日本環境会議(JEC)理事長・寺西俊一(一橋大学名誉教授)
私は、現在、国内外の公害・環境問題に関する学際的な研究者や専門家等が中心となった日本環境会議(JEC)というネットワーク型組織の理事長を務めています。つい最近の11月17日には、12年余前の福島原発事故にみるような悲劇的事態を二度と引き起こさせないために、「ノーモア原発公害」を掲げた独自な「市民連絡会」を発足させ、その代表世話人(事務局担当)もお引き受けすることになりました。
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改めて思い起してみれば、この「ノーモア原発公害」という課題は、地震多発国である日本において安易に原発を推進することに伴う危険性を厳しく指摘しておられた故高木仁三郎さんによる重大な警鐘を今日的に受け継ぐものでもあります。それゆえ、故高木さんの遺志に基づいて設立された高木基金の現事務局長を務めておられる菅波完さんにも、上記の「市民連絡会」における世話人会メンバーのお一人として、貴重なご尽力をいただいております。
この間、その菅波さんから、高木基金による多様な市民科学活動への助成を安定的に継続していくためのクラウドファンディングへの協力が呼びかけられてきました。私自身もささやかな寄付を行いましたが、さらに、より多くの皆さんからの幅広いご支援を強く訴えておられます。この募集期限が数日後に迫っているようですが、あともう一回り、一人でも多くの皆さんからのご支援を賜りますよう、私からも、一言、お願いを申し上げる次第です。
私は長年、環境経済学を専門にしてきましたが、昨今、私が設立メンバーの一人であった環境経済・政策学会などでも、現実の政策を批判的に検証するような研究が極端に少なくなり、学会としての議論の質が著しく低下しているように思えます。この背景として、大学の研究予算が削減されている一方で、環境省や経産省などの関係省庁からの委託研究等の予算をあてにするような研究者が増えてしまっているようです。実に嘆かわしいことであり、ますます深刻化する公害・環境問題をはじめとする様々な社会問題に、大学や研究者が本来の役割を果たせるのか、危機的な状況に至っています。その意味でも、市民の寄付に支えられた高木基金が、いま社会が本当に必要としている研究テーマに助成をするということの意義はますます大きくなっていると思います。私が理事長を務める日本環境会議(JEC)の若手メンバーも、高木基金の助成を受けて研究に取り組んできました。今後とも、高木基金の助成事業を積極的に推進していただきたいと考えています。