福島ひまわり里親プロジェクトの成り立ち
きっかけは、福島県内の経営者が中心になって地元福島を元気に盛り上げていこうとして立ち上げた「チームふくしま」が、福島県二本松市の福祉作業所で働く障がい者のために2011年から始めた雇用対策からでした。東日本大震災後の福島は、原発事故による風評被害が農漁業や観光業などに深刻な打撃を与えており、特に障がい者の雇用や自立については、震災前からもハードルが高く厳しい状況にありましたが、震災の影響により障がい者が仕事できる軽作業などの受注が激減してしまいました。そこで、ひまわりの種のパック詰めを仕事として作業所に依頼したのが始まりです。そこから震災後の課題となる観光振興、防災教育も合わせた復興支援活動「福島ひまわり里親プロジェクト」が2011年5月よりスタートしました。
現在(2021年6月時点)は累計約5,900校以上の学校・教育団体、累計55万人の参画を得ています。
障がい者の収入向上のために
福祉作業所の利用者の皆さんの収入は年々増加してきています。
しかし、ひまわりの種の袋詰めや搾油を依頼している「NPO法人和」さんをはじめとする就労支援B型作業所の利用者の収入は、全国平均16,369円(令和元年度)で、福島県はそれを下回る14,926円(令和元年度)です。
実際に利用者からも、作業所を利用する上 で、困っていることとして、「収入が少ない」の回答が最も多く、安定した生活をおくるために必要な収入として、51%の障がいのある方が 20,000 円以上の収入が必要と回答しており、就労継続支援 B 型事業所を利用する障がいのある方は、より高い収入を求めていると考えられます。また、収入が増えた場合には、障がいのある方の余暇の選択肢が広がり、就労以外の時間を有意義に過ごせるようになるのではないかとも考えられます。
【参考資料】福島県保健福祉部『第5期福島県障がい者工賃向上プラン 』 令和3年3月
弊方で依頼している業務も障がいを持った方々の収入向上のきっかけになっております。
今後もプロジェクトを継続させ、障がいを持った方々の収入向上に向けた取組を実施していきたいと考えています。
福島県の観光振興につなげる
東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故発生前、福島県内の観光客入込数は5,700万人、県外からの教育旅行で訪れる学校数が約7,900校あり、教育旅行での年間宿泊者数が約71万人でした。
しかし、震災があった2011年度は、観光客入込数が約3,500万人、県外からの教育旅行で訪れる学校数が2,082校、教育旅行での年間宿泊者数が約13万人まで激減しました。
令和元年度には、観光客入込数が約5,600万人、県外からの教育旅行で訪れる学校数が6,941校、教育旅行での年間宿泊者数が約51万人と回復してきていますが、震災前の水準までは戻っていません。
【参考資料】・福島県観光交流課『福島県観光客入込状況 平成31年(令和元年)分』
・福島県観光交流課『令和元年度 福島県教育旅行入込調査報告書』 令和3年2月
弊方では、プロジェクト参加者が活動を通じて生まれたエピソードを発表する場「ひまわり甲子園」を各地方大会、全国大会と設けることで参加者の意欲を高めるとともに、全国大会を福島県内で開催することで、全国から参加者が福島に訪れることによる交流人口の拡大、観光振興に繋げています。
また、毎年8月15日、福島県田村市大越町の「牧野ひまわり会」の皆さまとともに、3万本のひまわり畑で県内外のカップルによる「ひまわり結婚式」を開催しています。全国から届けられたひまわりが咲き誇り、全国の里親や地域住民が祝福に駆けつけるイベントになっています。年々参加者も増え、少子高齢化が進む過疎地域の地域活性、観光振興に繋がっています。
今後も「福島ひまわり里親プロジェクト」の参加を通じて、福島県への関心を高め、福島県に観光でお越しいただくきっかけにしていきたいと考えています。
プロジェクトをきっかけに生まれた物語
「福島ひまわり里親プロジェクト」にご参加いただいている方々から、私たちが想像もしなかった感動物語が生まれています。それは「震災があったせいで」ではなく、「震災があったからこそ」生まれた物語です。
たくさんある物語の中から、いくつかピックアップしてご紹介させていただきます。
障がいをもったお子さんをもつお母さんから「採れたひまわりの種を福島県へ送り、その後感謝状が届きました。子どもにとって誰かから褒められることが初めてでした。この子は生まれてきてよかったんだと思うことができました」と涙を流しながらお電話をいただきました。
ひまわりを育てる中で気が付いたことや、福島の復興への想いを子どもたちから集め、それを歌詞にし、地元バントに作曲いただいた歌が、福島で、日本で、そして世界で歌われるようになりました。また、福島県の道徳教育でも活用されるようになりました。
プロジェクト参加者の介護老人ホームで、自殺願望の強い利用者がいましたが、ひまわりを育てるなかで、生きがいややりがいを見つけ、別人のように生き生きと生活されるようになりました。
プロジェクト参加者同士がカップルとなり、8月15日に福島県田村市で開催している「ひまわり結婚式」で挙式。
プロジェクト参加者同士でコミュニティが出来上がり、仲間が困っているときにお互いさまの気持ちで手を指し伸ばし合える関係性が生まれています。
などなど、たくさんの感動物語がひまわりを通じて生まれています。
これらの物語の多くは「ひまわり甲子園」にて発表していただいています。
発表の様子は「福島ひまわり里親プロジェクト」のYouTubeチャンネルにて配信しておりますので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/user/SunflowerFukushima
「伝承伝達」の手段として
東日本大震災から10年が経ち、目に見える形で復興・復旧が進んでおります。その一方で、震災当時小さかった子どもたちや、震災後やこれから生まれてくる子どもたちにとって、震災の記憶は覚えていなかったり、経験したことがなかったりで、過去の出来事に過ぎないと捉えられてきているように感じています。しかし、あの時に発生した大地震が引き起こした福島第一原子力発電所の事故によって、帰宅が困難になってしまった地域が生まれ、福島県産の農産物に対する風評被害は10年経っても根強く残っています。また、福島第一原子力発電所の廃炉には40年かかるといわれており、今も廃炉に向けた作業が行われています。その他にも様々な課題に直面しており、それらの解決に向けて現在進行形で取り組まれている方々がたくさんいらっしゃいます。
そのため、次世代を担う子どもたちに2011年3月11日のときのことやその後何が起きたのかを伝承伝達していくことはとても重要なことであり、「福島ひまわり里親プロジェクト」にはその役割があると考えています。
また、日本に住んでいる以上自然災害とは切っても切り離すことができず、防災意識を大人も子どもも高めていかなくてはいけません。プロジェクトに参加し、ひまわりを育てることを通じて、防災意識を高め、それにより、自らの命や周りの方々をお互いさまの気持ちで助け合えることができれば、日本の未来はより明るいものになると信じています。
これからも「福島ひまわり里親プロジェクト」を継続していくために皆さまからの温かいご支援をお待ちしています。
ご支援の使い道
「福島ひまわり里親プロジェクト」の活動費として、大切に活用させていただきます。