はじめまして。REEP財団・代表理事の加藤徹生です。
今回、私が日本に住む外国人を対象とした金融包摂に取り組むべきだと考えている理由をご紹介させてください。それは、まさに今、日本に住む外国人たちと持続可能な社会をつくる時期に来ていると感じているからです。そのための最良の手段が金融包摂だと考えています。
先進国の成功事例では、金融包摂を通じて、借り手となる移民の年間収入が20%-30%上昇することが知られています。特に、カナダのWindmillの事例では、カナダに移住した移民のうち借り手となった方の年間収入が40%以上増加し、さらに、納税額が64%増加したことが判明しています。(Windmill 2024 PWCによる分析)
これは、借り入れられた資金が職業訓練や免許取得などに投資され、短期間で移民のキャリアアップが可能になったことが背景です。
もちろん、これを実現するには、多大な時間と労力がかかりますが、日本に住む外国人との関係性が懸念される今だからこそ手を付け始めたいと考えています。
金融包摂の有効性ー個人にも地域にも効果的
さて、金融包摂は単純に融資を受けやすくするというだけのアプローチではありません。
第一の効果は、借り手自身の生活基盤の安定です。何らかの資金を借りて、健全な使い道に投資されるのであれば、貧困や貧困のリスクが削減されます。我々が先行して行った日本で資金を借りたことのある日本に住む外国人へのインタビューの中でも、資金を借りることを通じた収入の向上の事例は多くありました。また、資金を借り、返済することを通じ、日本の商習慣や金融に関する理解が深まっていくことも確かでした。子どもを抱える家族であれば、子どもの健康や教育の安定につながり、それは失業や病気、災害などの際の備えになります。
第二の効果は、市民として社会に参加する機会を開くことだと言われています。もちろん、各国で一定の資格要件は付与されるのですが、外国人の方が資金を借りることを通じて、正式な社会の構成員として扱われやすくなり、地域社会の一員としての活動が増えるという傾向があります。平等な条件で資金を貸し出すという行為を通じて、社会の担い手の一員を増やすということも可能なのです。先述のインタビューの中でもまちづくりや地域づくりの活動の結果、信頼関係を基盤に出資を得たり、融資を得る外国人の存在は顕著でした。逆に融資を得た金融機関からの紹介を通じて、ネットワークが広がったケースも特徴できてした。彼らは借りる側/貸す側の関係を越えて、今もまちづくりや地域産業の担い手として活躍しています。
第三の効果は、税収の増加も視野に入っきます。金融包摂の多くは、資金を返済するスキームを取るのですが、資金を返済する以上、借り手となる個人の収入が増加しすることを目標とします。結果として、所得税やその他の税額も向上することが判明しています。しかしながら、金融包摂は上手く実装するために数年以上の試行錯誤が必要であり、日本で税収の増加まで見込むことができるかは未知数です。
★古川★効果について、第一=借り手のメリット 第二=地域のメリット 第三=税収のメリットとありますが、金融機関側のメリットはどのようなものでしょうか?
金融包摂の実現可能性ー成功パターンが特定できれば、再現できる
金融包摂は立ち上げの労力はかかるのですが、一度、成功パターン、つまり、誰がどのように資金を必要としており、どのような形で資金を返済することができるかのパターンを特定できれば、資金の返済率が上がり、返済された資金が次の借り手の資金に充当されるようになります。
先述したWindmillの事例では返済率は95%に達し、標準金利は6.7%で、約160万円(1万5千カナダドル)までの融資が行われています。
ただし、一口に外国人といっても、様々な背景があります。生まれた国から話す言語、民族や生活習慣の違い、宗教、職業、財産、家族構成、さらには、移住してからの期間や日本に滞在する資格⋯。それぞれに状況があり、金銭との付き合い方や民族内の相互扶助の形も違います。
私たちは先行して行った調査の結果、下記の職業投資にあたる領域を通じて、金融包摂を切り拓くことができると考えています。日本人であれば、仕事に活かせる免許や資格の取得を通じた、キャリアアップは多くの人が実践しています。それに対して、実務経験があるにも関わらず、、資格取得に関連する小さな投資を持ち合わせていないのが日本の外国人労働者でした。私たちはまず、この領域から金融包摂の実装を手掛けたいと考えています。
移住の段階と人口規模の推計 | 主な借り入れのニーズ | ||||
移住段階 | 人口規模 | 家計の資金繰り | 職業投資/開業投資 | 住宅ローン | 貸与型奨学金/教育ローン |
留学 | 368,589人 | 移住費用や賃貸の初期費用 | |||
技能実習 | 425,714人 | 移住費用や賃貸の初期費用 | 免許や資格取得などの職業投資 | ||
就労資格 | 819,497人 | 免許や資格取得などの職業投資 | |||
身分資格 | 707,216人 | ||||
移住者のこども(19歳以下) | 436,208人 | 進学費用など | |||
永住者 | 1,179,867人 | 住宅ローン |
出所:外国人住民 金融排除白書 2025年7月 REEP財団から引用。(人口規模は出入国在留管理庁令和6年6月末現在における在留外国人数を参照)
繰り返しになりますが、金融排除の構造は収入が安定しないから、在留資格を上向きに切り替えることができない。在留の期間が制限されているから、金銭を借り入れることができないという「鶏と卵」の構造にありますが、それを短期間で打破することが可能なのがいわゆる外国人労働者の方々でした。このプロトタイプに関しては、並行して準備をしており、クラウドファンティング期間内で別途、お知らせする予定です。
金融包摂の実現可能性ー外国人は本当にお金を返すのか?
実は、今回の取り組みのきっかけの一つは、ある金融機関の支店長との会話でした。彼は、外国人の多い地域を担当した経験の持ち主でもありました。参加したセミナーの懇親会で隣り合った際に、「あいつら、金をちゃんと返すんだよ」と自慢気に語っていた話が私の印象に残っていました。この言葉が気になり、「外国人 金融排除白書」の発行につながっています(こちらも、後日の投稿で詳細をお知らせします)。
他の金融機関のインタビュー結果も概ね同等で、一定の資格審査や商品設計を行った上で融資を行えば、日本人同等の結果が返ってくるというの典型的な反応でした。しかしながら、民族性や移住の段階で融資に対する考え方は大きく変わるというインタビュー結果も多く、一概に外国人だから信頼ができることを意味したいわけではありません。それは、もちろん、日本人でも同様でしょう。
個人的な思いー移民と対等に歩む日本
私は大阪に生まれ、留学生の多い大学で学び、アジアを旅しながら本を書くことを経験しました。その中で、多くの外国人との出会いに恵まれ、刺激を受けたり、救われたりしてきました。願わくば、彼らの才能が日本にわかりやすい形で評価される手段が欲しいと考えています。
私は誰にも才能があると信じています。金融包摂はその才能を開花させ、見えるようにするためのツールだと思っています。日本が外国人との共生のあり方を問うてる今、ぜひ、金融包摂の実現をご応援頂ければ幸いです。

日本とインドの交流事業のコーディネーターを務めた際の写真
加藤徹生
金額25,000円 |
金額70,000円 |
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