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Mother's Dayキャンペーンでは、シングルマザーがエッセイを執筆し発表するという取り組みを続けています。
ひとり親の多くは、配偶者のDVや他者からの心無い言葉、自分が描いていた未来像の喪失、などにより精神的不調をかかえています。本キャンペーンのエッセイ制作はこうした不調に対して「表現を用いた自己の回復」を支援するプログラムでもあります。
ひとり親が自分のことについてエッセイを書くことにより、失われていた自己表現の欲求を取り戻し、自分の人生に改めて意味付けをすることで、「生きている」という感覚を取り戻すことが一つ目のねらいです。
社会学者の藤澤三佳さんの「生きづらさの自己表現」において、その効果が以下のように整理されています。
①作品づくりそれ自身がたとえ自分の暗部をさらすことであっても人間が根源的にもっている表現衝動をわがものとして取り戻すものである
②あいまいだった生きづらさの経験を意味あるものとし自己自身について再叙述を行う契機である
③ともに制作する仲間や作品を鑑賞するオーディエンスとしての関係など他者との関係を組み直すことにつながる
④それがまた自己の承認や再叙述にはねかえっていき、「自分という他者」を発見していく営みとなる
このように、自分の人生を改めて意味付けし、本来人間がもっている自己表現の欲求、「生」の感覚を取り戻す過程は過去2回のキャンペーンでも多く見られました。(Mother's Day2021 寄付月間2021)
つらかった経験、自分の暗部となることを振り返り新たな意味付けをすることは勇気がいるし、そのような機会もあまりないものです。だからこそキャンペーンという機会と、似た体験や感情を共有する仲間と出会い、一緒に作り上げていく過程には、非常に大きな意味があります。
執筆されたエッセイは2人の校正者によってブラッシュアップされ、みんなで、一つの作品として完成させていきます。このようなピアサポートのプロセスも、私たちに力を与えてくれます。エッセイ制作を通してピアサポートが生まれること、これが2つ目のねらいです。
こうして作られたエッセイ、現在5人のシングルマザーのエッセイが発表されています。こちらからぜひご覧ください。