「森の人」オランウータンが絶滅の危機に!
オランウータンはインドネシア語やマレー語で「森の人」という意味があります。それはオランウータンが、樹上で生活していることが由来の一つです。オランウータンの特徴でもある、脚の1.5倍の長さを持つ腕も、枝から枝へ移動するのに適した骨格に進化したからだといわれています。野生のオランウータンは現在、東南アジアのインドネシアとマレーシア(スマトラ島とボルネオ島)にのみ生息しています。
下図は、イギリス、ケント大学のマリア・ヴォイト博士らが発表した、ボルネオ島に生息するオランウータンのこれまでの推定密度と分布、そして現在と今後の変化を予想したものです。オランウータンは、生息地である熱帯林の急速な消失によって、1999年から2015年のたった16年間に、10万頭以上が減ってしまいました。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにも、絶滅の可能性が最も高い「近絶滅種(CR)」に指定されているオランウータン。早急に保護活動を行いたくても、オランウータンの場合それは簡単なことではありません。
まず、オランウータンの繫殖スピードはとても遅く、6~9年かけてゆっくりと一子を育てます。そのためオランウータンの生息数が減れば減るほど、個体数を回復させることが極めて難しくなるのです。さらに現存しているオランウータンの約75%は保護区の外で生活しているため、常に違法伐採や農地開拓により住居や食糧を奪われる危険にさらされています。世界中のオランウータンの研究者や動物園関係者、NPO/NGOの活動家らが、この深刻な事態をなんとか食い止めようと、日夜研究と保全活動に取り組んでいるのが現状です。
オランウータンを絶滅から守るには
野生のオランウータンを絶滅の危機から守るため、私たちは研究活動の支援と、調査結果やオランウータンの現状を皆さまに広く普及する活動を行っています。ここではおらけんの支援・活動内容の一部をご紹介します。
オランウータンの調査・研究
マレーシアのダナムバレイ保護区には、約500頭のオランウータンが生息しています。保護区は世界でも5つの指に入るほどトップクラスの原生熱帯林が広がっていて、ここでは昔と変わらない豊かな状態の森林でオランウータンは生活しています。ダナムバレイのオランウータンは将来も生息数が維持される可能性が高いために保護強化の対象とされており、私たちもさまざまな調査や研究を通じて保全活動に貢献しています。
代表的な研究をいくつかご紹介します。
(1)オランウータンの個体群にどのような変化が起きているのかを把握するために、オランウータンの密度を調べるネスト(巣)カウント調査を、19年間毎月行っています。(2)オランウータンの糞を集めてDNAを鑑定し、血縁関係を調査しています。この調査によって、個体同士のつながりを理解し、単独性のオランウータンがつくる謎多き社会を明らかにすることができます。(3)オランウータンの尿を集めてホルモン値を測定し、オランウータンの繁殖の研究をしています。メスは6~9年に一度しか発情しないため、この研究には長い時間がかかります。(4)オランウータンの食物の調査にも力を注いでいます。これはダナムバレイのオランウータンが食べた果実や葉、樹皮や花を調べることで、原生林で生活するオランウータンはどのくらいの植物相を必要とするのかを明らかすることができます。
こうした長期調査を継続・発展させようとする活動は、オランウータンの研究だけでなく保全事業に対しても重要な役割を担っています。
オランウータンの魅力や現状を伝える普及活動
オランウータンが絶滅の危機に瀕していることを、あなたはご存じでしたか?実はオランウータンに絶滅の危機が迫っている現状は、日本ではまだあまり知られていません。そこで私たちはオランウータンの厳しい現状や彼らの魅力を多くの方に知ってもらうために、さまざまな形で情報の発信を行っています。
私たちは講演会を開催し、会場ではブースを出展してオランウータンに関する書籍を販売しています。また、私たちの理事長が元ベテラン飼育員という人脈を生かし、国内の動物園でオランウータンの飼育員同士が交流・情報交換ができるよう、会合や共同研究を支援する活動も行っています。これまでに多くの飼育担当者の方が展示のヒントを探し、ダナムバレイを訪問して野生のオランウータンの生息環境を体感してくださっています。今後は、国内では極めて情報が少ない「スマトラ・オランウータン」と、新種の「タパヌリ・オランウータン」のことを知りたいという声に応え、スマトラ島で保全活動を行う準備も進めています。これは、私たちにとって、大きな次のチャレンジです。
オランウータンの調査・研究にはあなたのご支援が必要です!
ダナムバレイでオランウータンの調査を継続するためには、年間で約550万円必要になります。なぜこんなに費用がかかるかというと、それはオランウータンの生態と密接な関係がありました。先にもお伝えしたように、オランウータンは樹上生活が基本です。さらにオランウータンは1頭、もしくは母子だけで行動をする単体生活を送っています。そのため、姿を見つけるだけでも大変難しく、追跡調査にも人員が必要です。現地では調査小屋を拠点とし、調査員が3人体制になってオランウータンを見失わないように追跡しています。オランウータンの追跡調査は、迷わずに歩けるほど森を熟知し、樹上にポツンといるオランウータンを見逃さない視力をもつ現地アシスタントの協力が必要不可欠です。こうした調査助手の人件費をはじめ、調査小屋のインフラや修理費、研究道具の購入などに月46万円強、年間にすると550万円がかかってしまいます。これまでは、大学の研究機関や民間の助成金を得て運営してきました。しかし、助成金が支給される期間は1~3年と短いため、経済的に不安定なのが現状です。アシスタントに定期的に給与や食費、福利厚生を払いながらの調査の継続や、オランウータンの普及活動をあらゆる地域で開催するには皆さまからのご支援が必要です。
ご寄付のお願いと活用法について
日本オランウータン・リサーチセンターの活動は、会員様からの会費とご寄付によって支えられています。皆さまからのご支援はオランウータンの調査や保全活動、講演会のために大切に活用させていただいております。オランウータンを守るためにも、ぜひ皆さまからのご支援をお願いいたします。
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