高木基金 アジア担当プログラムオフィサー 村上正子
高木基金の2023年度助成を受けて、フィリピンのAGHAM(Advocates of Science and Technology for the People)が取り組んでいる調査研究のテーマは、「マニラ湾埋め立て事業が沿岸コミュニティに与える社会経済的・生態学的影響 」です。
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フィリピン、ルソン島中部のブラカン州では、政府による「マニラ湾総合治水・海岸防衛・高速道路プロジェクト」と、財閥・サンミゲル社による「新マニラ国際空港」の建設が進められていて、これらの大規模開発がマニラ湾とその周辺の生態系や海岸沿いの地域社会にあたえる深刻な影響が懸念されています。
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■ AGHAMの調査研究の概要
AGHAMは、地元のコミュニティ団体「AKAP KA マニラ湾」と協議し、特に新マニラ国際空港建設にともなう埋立てによる影響を評価しています。5月におこなったビヌアンガン村での現地調査では、マングローブ林の伐採、魚や鳥の個体数の減少、地元の漁民が生活の糧としている湖、塩田、干潟への深刻な影響が確認されました。
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現地調査に先立ち、軍隊と警察官が一般住民を装って現地に駐留しているという情報が入りました。研究者やコミュニティの安全確保のため、調査スケジュールの変更や調査結果の公表方法を再検討する必要が生じています。とはいえ、調査は完了させ、報告書とともに、被害を受ける住民や近隣コミュニティに配布するための情報・教育・キャンペーン資料を作成する予定です。
■ 高木基金からの補足:現地の過酷な社会情勢と、海外からの注目・サポートの重要性
現在、マニラ湾での埋め立ては、マルコス政権によって、環境破壊や中国企業関与の問題を理由に一部を除き、凍結されていると報じられています。一方、9月には、高木基金が助成するAGHAMが連携する地元団体「AKAP KA マニラ湾」の若い女性ボランティア2人が武装した何者かに誘拐される事件が起きました。(注1)。
幸い二人は解放されましたが、「真実を伝える必要がある」として、国軍による「誘拐」であったことを告発したうえで法的保護を訴えていますが、国軍からは偽証罪で訴えられているようです。(注2)
このように高木基金が助成するアジアの市民科学的な調査には、身の安全をおびやかされる事例が少なくなく、国外から関心を寄せ、サポートすることがきわめて重要だと考えています。
注1 AGHAMの声明: http://agham.org/statement/sur...)
注2 関連記事:Al Jazeera,“We will cut out your tongue’: Filipino activists recount kidnap ordeal,”2023年10月19日 https://www.aljazeera.com/news...