設立のきっかけは、エイズ孤児に出会ったこと
PLASは「エイズで親を亡くしたとしても学校に通える社会をつくりたい」という思いで設立し、今年で20年目を迎えます。

設立からこれまで、エイズ孤児の支援だけではなく貧困家庭の自立支援などに取り組んできました。また2023年から望まない妊娠・出産の課題解決に向けて、新しい事業もスタートしました。

活動をする上で大切にしているのが、「つくる支援」。
支援を受ける子どもや保護者たちだけが自立できるようになるのではなく、事業を通して、現地パートナー団体も自らの力で支援を届けられるようになることです。それは現地にオーナーシップやリーダーシップがとれる人材が増え、知識や経験が蓄積されることで、より多くの子どもたちに、より効果的な、支援を届けることができるようになるからです。
ご支援金の使い道

みなさまからのご支援は、3つの事業にかかる活動資金として、大切に使用させていただきます。PLASは、アフリカの子どもたちが前向きに生きられるように子どもたちが直面する課題の解決や持続可能な活動をつくるために現地パートナー団体の組織基盤強化に取り組んでいます。
「学校に行けない」繰り返される負の連鎖
アフリカは近年急速な経済成長を遂げており、通信技術やインフラ開発の分野で多くの需要が生まれています。しかしその一方でアフリカの貧困問題は大きな社会問題であり、多くの人が貧困の連鎖から抜け出すことができずにいます。アフリカでは、約2億3,700万人の子どもたちが極度の貧困下で生活しており、依然として支援を必要とする子どもたちが多い状況です(*1)。
PLASの事業地にあるケニアのビタ準群という地域は、特にその状況が深刻です。

この地域では、人口の約6割が1日2.15ドル以下の極度の貧困ラインで生活しており、県都で最大の町であるホマベイ郡の家庭における食費の割合は56.8%と非常に高いです。十分な収入や貯蓄がないため、各家庭では食糧の安全保障が確保されていません。このような脆弱な家庭の子どもたちは、経済的な理由や親の理解不足から、学校に通い続けることが難しく、5人のうち3人が中等教育に進学することができません(*2)。
また、この地域では望まない妊娠・出産の問題が深刻であり、特に女の子たちは男性優位の価値観、貧困、性と生殖に関する知識不足から、3人に1人が10代で妊娠・出産を経験しています(*3)。早すぎる妊娠・出産は、教育機会の喪失につながり、結果として職業選択を狭め、将来的な貧困を引き起こす要因となります。
私は初等教育6年生のときに妊娠しました。それを知った父親は激怒し、私に冷酷な態度を取りました。やむを得ず学校を中退し、結婚しましたが、結婚した相手は酒飲みで働かず、小さい子どもを抱えて一人で家計を支えてきました。

「学校に行ける」ポジティブな連鎖
子どもたちが学校に通うことは、学びを深めるだけでなく、将来の生活にも大きな影響を与えます。学校で得られる知識やスキルは、将来の職業に必要な力を育み、経済的な安定をもたらします。また、学校で友達と関わりながら自分を知り、社会性を高めることができます。
さらに、学校に通うことによって、児童労働や早すぎる結婚、妊娠を防ぐことができるという効果も期待されます。

国連が発表した世界人口予測2024年版によると、サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠より南に位置している地域のこと)の総人口は、30年後の2054年までに79%増の約22億⼈に、2100年までにさらに51%増の約33億人に達するとの予測が出ています(*4)。特に、未来社会の担い手となる子どもや若者の割合が非常に高い中で、支援の必要性は一層重要となります。
支援により、アフリカの子どもたちへの教育機会が地域レベルで底上げされることで、将来的な経済活動への参画が期待され、地域や世界の未来を担う世代を育成することに貢献できるはずです。
前向きに生きられる社会をつくるために
PLASは3つの事業を展開しています。
親子支援事業
貧困家庭の子どもたちが教育を受けられ、子どもと保護者が前向きな将来を計画できるように養鶏や農業といったスモールビジネスによる経済的自立支援と相談・カウンセリング支援を届けています。

子どもが学校に通う仕組みをつくる!親子支援事業
プログラムを開始したら、まずは相談・カウンセリング支援を数か月かけて行います。
保護者への相談・カウンセリング支援
- 「学費を捻出するため」の家計管理のスキルや貯蓄方法を学ぶ
- 「進学の手続きを知るため」の中等教育、高等教育に関する説明会
- 「子どもとよりよい関係を構築するため」のコミュニケーション方法を学ぶ など



子どもたちへの相談・カウンセリング支援
- 「自己理解を深めるため」のカウンセリング
- 「将来の夢を叶えるため」のキャリアトーク
- 「自己効力感を得るため」の絵本の読み聞かせ など



マニュアルの作成
カウンセリングの実施においては、誰に対してもアプローチや手法が一貫していることが重要です。マニュアルに従うことで、どのカウンセラーも同じ方法で対応できるようになり、保護者と子どもに対して効果的なカウンセリングを実施できるようになります。


専門家による研修
農業や養鶏には、天候不順、病気、害虫などのリスクが伴います。研修では、これらのリスクを予防するための方法や、万が一の問題発生時に対応するための知識を身につけることができます。


スモールビジネスを実践


2~5年のプログラムを経て、保護者たちは家計管理と子どもたちの教育の大切さを理解するようになり、進学に向けて応援できるようになり、子どもたちは学校に通い続けることができるようになります。

「家族の貧困の連鎖を断ち切り、地域社会に恩返ししたい」
僕は、4人家族の末っ子です。
家族が学費を払えず、兄弟が退学していくのを見続けてきた僕は、自分の進学も気がかりでした。カウンセリングの中で、自分の夢を叶えられず失敗に終わると考えているという悩みを、カウンセラーに打ち明けることができました。

僕自身、僕の母親、カウンセラーとの双方向の話し合いの中で、努力の成果について再認識しました。家族が学費を捻出できなくても、350点以上の成績を修めた子どもには奨学金制度が用意されているので、僕は学校に行って一生懸命勉強すると約束しました。
その結果、試験の一次試験でトップの成績を収めることができました。しかし、シングルマザーの母には、僕に中等教育を受けさせる余裕はありませんでした。きっと僕は高校に行けないのではないかと心配し、もし通えたとしても、地元のデイ・スクールに通うことになるだろうと思いました。僕は、学費を払うために仕事を探すことも考えましたが、それはつまり、学校を中退することを意味します。中退したとしても、仕事が見つかる保証もありません。
しかし、プログラムを通して、学費と授業料を全額負担してくれるスポンサーを得ることができ、とても幸運でした。VIAGENCOのカウンセラーの継続的な支援に感謝しています。僕は現在、質の高い教育を提供する国内有数の学校である高校に通っています。そして将来は医者になり、家族の貧困の連鎖を断ち切り、地域社会に恩返しができると確信しています。
親子支援事業では、オースティンくんのような地域のロールモデルとなる子どもたちを輩出し、「どうせ、自分なんて」と将来の希望が持てない子どもたちが、「彼のように、夢を叶えることができる」と希望と夢を持てる地域づくりを目指しています。
望まない妊娠・出産を防ぐ!性に関する教育事業
私たちは、18歳以下の妊娠・出産を減らすことを目指しています。そのために、一人でも多くの子どもと若者が正しい妊娠・避妊の知識を得て、自己決定をして行動できるように支援を届けています。
ピア・エデュケーターの育成
地域の意欲のある15〜18歳の子どもたちをピアエデュケーターとして育成しています。
ピアエデュケーターには女の子だけではなく、男の子もいるのがポイントです。
教育機会の男女格差や男性優位な慣習のある中で「女の子の問題」としてしまうのではなく、男の子が学び、行動を変えていくことが課題解決のうえで重要です。

ピア・エデュケーターによる啓発活動
ピアエデュケーターには多くのメリットがあります。同じ世代や立場の人から学ぶことで、学び手は信頼しやすく、共感を得ながら効果的なサポートができます。
また、教えることでピアエデュケーター自身のコミュニケーションスキルやリーダーシップが向上し、知識も深まります。さらに、他者に学びを提供することで自信やモチベーションが高まり、自己成長にも繋がります。加えて、コミュニティ内でのつながりを強化し、社会的なネットワークも広がります。

マニュアルの作成
10代の妊娠・出産の課題はケニアだけの課題ではありません。将来的に、性に関する教育支援事業を必要とされる地域への展開、新しいパートナー団体との協働には、マニュアルが必要です。


避妊具・薬の配布
地域の6つの医療施設と連携し、必要な時に必要なだけ子どもたちに提供できるようにしています。


保護者への啓発活動
事業地域では、家庭内で性に関する話をすることがタブー視されており、保護者が子どもに正しい性の知識を伝えることや、性に関する相談に対応することはほとんどありません。


それどころか、性に関する正しい知識を持たないため、子どもにどう接するべきか分からず悩む保護者も多く存在しています。子どもを守る保護者が、子どもを守ることができるように、正しい性に関する知識を伝えています。
医療施設や保健省、教育省、学校、村長とともに会議
早すぎる妊娠の社会課題を解決するには、地域全体で取り組むことが必要です。


この課題を理解することで、早すぎる妊娠や出産がもたらす健康や社会的な影響について地域全体での意識が高まり、予防や支援がより効果的に行えるようになります。
早すぎる妊娠・出産は、母親や子どもの健康リスクを増加させるだけでなく、教育や経済的な機会にも影響を与えることがあります。地域でこの課題に取り組むことは、若者の権利を守り、健全な発展を支援するための基盤となります。

現地のリソースを活かす!組織基盤強化事業
PLASとのパートナー関係が終了しても、現地パートナー団体が自らの力で支援を届けられる状態を目指して、各団体の組織基盤強化にも取り組んでいます。スタッフの能力強化と事業運営の基盤づくりを通じて、現地NGOが戦略的に活動を進め、成果を生み出せる環境を促進しています。

「私の人生で出会う人たちに、前向きな影響を与えたい」
2023年3月にパートナーシップが終了したヒーレコーズというNGO団体には、プロジェクトコーディネーターを務めていたナマタさんという女性がいます。
「私はひとり親家庭で5人の兄妹と共に育ち、決して裕福な環境ではありませんでした。
お母さんは「男女問わず、子どもたち全員に高等教育を受けさせたい」と必死に働き、子どもたちの教育費を捻出してくれました。その懸命なサポートのおかげで、私は大学に進学することができました。

卒業後は「シングルマザーや厳しい家庭に育った人たちの苦労や気持ちがわかるから」と思い、恵まれない環境にいる人々を支援するNGO団体で働く道を選びました。
「シングルマザーや子どもたちの生活レベルを向上させたいという思いがありますが、ただ誰かに依存して生活するのではなく、事業を通して自立するためのスキルや価値観を身につけてほしい」という理念のもと、PLASとの事業に取り組んできました。
現在、私はヒーレコーズでの仕事の傍ら、PLASのコーディネーターとして培った知識と技術を活かし、ウガンダの若い女性たちへの自立支援を目的とした基金設立を準備しています。」
PLASとの協働によって、自らの力で課題を解決できる人材や団体が生まれています。
複雑な社会背景や家庭環境により、夢を描けない子どもたちが「自ら選択できない人生」から「前向きに選択できる人生」になれる未来をつくりたいです。
そのために、寄付を集めています。
ぜひ、ともにアフリカの未来をつくりませんか。
寄付金の使い道について
いただいたご寄付は、2025年4月から9月までにPLASが取り組む3つの事業にかかる費用として、大切に使わせていただきます。
➀親子支援事業
②性に関する教育事業
③組織基盤強化事業
例えば、
3,000円あれば、3人の子どもが絵本の読み聞かせに参加できます。

5,000円あれば、子どもの学びをサポートするカウンセラーの家庭訪問の交通費1か月分をまかなえます。

10,000円あれば、27羽のひよこを配布することができます。

30,000円あれば、20人の子どもたちがキャリアトークセッションを2回受けることができます。

50,000円あれば、20人のお母さんたちが1年間、農業研修(計2回)と専門家のモニタリングを受けることができます。

100,000円あれば、農業・生活用水用の水タンク(5,000リットル)をひとつ届けられます。

※NPO法人エイズ孤児支援NGO・PLASは「NPO法人」として認定されていますが、このクラウドファンディングを支援することで、支援者が税制優遇を受けることはありません
応援メッセージ
ワード珠里亜さん(2018年インターン生)

小林 匠さん(2018年インターン生)

エイズ孤児支援NGO・PLAS
特定非営利活動法人エイズ孤児支援NGO・PLASは、2005年にエイズ孤児の課題を解決するために当時大学生だった7名によって設立されました。
「取り残された子どもたちが前向きに生きられる社会をめざす」をビジョンに、これまでにウガンダとケニアの2か国で、8,511人の子どもたちと28,545人の保護者たちに支援を届けてきました。

社会から取り残された子どもたちが前向きに、夢を描ける社会をつくるため、設立から20年、PLASは現地のパートナーNGOと協働しながら、「地域とともにつくる支援」をめざして活動をつづけています。
*1 UNICEF. (2023) .Good News or Bad News for Africa: Recent Trendsin Monetary Child Poverty in Sub-Saharan Africa
*2 KENYA NATIONAL BUREAU OF STATICS(2021年). The Kenya Poverty Report
*3 Fiona Samuels, Carmen Leon-Himmelstine, Lilian Otiso, Maryline Mireku and Beryl Oyier.Unintended pregnancies and HIV among adolescents and young people A situation analysis of Homa Bay, Kenya.2020.
*4 United Nations. (2024年7月).World Population Prospects 2024: Summary of Results