高木基金 アジア担当プログラムオフィサー 村上正子
今回、EARTHから、高木金が助成事業へのクラウドファンディングに取り組んでいることに対して、以下のメッセージが届きました。
EARTHは20年以上にわたり、影響を受けた地域社会が健全な環境を取り戻す権利を主張できるよう支援してきました。
高木基金の助成金は、産業公害から市民の健康と環境を守るために重要な役割を果たしています。高木基金の支援によって、市民科学の力を通じて、環境の持続可能性と社会福祉の目標を世界的に推進する強固な基盤を築くことができます。われわれのミッションに欠かせない協力をありがとうございます。
■EARTHが取り組む調査研究の概要

(住民とEARTHによるファイトレメディエーション活動開始(5月))
EARTHがタイ中部のラーチャブリー県ナンプー市のコミュニティで取り組む調査研究「産業廃棄物によって汚染された環境とコミュニティの再生に向けたアクションリサーチ」では、リサイクル・埋め立て工場からの廃水などにより、長年、揮発性有機化合物(VOC)や重金属などの有害化学物質による大気や河川の深刻な汚染に苦しんできた地域の住民とともに、植物を使って汚染物質を吸収する「ファイトレメディエーション」の手法を用いて、化学物質への曝露を減らす取り組みを行います。

(ファイトレメディエーション活動の様子)
ナンプーの地域の人々は2001年以来、環境回復をもとめて行政などに働きかけてきました。2017年には工場に対してタイ史上初の環境集団訴訟を起こし、2020年には工場側に対して住民への補償と環境修復を命じる判決が出され、工場は操業を停止しました。しかし、有害廃棄物は放置されたままでした。

(工業省大臣の訪問と会合(10月))
ファイトレメディエーションは必ずしも深刻に汚染された地域の環境回復につながるものではないかもしれませんが、それでも、地域社会における化学物質への曝露を少しでも減らし、「活動疲れ」に見舞われているコミュニティの環境と社会的機能の修復につなげ、政府や自治体への環境回復に向けた行動を促し、長期的には公害の影響を受けたコミュニティに対し、環境修復と補償が確実に行われるよう法改正を求めるキャンペーンにつなげていきたいと考えています。
■ 高木基金からの補足:地域と国、国際社会をつなぐ環境回復活動

(インタビューを受けるペンチョムさん)
タイの市民科学者といえるペンチョム・セータンさん(https://www.ne.jp/asahi/kagaku...))が代表をつとめるEARTHから届いた中間報告には、住民や専門家との調査研究計画の立案や工業省への働きかけの様子とともに、IPEN(国際汚染物質廃絶ネットワーク)の訪問(県知事も参加)、国連人権理事会への情報提供といった、まさにローカルからグローバルにまたがる考え抜かれた活動の様子がうかがえました。当初、事務局として、ファイトレメディエーションの取り組みにどこまでの効果が期待できるのだろうという思いもありましたが、その報告や写真から「地域の人々の活動の継続こそが問題の解決につながる」というEARTHの考えが伝わってきました。若いスタッフも育っているようで、公害の被害を受けた地域の環境修復につながる法改正の実現に向けた活動にもおおいに期待するところです。