクシアのこどもが参加できるワークショップを開催します。2023年は建築ワークショップ、作文教室、オンラインの居場所づくりワークショップを開催しました。
5.ディスレクシア当事者のネットワークづくりとエンパワメントセンター設立準備
ディスレクシア当事者がつながり自分たちの強みを活かして道を切り拓く当事者団体「NODE」の活動推進、おとなのディスレクシアがゆるくつながる「DX(ディスレクシア)会」を定期開催します。さらに、ディスレクシアの人が持つ力を発揮できるよう、相談・支援・コミュニティ・学びのビュッフェにつながる「エンパワメントセンター」設立準備を進めます。
「ディスレクシアだから大丈夫!」といえる世の中にするために~会長の言葉~
エッジの強みは先駆性、独自性と当事者性です。日本ではだれも知らなかった「ディスレクシア」が医療の分類でも位置づけされ、発達障害者支援法や障害者差別解消法をはじめとする各種の法律の制定、支援施策、教育政策、などの制定にもかかわってきました。
きっかけは、英国に留学した息子の「自分が英国で受けたアセスメントから支援によって将来が開けたので日本の人たちにも何かしてほしい」という言葉で、それを受けてNPOを作りました。まずディスレクシアの人たちがいると知っていただくこと、本人たちのアセスメントや仲間づくり、本来の良さに気づくなどの活動を通じてのエンパワメント、支援ができる人たちの人材育成と関連団体のネットワークづくりを活動の柱としてきました。
設立20年を機に「NEXT EDGE EDGEなミカタ」と銘打って、20年間の基礎の上、次なるステップに進みました。常に先駆的であるために次の世代に担ってもらい、新たな活動に踏み出しました。その一つが支援を受けて育ってきたロールモデルとなる当事者のネットワーク、その人たちのストーリーのノウハウをアーカイブ化して、こどもの居場所作りなどこどもたちや若者たちに夢と希望が持てるような活動に力を入れています。
皆様のご寄付で活動の推進、維持、実現にお力添えをください。
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会長 藤堂栄子
1953年生まれ、ヨーロッパで育ち、EU(欧州共同体)広報部勤務の後、フリーランス通訳者(英仏)に。英国留学をした長男がディスレクシアであると判明したことをきっかけに認定NPO法人エッジを設立。還暦を過ぎて教育学修士となり、2016~2024年まで星槎大学(せいさだいがく)特任教授。発達障害者ネットワーク副理事長、社会保障審議会障害者部会委員、教科書バリアフリー法、読書バリアフリー法関連検討委員会などの委員歴任。著書『学習支援員のいる教室 通常の学級でナチュラルサポートを』『ディスレクシアでも活躍できる (読み書きが困難な人の働き方ガイド)』『ディスレクシアでも大丈夫!-読み書きの困難とステキな可能性』、監訳『ディスレクシアだから大丈夫!-視点を変えると見えてくる特異性と才能』、寄稿『決定版!授業のユニバーサルデザインと合理的配慮-子どもたちが安心して学べる授業づくり・学級づくりのワザ』ほか多数。
エッジホームページ▶https://www.npo-edge.jp/
(本文注)
※1 ディスレクシアの出現率 500人規模の小学校で、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の「音読」「書字」および「読み/書きの習得に影響があると考えられる能力」に関する調査の結果。(宇野,2009)
※2 LD(学習障害)児の35%が小学校で、60%が中学校で不登校を経験する。鳥取県調査。(小枝, 2001)