
家族のことや病気やこころのことで、誰にも言えない苦しい思いを抱えている子どもたちに、このサイトのやさしく温かなイラストや情報はそっと寄り添ってくれます。自分のきもちにぴったりの言葉を見つけ出すこと、「わかってくれる人がいるんだ」と思えることが、どれだけ子どもに力をあたえるか、クリニックでの臨床活動の中でいつも痛感しています。
こういった情報サイトや心理教育絵本の作成といったプルスアルハさんの活動は、それ以前にはなかったものです。誰も踏み入れたことの無い領域に果敢に挑まれ、道なき道を切り開いてきたプルスアルハさんに、心からの敬意を表します。

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》『こころにケガをしたらートラウマってなんだろう?』
(ゆまに書房,2023)
手前味噌で恐縮ですが、私も著者の一人として参加した絵本「こころにケガをしたらートラウマってなんだろう?」について紹介させていただきます。
長い間虐待を受けた子どもたちと関わってきました。トラウマを抱えていることも多く、何が起こっているのかわけがわからないまま、自分でコントロールできないような症状に圧倒されて、自責感を深め、再トラウマ体験を繰り返し、どんどん事態が悪くなっていく様子をみてきました。
トラウマの心理教育の必要性を強く感じました。何が起こっているのかわからなくて混乱している状態でも、絵本という形であれば、物語に入っていきやすいのではないかと考えました。そして主人公のきもちと重ね合わせて読み進めていく中で、その混乱したもやもやが少しずつ晴れて、自分の状態を理解していけるような体験となったらいいなと思いました。
重いテーマにも関わらず、ちあきさんの絵の色調の柔らかさと、塗り重ねた感じのあたたかさで、主人公ジュンのきもちがすっと伝わってきます。
解説部分は、回復の道筋を知り安心できる方法などをやってみる過程で、「自分の行動を変えることができる、安心な生活を送ることができるようになる」と、前向きなきもちがもてるようになることを目指しました。
親や支援者向きのアドバイスもあります。
そして子どもと一緒に学べるようにワークブックも作りました。気がついたことを書き込んだり、手元に置いて何度も見直したり、練習したりできます。
クリニックでも使っていますが、子どもたちがやわらかく安心した表情になっていくのを見るのが嬉しいです。

犬塚峰子