日本タンゴセラピー協会の願い
『 ここ日本は豊かな国なのに、心を艶やかに潤わせる高齢者としての生き方がない⁈ 』
ふと自身の老後について、不安になったことがきっかけでした。アルゼンチンでは、病院内のリハビリ施設で心身の問題を抱えた患者の方々が、 医師や看護師と共に楽しく踊りながら身体機能を回復させている現状があります。 私の祖国アルゼンチンでは、死ぬまで女性は女性、男性は男性らしく、艶やかに生活する ことを望みます。この楽しく画期的な ” 心躍る生活習慣 ” を日本に紹介すべく、 私達は2009年に《 日本タンゴセラピー協会 》を発足し、数々の複合型老人介護施設で 定期的にこのタンゴセラピーの活動を行って参りました。
タンゴセラピーは昨今、ユネスコ世界無形文化遺産であるアルゼンチンタンゴを踊る事で、 心の安らぎと身体の健康を取り戻す役割が期待できるとして、高齢者やうつ病、不安症の方々の間で世界的に広がりを見せております。 赤ん坊の頃、母親にされたような《アブラッソ(抱擁)》は心を温め、幸せが満ち溢れます。
日本にはあまり馴染みのない《アブラッソ(抱擁)》ですが、この触れ合いが生まれると、 脳から幸福ホルモンと呼ばれるオキシトシンやセロトニンが分泌され、精神に安らぎを もたらし、心臓や脳、ホルモンのバランスを保つことに役立つと言われております。 また2009年8月、ワシントン大学 医学部の研究で、リズムと共に様々な方向に足を 出すタンゴ独自のステップが、他のどのエクササイズよりもパーキンソン病患者に 見られる体のバランスが取りにくくなる症状を改善させることができるという研究結果が 発表されました。イギリスでは、タンゴの基本ステップをリズムと呼吸を使いながら 反復運動することで、アルツハイマー型認知症患者の記憶力向上、また進行を遅らせる 効果があるとして役立てられています。
この活動を通し、立ち上がる意欲が湧いただけではなく本当に立った! 歩いた!! 踊った!!!、 笑顔が戻った、癒された、生き甲斐を感じる事ができた等、様々な嬉しい声が聞かると 同時に、最高齢105歳の方も参加され、幅広い年齢層の方々から必要とされております。 『身体』と『脳』と『心』を楽しみながら活性化できるこのタンゴセラピー活動が、 日本の幸せな高齢化社会の大きな柱となる事を願っております。
理事長 アルベリシ・カロリーナ
タンゴセラピーとは?
タンゴセラピーとは、主にアルゼンチンタンゴの特徴(音楽・歩き・抱擁)を使ったセラピーである。身体、脳、そして精神的な効果が認められている。【タンゴセラピー国際会議より】※1
アルゼンチンやウルグアイでは古くからタンゴの効果を補助療法に取り入れており、2009年8月に、アメリカ・ワシントン大学医学部の研究※2からリズムと共に様々な方向に足を出すタンゴ独自のステップが、他のどのエクササイズよりもパーキンソン病患者に見られる体のバランスが取りにくくなる症状を改善させることができるという研究結果が発表され、その後世界中にこのタンゴセラピーという言葉が広まった。現在では、アルゼンチン以外にも、ヨーロッパの国々やアメリカ、そして日本でもタンゴセラピーが広まっている。
タンゴの音楽は歩くスピードに合わせやすい曲が多く、クラシックな楽器の音色でリラックスしながら、リズムに合わせて動き、そして歩くことができる。この一連の動きは、「セロトニン」の分泌を促進、精神を安定させる可能性が認められている※3。また、高齢の方にとっては戦前、戦後にはタンゴ音楽が流行していたことなどから、若い頃の事や、その時の感情を思い出すこと(回想法)※4にもつながることが期待できる。
タンゴは前後左右に歩く踊りである。特に後方への歩きは、足首の可動域の増加につながり、第2の心臓ともいわれるふくらはぎの筋肉を効果的に使う。また、タンゴで大切な「脚を閉じる」という動きは、年齢と共に弱くなりがちな内転筋の筋力アップにつながる。 そして、タンゴは二人で踊るダンスであり、踊るときにはフォロアーが後ろ向きに歩くが、その際は相手を信頼し、相手の動きに集中する必要がある。逆に、リーダーはペアの相手がぶつからないように相手の動きを感じながらリードする必要があり、これらのことが相手への信頼感、そして自信をもつ事につながる。
タンゴにおいて最も大切と言われるアブラッソだが、タンゴセラピーにおいても同様に素晴らしい効果を発揮する。ふれあうことにより、「オキシトシン」が分泌される。このホルモンには、身体の免疫力アップ、ストレスの緩和、心臓の機能の向上、モチベーションの向上などの効果があると、様々な研究から実証されている。※5
このようにアルゼンチンタンゴの特徴のそれぞれが、心身の機能を回復、向上することにつながっていることから、日本においても様々なプロタンゴダンサーが、タンゴセラピーを行なっている。
タンゴセラピー関連記事
認知症ONLINE
https://ninchisho-online.com/archives/author/kenichiro_nakagawa/
※1 【タンゴセラピー国際会議】
Congreso international de tango terapia の事。 2008年より毎年開催、各国のタンゴセラピーに関わる研究者やタンゴダンサー、セラピストが参加している。代表: Marisa Maragliano
http://www.tangoterapia.net.ar/congreso/objetivos/
※2 【アメリカ・ワシントン大学医学部の研究】
こちらの研究発表は有名で、様々な期間に取り上げられているが、タンゴでは有名なサイト、todotango.comでも見ることができる。
※3 【セロトニン】
脳生理学者、有田秀穂先生によるセロトニン解説(フミナーズ)
https://fuminners.jp/newsranking/9366/
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