ご挨拶とこれまでの実績
こんにちは。ソプラノ歌手の大田原 瑶です。
私は2019年、イタリアの名門、パルマ国立音楽院に入学し、2年間のコロナ禍を経て、22年に最高成績、特別賞付きで卒業しました。21年にはノヴァ―ラ歌劇場(テアトロ・コッチャ)アカデミー(研修所)に入所、翌年にはさわかみオペラ芸術振興財団の奨学生にも採用され、イタリアに留まり経験を積むことができました。昨年は『ナブッコ』アビガイッレ役を、また「プッチーニ・フェスティバル」では『蝶々夫人』タイトルロールカバーキャストを務めるなど、おかげさまでイタリアを中心に欧州で活躍の幅を少しずつ広げることができています。
1月20日にはノヴァ―ラ歌劇場で『蝶々夫人』のタイトルロールを、今年はその他にも『コジ・ファン・トゥッテ』のフィオルディリージ役、『オルフェオ』などでも出演が決まっています。
しかし、オペラの本場イタリアや欧州各地でオーディションを勝ち抜いて主要な役を得るのは容易なことではありません。キャリアを積み上げるためには後述するアカデミーへ参加し、さらにステップアップを図る必要があると考えています。
「ベルカント・アカデミー」とは
若手の登竜門
「ベルカント・アカデミ」ーは、イタリア南部のマルティーナ・フランカという街で開講されていて、現在世界各地で活躍しているオペラ歌手を多数輩出している、若手の登竜門のような存在です。
「ベルカント・アカデミー」(パオロ・グラッシ財団)公式ウェブサイト
もちろん誰でも参加できるわけではなく、入学オーディションを受ける必要があります。オーディションはヨーロッパ全土で行われ、私が挑戦するイタリアのオーディションは、2月9日から11日まで3日間かけて行われます。
(※オーディションに落ちたらどうするの? 合格する自信はありますが、後述の『ご支援の使い道』をお読みください!!)
ベルカント・アカデミーという名前ではありますが、カリキュラムを見ると、バロックオペラからベルカントオペラまで幅広いレパートリーを実践的に学ぶことができるということがわかります。また、舞台演技法、ディクション(声楽のための発音法)、ステージ上での感情管理ワークショップ、特殊なところでは即興音楽のマスタークラスなど、オペラ歌手に必要なさまざまなテクニックも学ぶことができます。
これは近年オペラ歌手が、新作オペラを含め多様な時代の作品を歌うことが求められている現状に大変マッチしています。普通のアカデミーではバロック、現代、作曲家など、時代やスタイルを分けてひとつずつ学ぶことが多いのですが、ひとつのアカデミーでこのように沢山のことを一度に学べると、有機的なつながりを持ってそれぞれの音楽を深く理解し、演奏することができます。
歴史ある舞台に立つチャンスも!
ベルカント・アカデミーは、7月から8月にかけて行われる夏のオペラフェスティバル「Festival della Valle d’Itria」とコラボレーションしています。この事はとても重要な意味を持っています。
日本では「ヴァッレ・ディトリア音楽祭」という名前で音楽愛好家の間ではよく知られており、2024年にはちょうど50周年を迎えるという歴史あるフェスティバルです。不便な立地にもかかわらず夏になると世界中から耳の肥えた観客が押し寄せ、小さな街はたいへんな賑わいをみせます。
「ヴァッレ・ディトリア音楽祭」公式インスタグラム
業界的にはこの音楽祭は、人材育成で突出した実績を挙げていることでも有名で、このベルカント・アカデミーの中から選ばれた出演者はとても大きな注目を集めます。夏の音楽祭でのオペラやコンサートへの出演は、各メディアへの露出を増やすだけでなく、オペラ歌手としてキャリアを積む上で大切な経験と人脈形成に繋がります。
イタリアは良くも悪くも人脈=コネクションがものをいう世界です。この舞台で良いパフォーマンスをすれば、劇場やアジェンテ(エージェント)に見出され、その後の仕事へと繋がっていきます。
本場の欧州オペラ界を目指す後輩たちへ
この差はどうしてだろう?
ところで皆さんは、現在世界で名の通っている日本人オペラ歌手を何人ご存知ですか?
3人? 5人? せいぜい両手で数えられるほどではないでしょうか?
一方、同じアジア勢力である中国人、韓国人オペラ歌手は一体どのくらいいるでしょうか?
実は、骨格や体格がほぼ同じはずの中国人、韓国人歌手は、今や世界中の歌劇場で大活躍しているのです。
この差はなぜ生まれるのでしょう?
一体、彼らと日本人歌手の何が違うのでしょう?
一つは言語、文化的な違いです。
しかしそれ以上に大きいのは、圧倒的な人数の多さという点です。
私が情報・人脈のハブとなる
ヨーロッパのどこへ行っても、中国人、韓国人歌手のコミュニティが存在します。彼らはその中で情報を共有し合い、助け合っています。
それは声楽技術の面での情報共有だけではなく、オーディション情報や人脈に至るまで全て共有されているのです。つまり、ヨーロッパに渡航したばかりの時点で、彼らはすでにいろんな重要な場所やキーパーソンへのアクセス方法を持っているのです。
情報を持っている同じ国籍の歌手が多いほど、後進の歌手の道は開けていきます。
ここが、日本と日本以外のアジア勢との決定的な差です。
私は一人の日本人歌手としてキャリアを積み始めた段階にいます。正直、自分のことで精一杯な部分はあります。しかし、イタリアにやって来る後進の歌手のためにも、日本にいる若手の歌手のためにも、できることがあります。このベルカント・アカデミーを通して培った経験やスキル、そして本場の舞台で活躍するための人脈など、後進の学生や歌手に伝えることも私の使命と考えています。
ご支援の使い途
頂いたご支援は、現在の住まいがあるイタリア北部から、南部のマルティーナ・フランカまでの交通費と現地での宿泊費に当てさせていただきます。
アカデミーは1セクションが2週間あるため、アカデミーの近くで集中して研鑽を積むための宿泊場所が必要です。4 月と6月、2セクションを受講します。
- オーディション(2/9~2/11)
ミラノ空港⇔ブリンディジ空港往復交通費=100€(約1万6000円)
宿泊費45€(約7200円)×3泊=135€(約21,600円) - 研修(4/15~28、6/10~6/23)
ミラノ空港⇔ブリンディジ空港往復100交通費用=100€(=約1万6000円)
宿泊費45€(約7200円)×14泊×2セクション=1260€(=約201,600円)
※オーディションに落ちたらどうするの??
アカデミーへ入学ができなかった場合は、ご支援いただいた大切なお金は、現在参加を考えている他のコンクールやオーディションへの参加費、交通費、宿泊費に当てさせていただきます。
1)劇場オーディション(2024年3月10日、於:スポレート/イタリア)
2) Concorso Lirico Internazionale “Tebaldi-Gigli-Corelli” (2024年3月12-15日、於:ペーザロ/イタリア)
3)Cascais Opera コンクール (2024年4月6-14日、於:リスボン/ポルトガル)
※出場予定オーディション・コンクールは変更になる可能性があります
結びに
イタリアでは音楽院卒業はスタートに過ぎず、実際に現場に出ていくためには歌手としての技術や才能はもちろん、劇場やアジェンテへのコネクションも必要です。さまざまなコンクールやオーディションの年齢制限が来るまで、少なくともあと2年はイタリアに腰を据えて活動したいと思っています。
それまでに私は歌手として自分のできる限りの体験をしてキャリアを形成し、そこから得たものを後輩たちに伝えていきます。みなさまのご支援を最大限活かし、コロナ禍でダメージを負った日本のオペラ界を今まで以上に盛り上げていくために尽力します。
寄付者のみなさまへ
プロフィール
東京音楽大学卒業、東京藝術大学大学院修了。イタリア国立パルマ音楽院を最高成績、特別賞付きで卒業。2022年度さわかみオペラ奨学生。21年10月にはサントリーホールにて『椿姫』ヴィオレッタ役を歌い絶賛を浴びる。また、イタリア国内では『トロヴァトーレ』イネス役、『ナブッコ』アビガイッレ役に選出され、成功を収める。2023年「プッチーニ・フェスティバル」にて、『蝶々夫人』タイトルロールカバーキャストを務める。イタリアだけでなく、リトアニア、チェコ、ギリシャなど欧州各地にも出演し、バロックから新作オペラまで幅広いレパートリーの歌唱で活躍している。イタリア・コモ県在住。
このクラウドファンディング(寄付)の運営について
さわかみオペラ芸術振興財団とは
「日本にオペラ文化を広め、多くの人々に心の贅沢を味わっていただき、それが人生の豊かさにつながっていく」という理念の下、活動を行っている公益財団法人です。2015年に日伊共同制作の野外オペラ公演を開催し、2016年よりイタリアの歌劇場と共に日本各地の文化財を借景に、「Japan Opera Festival(ジャパン・オペラ・フェスティヴァル)」の総称で公演を開催しています。公演活動の他に、若き芸術家への活動支援や教育活動も積極的に行っています。
https://sawakami-opera.org/
音楽家支援制度「みんなの寄付」
さわかみオペラ芸術振興財団では、音楽活動のための助成制度「みんなの寄付」を設けています。皆様から募った寄付金は財団諸経費を除き全額を、支援が必要な音楽家に届けます。また、助成金をすべて寄付金から給付することにより、支援者と音楽家を「寄付」というかたちでつなぎ、多くの人々を巻き込みながら、日本のクラシック音楽の文化発展、振興に寄与することを目的としています。
寄付方法は、特定の音楽活動を指定せず「みんなの寄付全体」に対して支援できる<助成型>と、寄付者の方が興味のある活動を指定し個別に支援できる<個別案件型>があります。
税制上の優遇について
当財団への寄附金は、税法上の特定公益増進法人への寄附金として、個人・法人それぞれに税制上の優遇措置がございます。公式サイト
※詳細は、所轄の税務署又は税理士などへお尋ねください。
- 個人によるご寄附
(1)所得税
控除の方法は《税額控除》と《所得控除》による方法がございます。
《税額控除》 下記算式より算出された額が、「寄附金控除」として、所得税から控除
(年中に支出した公益財団法人等に対する寄附金の合計額-2,000 円)×40%=控除額
※寄附金の合計額は年間所得額の 40%が限度となります。
※控除額は所得税額の 25%が限度となります。
《所得控除》 下記算式より算出された額が「寄附金控除」として、課税所得から控除
(年中に支出した特定寄附金の合計額-2,000 円)×所得税率=控除額
※特定寄附金の合計額は年間所得額の 40%が限度となります。
(2)住民税
一部自治体の個人住民税についても優遇措置の対象となります。
(3)相続税
相続税についても優遇措置の対象となります。 - 法人によるご寄附
当財団への寄附金は、(1)一般の寄附金の損金算入限度額とは別枠で、(2) 特定公益増進法人に対する特別損金算入限度額以内の金額を、損金算入することが認められています。
(1)一般の寄附金にかかる損金算入限度額
(資本金等の額の合計額または出資金の額×0.25%+所得の金額×2.5%)×1/4
(2)特定公益増進法人に対する寄附金にかかる損金算入限度額
(資本金等の額の合計額または出資金の額×0.375%+所得の金額×6.25%)×1/2