私たちの暮らす刈羽村
刈羽村は、新潟県のほぼ中央の日本海側に位置し、5つの地区20の集落で構成された村民が主役の自立と自治の村です。村の西側には強い海風によって巻き上げられた砂がうず高く積もり、私たちが「すなやま」と呼んでいる砂丘地が広がっています。

特産品である”幻の「砂丘桃」
この砂丘地で、古くから栽培が続けられてきたのが「砂丘桃」です。砂丘桃は、江戸時代後期に現刈羽村出身の塚田源太夫(つかだげんだゆう)が、行商先で桃の栽培には砂丘地が適していることを知り、荒地を開墾して桃を栽培したのが始まりです。
明治時代の中頃からは刈羽村と柏崎市に連なる一帯の砂丘地に植樹が拡大し、最盛期の大正時代には50ヘクタール、栽培農家数190戸に達し、刈羽村の一大産業となるまで成長しました。電車の車窓からの眺めが美しかったことから臨時停車駅「桃林(とうりん)駅」が開設されるほどでした。しかし、昭和に入ると、油田開発や第二次世界大戦がもたらした食糧政策の影響により強制伐採されるなど、幾多の困難に直面しました。それでも、地元の強い気持ちは連綿と受け継がれ、砂丘桃は今日に至るまで栽培が続けられてきました。現在では正明寺(しょうみょうじ)集落が主な生産地となっていますが、生産者の高齢化や後継者不足によって存続が危ぶまれています。生産量が少ないことや販路が限られていること、また、店頭に並べてもすぐに売り切れてしまうことから「幻の桃」ともいわれるこの「砂丘桃」をなんとか後世に残していきたいと考えています。

「砂丘桃百年プロジェクト」の立ち上げ経緯
平成24年10月1日、刈羽村に新しい農業・観光複合施設「ぴあパークとうりんぼ」がオープンしました。この施設は「農業生産」「加工物販」「飲食」「集客」の4つのコンセプトを持っており、新たな刈羽村の魅力の発信地として運営されています。刈羽村の特産品である「砂丘桃」の栽培も同時期より開始しました。桃栗三年柿八年といわれますが、砂丘桃は通常の桃より更に生育に時間がかかるため、本格的な収穫が始まったのは平成30年からでした。令和に入り、「砂丘桃」を取り巻く環境も年々変化していく中で、多くの課題を抱える現状を打破すべく新たなプロジェクトを立ち上げました。「砂丘桃百年プロジェクト」と題したこのプロジェクトは「170年前の人々から届けられた砂丘桃を100年後の人々にも届けたい」という想いを共有したコアメンバーを中心に、官民連携による様々な施策を実施しています。

砂丘桃が抱える問題は山積み
現在の砂丘桃は、生産農家数16戸、生産者の平均年齢75歳以上、販路は軒先販売や昔からのお得意様が大半、価格は他産地と比較して安いという状況が続いていました。しかし、砂丘傾斜地での栽培は通常の露地栽培よりも肉体的負担が大きい上、機械化が進まず、また樹の成長が遅いなどの特性があるため生産コストは大きくなります。なりわいとしては成立が困難で、若者や新規就農者の参入は到底見込めません。生産者自身が「子どもには継がせたくない」というほどでした。最盛期に200戸近くあった農家数は10分の1以下まで減少し、まさに消滅の危機に直面しています。
厳しい状況に拍車をかけた猛暑と干ばつ

今年は、記録的な猛暑と少雨が続き、砂丘桃の生育環境にも大きな被害が出ています。特に、7月から8月にかけての高温と水不足による被害が甚大で、収穫まで5年程度かかる砂丘桃の木は枯れ果て、生産者は絶望的な状況に立たされています。もともと生産してこられた村の主要生産者の多くは70代後半で、近年の異常気象や獣害、虫害などを理由に昨年も4名の先輩方が砂丘桃栽培を辞められています。今年の被害をうけて、多くの先輩方が栽培を辞められてしまいかねない現状に、改めて私たちの姿勢が問われていると感じています。

それでも諦めたくない
「砂丘桃百年プロジェクト」と題して最初に取り組んだのは、私たちが販売する桃の価格の見直しです。生産コストをしっかりと計算した上で、事業として利益が出せる、なりわいとして成立する適正価格へと引き上げを行いました。近年は、燃料費や肥料・資材などの高騰により、生産コストが上昇傾向ですが、従来の硬直的な価格設定ではなく、その時々の状況に応じて価格の見直しを行っています。その他にも、オンラインショップの開設や、全数糖度・質量検査、広報宣伝強化、加工品の開発、オーナー制度の創設、産官学連携による基礎調査・研究等々、様々な取組を同時並行で進めてきました。「ぴあパークとうりんぼ」のオープンや「砂丘桃百年プロジェクト」の挑戦などを通じて、問題を少しずつ改善してきたことで、若い生産者もひとりふたりと増えはじめ、より一層の飛躍を期待して今年度を迎えました。
これまでの挑戦をここで終わらせるわけにはいきません。桃の木が枯れたのなら、また苗木から5年程度をかけて育てるまでです。

つかみかけた光を失わないように
私たちは、今回の猛暑と干ばつにより枯れてしまった砂丘桃の木を、応援してくださる皆さんのお力添えをいただきつつ苗木から育て直そうと考えています。「170年前の人々から届けられた砂丘桃を100年後の人々にも届けたい」という想いを忘れずに、皆さんのところに甘くて美味しい砂丘桃をまた届けられるように、諦めずに調整を続けていきます。少しずつ育ってきた若手生産者の輪を広げつつ、連綿と受け継いできた伝統を守りながら、まちの活力となれるように頑張ってまいります。皆さんからのご支援のほど、何卒よろしくお願いいたします!

私たちが目指しているもの
刈羽砂丘の桃畑には、かつて越後鉄道の西中停車場「桃林駅」がありました。車窓から望む、砂丘全体を覆うように咲き乱れる一面の桃の花が大変美しく、春日の花見客で大賑わいだったためです。
時代は移ろい、農業者の減少などの流れには抗えず、刈羽砂丘は雑木が生えるだけの耕作放棄地が広がるようになっていきました。
この「すなやま」をかつてのような「桃林の場」に変えること、かつてあったものを超えるような「宝の山」に変えることが、私たちの目指している未来です。
春は花見を、夏は収穫を、地域の内外を問わず、多くの人がこの地を訪れて素晴らしい体験をしてほしい。そして、場所や時代を超えて一人でも多くの方に美味しい砂丘桃を届けたい。
私たちは夢の実現に向けて、一歩ずつでも前に進んでいきたいと思っています。

刈羽村の砂丘桃はなぜ甘いのか
砂丘桃の特徴はなんといってもその甘さ(糖度の高さ)です。
「砂丘桃は甘い」
それは私たちにとって常識と言えるものでした。なぜなら、昔に聞いてた「砂丘桃は甘いんだぞ」と言うからです。でも、果たしてそれは本当なのか?
確かな証拠を求めて、私たちは昨年から、収穫した砂丘桃の糖度検査を始めました。その結果、一般的な桃の糖度が13~15度とされるなか、とうりんぼ産の砂丘桃はその約半分が15度以上の糖度を示しました。また特に高いものでは、20度以上になるものもありました。比較的糖度が低いとされる早生品種を含めた全体の平均糖度も14.9度と、15度を超えるまであと一歩のところであることが分かりました。
砂丘桃が甘くなるのは、降った雨水がすべて地下に抜けて糖分が凝集するからとか、砂丘が太陽光を反射するからとか、太陽の熱が砂を温めるからだとか言われます。しかし、実際のところ甘くなる理由はよく分かっていないというのが本音です。

これまでの取り組み紹介
①販売価格の見直し
刈羽村の砂丘桃は20年近く価格据え置きで販売が続けられてきました。生産者の方々は利益を出すことを重要視せず、お客様に喜んでもらいたいという気持ちを強く持っていたからです。その思いは私たちにとっても変わりません。しかし、生業として100年継続していくためには、砂丘桃の生産者に売りたいと思ってくれる仲間を増やしていかなければなりません。そのために、私たちは砂丘桃が持っている価値の再検討を行い、適正価格を再定義し、販売価格を見直すことを決めました。
②全数糖度検査
昨年から光センサーによる非破壊糖度検査を始めました。1年目は平均糖度14.9度を記録。より甘く、美味しい桃を皆さんに届けるため、糖度検査を継続していきます。
③加工品開発
砂丘桃を一次加工し、ピューレを作りました。
現在では、砂丘桃の羊羹、ゼリー、甘酒といった商品があります。今年は外注にはなりますがジャムの製造なども実施しています。
年々、商品ラインナップを増やし、年間を通じて砂丘桃を味わっていただけたらと考えております。
④オンラインショップ開設
ピーチビレッジ刈羽のオンラインショップを開設し、予約販売を実施しました。今後は加工品などを含め、さらなる商品ラインナップの拡充を図っていきます。
⑤小学校砂丘桃栽培体験
2021年からとうりんぼ園地内で砂丘桃の栽培体験学習を実施しています。刈羽小学校の生徒さん1年生~6年生を対象とした栽培や広報活動を実施しています。
また現在、初級~上級ごとにカリキュラムを編成した一般の方々に向けた砂丘桃エキスパートコースの計画も行っています。
⑥スマート農業の導入検討
砂丘傾斜地での機械化には多くの課題があります。しかし、近年のドローンやAIなどの技術の開発により、まったく新しい形での農業の効率化、生産性の向上が期待されています。これら技術イノベーションを積極的に取り入れて、砂丘桃の増産に取り組んでいきます。
⑦砂丘地調査・研究
砂丘桃が甘くなる理由など、砂丘地での園芸には分かっていないことがまだまだたくさんあります。地球温暖化の進行などにより、刈羽砂丘での最適な栽培品種なども変わっていく可能性があります。私たちは栽培方法の改良、最適品種の探索などを継続していくことで、時代に相応しい持続可能な農業を実現していきます。
昨年度は砂丘地の土壌分分析や食品分析の実施、今年度は旨味成分の分析や砂質土の微生物量の試験など様々な研究を実施しています。
⑧担い手の確保
砂丘桃インターンシップ制度を計画し、砂丘桃の担い手を探す計画を遂行中です。

ご寄付の使い道
いただいたご寄付については、下記の用途に使用したいと考えています。
・新たな桃の苗木の購入代
・肥料費や定植後の費用(肥料や農薬、資材)
まちづくりファンド『そーぐぅー』のご紹介

このプロジェクトの立ち上げは、まちづくりファンド『そーぐぅー』を活用しています。『そーぐぅー』は、新潟県柏崎市のまちづくり会社である特定非営利活動法人aisaが運営している公共施設『かしわざき市民活動センターまちから』の事業です。そのため、支援金の振込先が『特定非営利活動法人aisa』、現金での受付窓口が『かしわざき市民活動センターまちから』となっております。
選べるご支援方法について
本プロジェクトへのご支援は、下記の方法にて受け付けています。みなさんのご支援をお待ちしております。
【クレジットカード決済】
・VISA、Master Card、JCB、アメリカンエキスプレス、ダイナーズクラブカード、ディスカバーカード
【銀行振込】
・指定の口座に、ご入金いただきます。
【現金での受付窓口】
・かしわざき市民活動センターまちから(945-0066 新潟県柏崎市西本町3-2-8)

金額100,000円 | 在庫5 |

金額20,000円 | 在庫5 |

金額100,000円 | 在庫5 |

金額20,000円 | 在庫5 |