ピープルファーストについて
ピープルファーストは、知的障害のある人たちの当事者運動です。
今から100年前、世界では、知的障害のある人たちは強制的に入所施設に入れられていました。障害のある人たちには人権がなかったのです。しかし、1970年代になって、アメリカやヨーロッパの知的障害のある人たちが「知的障害者として扱われるのではなく、まず一人の人間として見てほしい」と声を上げました。そうして生まれたのがピープルファーストです。一人の人間としての権利を求め、仲間とともに社会に訴える活動は世界に広がりました。
そして日本でも、海外の活動を体験した当事者や支援者によって、ピープルファーストが始められました。私たちは1994年から毎年、全国大会を開催しています。今年は28回目の大会です。10月13日、14日に大阪で開催します。知的障害のある人たちやその支援者など、1000人を超える人たちが参加する予定です。
世界で進む「脱施設化」
そこにはピープルファーストの運動がありました
2006年12月13日、国連で障害者権利条約が成立しました。障害がある人もない人も、みんなが大切にされる社会を目指した条約です。日本も2014年から参加しています。そして昨年の夏、障害のある人たちの権利が日本で守られているかどうか、初めて審査されることになりました。
障害者権利委員の一人、ロバート・マーティンさんは日本政府に対して、次の質問をしました。
「障害をもつ人が、日本では施設で暮らす人がまだ多いと聞いています。やまゆり園事件は大変な悲劇でした。我が国のニュージーランドとくらべると大変残念です。やまゆり園事件を経て、このような施設で暮らす人たちがたくさんいることについて考え直したことはあるでしょうか。」
ロバートさんには知的障害があります。子ども時代の多くを入所施設で過ごしました。施設を出て、ピープルファーストと出会います。それからの30年間、ロバートさんは入所施設をなくす取り組み(脱施設化)を続けてきました。ピープルファーストニュージーランドが行った脱施設化の運動は社会に大きな影響を与え、2006年、ニュージーランドから入所施設が完全になくなりました。
ロバートさんの活動はニュージーランドだけでなく、世界に影響を与えています。世界中を旅して、脱施設化や障害者の権利について話し合い、当事者や支援者の人たちを勇気づけてきました。そうした活動が認められ、2016年、知的障害のある人としてはじめて障害者権利委員に選ばれたのです。
障害者権利委員会で日本政府に質問するロバート・マーティンさん(2022年8月)
日本から入所施設をなくしたい!
そのために海外のリーダーから話を聞きたい!
現在、日本には2500ヶ所以上の入所施設があり、13万人以上の知的障害のある人たちが暮らしています。2002年、日本政府は入所施設からの地域移行を増やすことを目標にしましたが、20年以上たった今も、入所施設で暮らす人は減っていません。
入所施設がなくなったニュージーランドやスウェーデンでは、「なくそう」と言ってから「なるなる」まで、30年以上かかっています。入所施設をなくすことに取り組んでいるカナダも、まだ完全にはなくなっていません。
日本でも、入所施設をなくすには、同じぐらい時間がかかるでしょう。
でも今は、「なくそう」ということも決まっていません。
全国では、新しい施設がつくられ、古くなった施設は建て替えられています。
施設をなくそうとする動きがないのです。
これでは、日本から入所施設がなくなる日が来ません
当事者も職員も、そして家族でさえも、本当は望んでいない入所施設での暮らし。
私たち、ピープルファーストは、入所施設をなくすために闘います。
今年の全国大会に、ニュージーランドからロバート・マーティンさんの他に、ピープルファーストカナダで長くリーダーをつとめ、脱施設化の運動をしてきたコリー・アールさん、スウェーデンで知的障害のリーダーとして活躍しているエミリー・ムティエンさんを呼びます。
海外のリーダーとの交流を通じて、日本で入所施設をなくすことの意味や大切さを学びます。
ロバート・マーティンさん Sir Robert Martin
・インクルージョン・インターナショナルの副会長を務めた。
・国連の障害者権利委員会で知的障害者として、はじめて委員に選ばれる。
・2020年、Sir(ナイト)の称号を授与される。
コリー・アールさん Kory Earle
・ピープルファースト・オブ・カナダの代表として、入所施設の解体をすすめてきた。
・2019年6月、障害者権利条約 締約国会議に、カナダ代表として出席し、インクルージョンのメッセージを国連に届けた
エミリー・ムティエンさん Emily Muthén
・スウェーデンのグルンデン協会のメンバー。
・当事者が地域でよりよい生活をするために、政治家や社会に訴える活動をしている。
・2017年、反差別、アクセシビリティ、市民の平等の問題について広く認識させた人に贈られるSTIL賞を受賞。
大阪のあと、京都・横浜・東京へと
大会の後、京都・横浜・東京でのイベントに登壇されます。
10月13日・14日 大阪 ピープルファースト大会
10月15日(日)京都 ※クローズドな集まりです
10月16日(月)横浜
「世界の仲間と語り合おう!津久井やまゆり園事件から7年」
主催:ピープルファースト横浜
申込 https://forms.gle/itHS5UR7od24...
10月17日(火)東京・衆議院第2議員会館での院内集会
「総括所見を踏まえて脱施設を進めよう!~施設に頼らない地域をどうつくるか~」
主催:DPI日本会議、ピープルファーストジャパン、
全国自立生活センター協議会、東京都自立生活センター協議会
申込 https://www.dpi-japan.org/blog...
寄付金の使い道について
ロバート・マーティンさん、コリー・アールさん、エミリー・ムティエンさんと、それぞぞれの支援者、合計6名の渡航費や滞在費、通訳費にあてます。
障害者権利条約について
第十九条 自立した生活及び地域社会への包容
この条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。この措置には、次のことを確保することによるものを含む。
- (a) 障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。
- (b) 地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること。
- (c) 一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること。
障害者権利委員会について
緊急時を含む脱施設化に関するガイドライン(日本語・JD仮訳)
日本の審査の時の動画(国連TV) 建設的対話1日目 8月22日
日本の審査の時の動画(国連TV) 建設的対話2日目 8月23日
(以下、抜き出しです)
8. 委員会は、締約国に対して以下を勧告する。
(a) 障害者、特に知的障害者及び精神障害者を代表する団体との緊密な協議の確保等を通じ、障害者が他者と対等であり人権の主体であると認識し、全ての障害者関連の国内法制及び政策を本条約と調和させること。
9. 委員会は、更に以下を懸念する。
(b) 主に社会における優生思想及び非障害者優先主義により2016年に相模原市津久井やまゆり園で発生した殺傷事件に対して、包括的な対応がなされていないこと。
10. 委員会は、本条約第4条3及び第33条3に関する一般的意見第7号(2018年)を想起しつつ、締約国に以下を勧告する。
(b) 優生思想及び非障害者優先主義に基づく考え方に対処する観点から、津久井やまゆり園事件を見直し、社会におけるこうした考え方の助長に対する法的責任を確保すること。
自立した生活及び地域社会への包容(第19条)
41. 委員会は、以下を懸念をもって注目する。
(a) 知的障害者、精神障害者、障害のある高齢者、身体障害者及びより多くの支援を必要とする障害者、特に地域社会の外にある施設で生活する障害者、並びに、家族及び地域生活を奪う様々な種類の施設における、障害のある児童の中で、特に、知的障害、精神障害もしくは感覚障害のある児童及び児童福祉法を通じた、より多くの支援を必要とする児童の施設入所の永続。
(b) 公的及び民間の精神科病院における精神障害者及び認知症を有する者の施設入所の推進。特に、精神障害者の期限の定めのない入院の継続。
(c) 保護者の下で、実家で生活している者、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の下でグループホームのような特定の施設形態に置かれる者も含め、障害者が居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会が限定的であること。
(d) 居住施設や精神科病院にいる障害者の脱施設化及び他の者との平等を基礎とし、障害者の地域社会での自立した生活のための、自律と完全な社会的包容の権利の認識不足を含む国家戦略及び法的枠組みの欠如。
(e) 利用しやすく負担しやすい費用の住居、在宅サービス、個別の支援及び地域社会におけるサービスを利用する機会を含む、障害者が地域社会で自立した生活を送るための支援の整備が不十分であること。
(f) 障害の医学モデルに基づく地域社会における支援及びサービスの供与に関する評価形態。
42. 自立した生活及び地域社会への包容に関する一般的意見第5号(2017年)及び脱施設化に関する指針(2022年)に関連して、委員会は締約国に以下を要請する。
(a) 障害者を居住施設に入居させるための予算の割当を、他の者との平等を基礎として、障害者が地域社会で自立して生活するための整備や支援に再配分することにより、障害のある児童を含む障害者の施設入所を終わらせるために迅速な措置をとること。
(b) 地域社会における精神保健支援とともにあらゆる期限の定めのない入院を終わらせるため、精神科病院に入院している精神障害者の全ての事例を見直し、事情を知らされた上での同意を確保し、自立した生活を促進すること。
(c) 障害者が居住地及びどこで誰と地域社会において生活するかを選択する機会を確保し、グループホームを含む特定の生活施設で生活する義務を負わず、障害者が自分の生活について選択及び管理することを可能にすること。
(d) 障害者の自律と完全な社会包容の権利の承認、及び都道府県がその実施を確保する義務を含め、障害者の施設から他の者との平等を基礎とした地域社会での自立した生活への効果的な移行を目的として、障害者団体と協議しつつ、期限のある基準、人的・技術的資源及び財源を伴う法的枠組み及び国家戦略に着手すること。
(e) 独立し、利用しやすく負担しやすい費用の、いかなる集合住宅の種類にも含まれない住居、個別の支援、利用者主導の予算及び地域社会におけるサービスを利用する機会を含む、障害者の地域社会で自立して生活するための支援の整備を強化すること。
(f) 障害者にとっての社会における障壁の評価及び障害者の社会参加及び包容のための支援の評価を含む、障害の人権モデルに基づいた、地域社会における支援及びサービス提供を確保するため、既存の評価形態を見直すこと。
インクルージョン・インターナショナル
Launch of Accessible Videos on Closing Institutions
Closing institutions and Living in the Community: Global Self-Advocacy Report